21/05/31
iDeCo加入者にもしものことがあったら、資産はどうなる? 具体的にどんな手続きが必要なのか
iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)の資産は、原則として60歳になるまで受け取ることができません。しかし、加入者にもしものことがあった場合には、60歳になる前に受け取ることができます。今回は。iDeCoの加入者が障害を負ったり、死亡したりした際の取扱いと手続きについて見ていきましょう。
iDeCoの加入者が障害を負ったり亡くなったりしたらどうなる?
iDeCoは、国民年金に加入している個人が国民年金の上乗せとして加入できる年金の制度です。毎月決められた掛金を拠出し、加入者が自分で運用して、老後に受け取ります。
ところで、国民年金や厚生年金保険は、被保険者が高齢になったときだけでなく、障害を負ったり亡くなったりした場合にも年金が給付されます。では、iDeCo加入者が障害を負ったり亡くなったりした場合にはどうなるのでしょう。
●iDeCo加入者が障害を負った場合
iDeCo加入者(またはiDeCoに加入していた者)が70歳の誕生日の2日前までに以下の状態になった場合に「障害給付金」を受け取ることができます。
【障害給付金を受け取れる人】
・障害基礎年金の受給者
・1級から3級の身体障害者手帳の交付を受けた者
・療育手帳(重度の者に限る)の交付を受けた者
・1級または2級の精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者
障害給付金は、原則として年金として給付されますが、加入している規約によっては、一時金として受け取ることもできます。そして、障害給付金は、受給権者が死亡するか、運用された資産がなくなるまで給付されます。
●iDeCo加入者が死亡した場合
iDeCo加入者(またはiDeCoに加入していた者)が死亡した場合には、その遺族に「死亡一時金」が支給されます。この死亡一時金を受け取れる遺族とは、以下の者になります。
【死亡一時金を受け取れる遺族の優先順位】
第1順位 配偶者
第2順位 子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹であって死亡当時、主に死亡者の収入によって生計を維持していた者
第3順位 第2順位以外の者で、死亡当時、主に死亡者の収入によって生計を維持していた親族
第4順位 子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹であって第2順位の者以外の者
ただし、加入者が生前に子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹のうちから死亡一時金を受ける者を指定していた場合には、その人が受け取ることになります。
また、同順位の受給権者が複数人いるとき、実際に受け取れる死亡一時金は、その複数人で頭割りした金額になり、上記第4順位までに該当する人がいない場合は、死亡一時金に相当する金額は、死亡した者の相続財産とみなして、相続の対象となります。
そして、死亡一時金の金額は、死亡者のiDeCo上で運用された資産の残高の全額となります。老齢などを理由に生前に一部給付を受けていた方の死亡一時金は、残高が少なくなっていることがほとんどですので死亡一時金の金額も少なくなります。また、iDeCo加入者が死亡して5年以内に遺族が裁定請求をしない場合にも、死亡一時金は相続財産とみなされます。
裁定請求の方法
iDeCoの障害給付金や死亡一時金を受け取るには、手続きが必要です。
障害給付金については、記録関連運営管理機関(RK)に対して障害給付金裁定請求書に障害状態にあることを証明する書類(身体障害者手帳のコピーなど)を添付して裁定請求(年金支払請求)を行います。定期的に送られてくる「年金資産の残高の通知」などで記録関連運営管理機関の連絡先を確認し、手続きをしましょう。
死亡一時金については、iDeCo加入者(または加入していた者)の遺族が、iDeCoの運営管理機関に「加入者死亡届」を「死亡診断書」などを添付した上で提出し、さらに記録関連運営管理機関(RK)に、「死亡一時金裁定請求書」を提出することを受給することができます。
また、もともと企業型DCに加入していたものの、企業型DCの資格喪失後6か月以内に手続きを取らず、自動的にiDeCoに移換された方の遺族は、運営管理機関に、「死亡一時金裁定請求書」を提出することで、特定運営管理機関から死亡一時金が受給されます。
まとめ
iDeCoの加入者が障害を負ったり、死亡したりした場合について紹介しました。
特に死亡一時金の場合、請求するのは遺族ですので、死亡者がiDeCoに加入していたことがあるかを遺族が知っているかが重要な点になってきます。親族などには自分がどのようにマネープランニングしているのかをしっかりと話しておきましょう。
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高橋孝治 年金ライター
特定社会保険労務士有資格者、ファイナンシャルプランナー、国会議員政策担当秘書有資格者、法学博士。複雑と言われる年金を分かりやすく解説することを得意としている。「年金は意外と面白いよ!」がモットー。実は本当の専門は、中国・台湾の法律、中国法務だったりする。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』、『中国社会の法社会学』ほか多数。
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