23/05/14
「もらえるのにもらっていない」”置き去り年金”3選
「加入していたことを覚えていなかった」「もらえることを知らなかった」こういった理由で、受給資格があるはずの年金の受け取り手続きをしない方がいます。「せっかく受け取れる年金を受け取らないなんてもったいない」と思うことでしょう。しかし、そんなあなたにも、実は存在を忘れている年金があるかもしれません。本記事では、特にもらい忘れてしまいがちな「置き去り年金」を3つ紹介します。
置き去り年金①:企業型確定拠出年金(企業型DC)
年金には、国民年金や厚生年金といった「公的年金」の他に、会社が任意で加入して従業員の年金に上乗せする「企業年金」があります。企業型確定拠出年金は、そんな企業年金の一つ。会社が毎月決まった金額のお金を積み立て、それを従業員が自分で運用し、老後に受け取る、という仕組みです。
企業型確定拠出年金に加入するには、制度を導入している会社に勤める必要があります。逆に言うと、たまたま企業型確定拠出年金制度がある会社に入社したことによって、内容をよく理解せず、言われるがままに加入してしまった方もいるかもしれない、ということ。入社初日に企業型確定拠出年金の説明を受けて加入申請書を記入したものの、数ヶ月もすると加入したことをすっかり忘れてしまう、といった場合もあるでしょう。
企業型確定拠出年金に加入している方がその会社を退職した場合、これまで積み立ててきたお金を転職先の企業型確定拠出年金もしくは個人型確定拠出年金(iDeCo)に移さねばなりません(移換)。移換手続きは自分で行う必要があるのですが、そもそも自分が加入していたことを忘れている方は、移換手続きを行うことなく放置してしまうのではないでしょうか。
放置された資産は6ヶ月経つと現金化され、国民年金基金連合会に自動で移されます(自動移換)。国民年金基金連合会に移されたお金は運用できず、毎月管理手数料が引かれて少しずつ減ってしまいます。最悪の場合にはそのまま老後を迎え、自分が受け取れるはずだった年金に気づかないまま生涯を終えてしまうことも。国民年金基金連合会によると、2023年3月の時点でおよそ118万人分もの資産が放置されているとのことです。
せっかく積み立てた資産が余計な手数料で減ってしまうのも、加入していたことに気づかなかったせいで受け取れるはずの年金の受け取り手続きを行わないのも、非常にもったいないことですよね。
このような「もったいない」を防ぐために、自分が企業型確定拠出年金に加入しているかどうか勤務先に確認しましょう。転職経験のある方は、前の会社で企業型確定拠出年金に加入していた可能性があります。運営管理機関や国民年金基金連合会から案内が届いていないか確認し、加入履歴があった場合は速やかに移換の手続きを行ってください。
置き去り年金②:厚生年金基金
厚生年金基金も、企業型確定拠出年金と同じ企業年金の一つ。公的年金である厚生年金の一部を国に代わって給付し、それに加えて独自の支給も行います。企業型確定拠出年金より歴史は長く、ピーク時は1800以上の基金がありましたが、現在はほとんどが解散するか、他の企業年金制度に移行しています。
会社が厚生年金基金を解散した場合や、従業員が基金のある会社を短期間で退職した場合、それまでに積み立てたお金は主に企業年金連合会に移換されます。そのため、厚生年金基金のある会社に勤めていた経験がある方は、企業年金連合会から年金を受け取れる可能性があります。
年金を受給できる時期になると企業年金連合会から通知が送られますが、厚生年金基金のある会社に勤めていた頃から住所や姓が変わった場合は届かないことも。ご自身がこれまで勤めてきた会社に厚生年金基金があったかどうか、一度確認してみてください。企業年金連合会のホームページから、厚生年金基金の年金記録を問い合わせることができます。
受給資格のある方は、受給時期がきたら企業年金連合会への申請手続きを忘れずに行いましょう。
置き去り年金③:遺族年金
「年金」というと老後にもらえる老齢年金をイメージする方が多いかもしれませんが、年金加入者が亡くなったとき、その人によって生計を支えられていた遺族がもらえる遺族年金も忘れてはなりません。
遺族年金は、国民年金に加入していた方の遺族が受け取れる遺族基礎年金と、厚生年金に加入していた方の遺族が受け取れる遺族厚生年金があります。遺族基礎年金は子どものいる配偶者や子どものみが受給できますが、遺族厚生年金は子どもがいない配偶者でも受け取ることができます。
また、遺族の範囲についても遺族厚生年金のほうが広く設定されています。配偶者や子どもの対象者がいなかった場合は父母、父母もいない場合は孫、孫もいない場合は祖父母が年金を受給できます。なお、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方とも、婚姻届を出していない事実婚の配偶者であっても遺族として認められています。
遺族年金を受け取るには、遺族が自分で申請手続きをしなければなりません。日本年金機構から通知が届くわけではないため、申請が必要だと気づかない方や、自分は受給対象者ではないと思い込んでいる方は、年金をもらい忘れてしまう可能性があるのです。
さらに注意していただきたいのは、遺族年金には時効があるということ。年金加入者が亡くなった翌日から5年が経つと、遺族年金をもらえなくなってしまいます。大事な家族を亡くし非常につらく大変な時期ではありますが、忘れずに請求手続きを行いましょう。
まとめ
今回紹介した3つの年金を含む日本の年金は、自分で申請手続きを行わないともらうことができません。受給資格があることに気づかずそのままにしていると、もらえるはずの年金がもらえず、大きな損をしてしまいます。本記事を参考に「置き去りにしていたけど実はもらえる」年金がないか、一度確認してみてください。
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木下七夏 Webライター
大学卒業後金融機関に勤め、個人のお客さま向けの営業を担当。退職後にFP2級を取得し、フリーライターに。FPで学んだ知識や金融機関勤めの経験を生かして、生活にまつわるお金の疑問を分かりやすく噛み砕いて解説する記事を作成している。
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