22/01/06
2022年度の国民年金保険料はいくら? 未納のまま放置するとどうなるのか
国民年金は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の人であれば、全員が加入することになっています。フリーランスを含む自営業者、無職の方や学生などの場合、保険料を自ら納付しなければならないため、毎月やってくる国民年金保険料の支払いを負担に感じている方も多いと思います。今回は、毎月の国民年金保険料がきついと感じる方のために少しでも負担を抑えるための支払い方法と保険料を払わなかった場合の影響についてご紹介します。
国民年金保険料を払う必要がある人はどんな人か
国民年金には、第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者の3つの被保険者の種別があります。この被保険者の種別は、働き方などの条件によって随時切り替わっていきます。
大半を占めるのが、厚生年金保険や共済組合に加入している会社員などの第2号被保険者です。第2号被保険者は、毎月の給与から天引きで保険料を納めており、直接自分で納めることはありません。第2号被保険者によって扶養されている配偶者で、年齢が20歳以上60歳未満の人は第3号被保険者になります。この第3号被保険者も保険料負担はないため、自ら保険料を納める必要はありません。
一方で、国民年金の保険料を自分で納める必要があるのは、第1号被保険者のフリーランスを含む自営業者、無職の方や学生など。全体加入者の約2割程度を占めています。会社員の方であれば、国民年金保険料は毎月給与天引きされている厚生年金保険料の中に含まれているため、保険料の未払いや滞納とは縁がないのですが、第1号被保険者は自ら保険料を納める必要があるため支払が滞ってしまう可能性も考えられます。
2022年度の国民年金保険料は2021年度よりも20円安い月1万6590円
国民年金保険料は毎年改定が行われ、その年度の月額保険料に各年度の保険料改定率を乗じて決められます。この保険料改定率は、毎年度の賃金上昇率を加味して決められており、2022年度の国民年金保険料は、2021年度よりも20円安い月1万6590円となりました。
一方、もっと長い期間で保険料推移を振り返ってみれば、全体的には増加傾向で推移していることが分かります。以下は、過去30年間の国民年金保険料の推移を表したグラフですが、1989年度の保険料は8,000円だったのに対し、2022年度は16,590円ですので、この約30年間で保険料は約2倍に値上がりしたことになります。
●過去約30年間の国民年金保険料の推移
日本年金機構HPより筆者作成
いまだに毎月納付書で現金払いをしている人は、保険料の節約ができるかも
この保険料は、所得に関係なく一律の金額ですから、低所得層の方にとっては、大きな負担と感じる方は多いでしょう。この負担を少しでも抑えたいという方には、保険料の支払い方法を見直すことをおすすめします。国としても保険料の納付率を少しでも上げたいという思惑から、色々な割引制度を用意しているからです。
①当月末に銀行口座から自動で引き落としする「早割」
国民年金保険料は通常、日本年金機構から送られてきた納付書で現金支払いしますが、この納付書の納期限は翌月の末日になっています。例えば、4月分の保険料であれば、通常納付期限は翌月の5月31日ということになります。
「早割」は、この納付期限を1ヶ月前倒ししてさらに口座振替で銀行口座から自動で引き落としする方法です。通常の口座振替では翌月末の引き落しですが、「早割」を使って当月末に引き落しをすれば、月50円保険料が安くなります。年間で600円の節約になります。
●国民年金保険料の早割
日本年金機構HPより
②6カ月分、1年分、2 年分をまとめて支払う「前納」
もっと節約をしたい方は、ある程度まとまった期間の保険料を支払う「前納」制度を活用しましょう。この納期限よりも早く納めるのが前納で、前納には半年前納、1年前納、2年前納があります。
早割は支払い方法が口座振替に限られていましたが、前納は現金支払でも割引が認められていることが特徴ですが、現金納付にくらべると口座振替の場合のほうが割引率は高くなっています。もちろん、前納と口座振替をWで利用することも可能ので、例えば、2年前納で口座振替の場合だと最大15,840円の割引となり、約1カ月分の保険料を節約することができます。
●国民年金保険料の前納
日本年金機構HPより
お得な「2年前納の口座振替」ではまりがちな落とし穴
割引率を考えると、2年前納の口座振替が一番お得ですが、人によっては落とし穴にはまる可能性があります。2年前納の口座振替を利用した場合、約38万円程度の支払いが、2年おきに到来することになります。しかも、通知が届くのは4月で、それから1カ月弱で支払日が訪れるのです。一度に約38万円の支払いはなかなかの負担です。
この支払いについて、すっかり忘れていると、残高が少なくなっていて引き落としができなかったということにもなりかねません。そうなると、次の振替日(翌年度の4月末)までの間、割引が一切ない翌月末口座振替になってしまうのです。そんな事態に陥る可能性があるなら、初めから1年前納や半年前納、または早割の口座振替にとどめておく方が賢明かもしれません。
このように、家計管理の仕方や資金計画の立て方によってどの支払い方法が自分にとって本当におトクなのかは変わってきます。国民年金保険料に限ったことではありませんが、特に年払いやまとめ払いをする際には、事前に自動積立定期などを活用して別に資金を確保しておくとよいでしょう。
国民年金を未納のまま放置するとどうなるか?
低所得者層や失業中の方は日々の生活で精いっぱいで、なかなか保険料の支払いまで手が回らないということもあるかもしれません。だからといって保険料を払わずにいると、未納と判断されてしまいます。国民年金を未納のまま放置することによるリスクは以下のようなものがあります。
①将来もらえる年金が減る
年をとったときに受け取れる老齢基礎年金は、それまで支払った額に応じて受給額が決定するため、年金の未納期間がある人はその分受け取れる年金も少なくなってしまいます。保険料払込期間が10年間(受給資格期間)に満たない場合、65歳からの老齢基礎年金をもらうことができません。例えば、9年間だけは保険料を支払ったとしても、10年に満たない場合では、将来の年金は1円も受け取ることができなくなってしまいます。
②障害年金や遺族年金が受け取れない可能性がある
病気やケガで働けなくなった時にもらえるはずの障害年金、死亡時にもらえる可能性のある遺族年金の受給権も失う可能性があります。保険料納付状況(※)について、年金加入期間の2/3以上の年金保険料の納付または免除、もしくは1年間保険料の未納がないことといった一定の条件がありますので、この条件を満たせない場合には、障害年金や遺族年金をもらうことができません。
(※)障害年金は初診日、遺族年金は亡くなった日より前の保険料納付状況
国民年金の納付が困難な場合には免除や減額も可能
経済的な事情により、保険料の納付が難しい人のために国の救済制度として用意されているものに、納付猶予や申請免除があります。
●納付猶予
失業したり、収入が減少したりして、本人と配偶者の前年の所得が一定以下の場合に、本人の申請によって、保険料の支払いを一定期間待ってもらえる制度です。こちらの制度を利用できるのは、50歳未満の人となっています。
●申請免除
本人・世帯主・配偶者の前年の所得が一定以下、または失業などによって、経済的に苦しい場合に、本人が申請すると、保険料の納付が免除される制度です。免除額は、所得に応じて、「全額」「4分の3」「半額」「4分の1」の4種類があります。
上記の納付猶予や申請免除を受けた期間は、受給資格期間にカウントされるため、老齢年金、障害年金、遺族年金のいずれも受給できます。ただし、老齢年金の受給額は、免除額に比例して減額され、満額受給はできませんので注意しましょう。
まとめ
国民年金保険料の支払いが負担だなあ…と考えてしまう心情もよく分かります。ですが、お金がないからと支払いを放置している間に、体調不良になり病院へ行き、その後、障害年金を受給できる障がい状態に該当したにもかかわらず、保険料納付要件を満たせず受給できなかった…といった非常に残念なケースも考えられます。
用意されている国の保障をしっかりと活用したいのであれば、保険料は納付しておいた方が間違いないでしょう。収入が少なくてどうしても無理なときは、急いで免除等の手続きをすれば、しばらくの間は未納のリスクを防ぐことができますので、困ったときは、すぐに担当窓口や専門家に相談してくださいね。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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