25/04/01
傷病手当金と老齢年金のダブル受給は可能なのか

在職中に病気やケガにより休職することになった場合、要件を満たせば健康保険から傷病手当金をもらえます。ただ、傷病手当金を受給中に老齢年金をもらうことになった場合、傷病手当金と老齢年金は併給できるのでしょうか?
今回は、老齢年金のほか障害厚生年金についても傷病手当金と併給できるかどうかを解説します。また、傷病手当金を返納しなければいけないケースもご紹介します。
傷病手当金と老齢年金は同時にはもらえない
傷病手当金とは、会社員など健康保険の加入者が病気やケガで働けなくなり、その間の給与が受けられない場合に、加入している健康保険から支給される給付金のことです。4日以上休職する場合に支給されますが、最初の3日間は待期となり、4日目から1日につき標準報酬日額の3分の2に相当する額が支給されます。
このように傷病手当金は基本的に給与が受けられない場合にのみ、生活保障として支給されるものです。これは老齢年金に対しても同じことがいえます。
たとえば退職間近に病気で4日以上休職することになった場合、要件を満たせば退職後も傷病手当金を継続給付することができます。しかし、65歳で老齢年金を受給することになった場合、生活費は年金でまかなえるので、傷病手当金を同時にもらうことはできません。
ただし、老齢年金額の360分の1の金額よりも傷病手当金の日額が多い場合に限り、その差額だけはもらうことができます。
傷病手当金は他の年金等があると調整される
傷病手当金は老齢年金と同時にもらうことができないとお伝えしましたが、傷病手当金は給与や他の年金等が支給される場合に調整されることは覚えておきましょう。他の年金等とは、老齢年金のほか障害厚生年金、障害手当金、労災保険からの休業補償給付、出産手当金が該当します。
●障害厚生年金または障害手当金は調整される
障害厚生年金は、厚生年金の加入者が病気やケガが原因で障害等級の1級から3級に該当した場合にもらえる年金です。また障害手当金は、障害厚生年金に該当するほどの障害状態ではないが、病気やケガで仕事や生活が制限されるようになった場合にもらえる一時金です。
傷病手当金は、障害厚生年金や障害手当金とも調整されます。
傷病手当金と同じ病気やケガで障害厚生年金をもらうことになった場合、傷病手当金は支給されません。ただし、障害厚生年金の360分の1の金額が傷病手当金の日額よりも低い場合に限り、その差額だけはもらうことができます。
また、障害手当金を受け取ることになった場合も、もらえる傷病手当金の合計額が障害手当金の額に達するまでは傷病手当金は支給されません。
このように、傷病手当金は他の年金等とも調整されるため、場合によってはもらえなくなることがある点は理解しておきましょう。
調整されずに受け取った傷病手当金は返納の必要あり
原則として傷病手当金は老齢年金や障害厚生年金とは併給できません。そのため、傷病手当金と老齢年金や障害厚生年金の受給期間が重複している場合、重複部分の傷病手当金は過払いになるため、一部または全部を返納する必要があります。
たとえば傷病手当金を受給中に同じ病気やケガによる障害厚生年金の対象者となり、さかのぼって障害厚生年金を受け取る場合、あるいは傷病手当金を受給中にさかのぼって老齢年金を受け取ることになった場合は、支給が重複する期間の傷病手当金を返納しなくてはならないので、注意が必要です。
ただし、障害厚生年金や障害手当金の場合、傷病手当金とは異なる病気やケガによるものであれば返納する必要はありません。
傷病手当金と老齢年金の調整に要注意
傷病手当金は病気やケガで働けないときの生活を保障するためのものなので、給与を受けることができないときに支給されます。また、老齢年金や障害厚生年金、障害手当金も生活保障のために支給されるものなので、傷病手当金とは併給できません。ただし、老齢年金や障害厚生年金の受給額が傷病手当金よりも少ない場合は、その差額のみ支給されます。
また、傷病手当金を受給中に老齢年金や障害厚生年金をさかのぼってもらう場合、受給期間が重複する部分は過払いとなるため、傷病手当金を返納しなければいけなくなるので注意しましょう。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。

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