21/01/22
損を招く、年金のヤバイ勘違い5選
年金制度は複雑でわかりにくいもの。多くの人が年金について、残念な勘違いをしています。今回は、特に60歳前後になって勘違いしやすいポイントを5つピックアップします。もらえる年金をもらい損ねることのないよう注意しておいてください。
勘違いその1:年金保険料を払っていない期間が長かったら年金はもらえない
国民年金の加入期間は原則60歳までです。年金保険料の未納期間がかなりある人の場合、60歳が近づく頃には、「今から年金を払っても、もうもらえないのではないか?」と思っていることがあります。
以前は年金受給資格を得るために保険料納付期間が25年以上必要でしたが、現在は10年の納付期間で年金を受給できます。また、納付期間が足りない人については、60歳以降も国民年金に加入できる任意加入の制度もあります。あきらめずに保険料を払うことを考えましょう。
勘違いその2:専業主婦はずっと年金保険料を払わなくていい
会社員の夫に扶養されている妻は、国民年金の第3号被保険者となり、保険料を納付しなくてもよい扱いになっています。しかし、夫が会社を退職した後は、妻は第3号被保険者でなくなります。妻が60歳未満の場合には第1号被保険者となるため、60歳になるまでは保険料を納めなければなりません。
勘違いその3:年金は受給開始年齢になったら自動的に振り込まれる
年金はもらえる年齢になったら勝手に振り込んでくれるわけではなく、請求手続きが必要です。受給開始年齢の3か月前に日本年金機構から年金請求書が届きますので、忘れずに手続きしましょう。もし年金の請求手続きを忘れた場合、年金受給権は5年で時効になるため、順次年金が受け取れなくなってしまいます。
勘違いその4:65歳よりも前に年金を受け取ると年金額が減る
65歳よりも前に年金をもらう場合、次の2つのケースがあります。
●(1) 「65歳からもらえる年金」の繰り上げ受給
65歳から受給できる老齢基礎年金や老齢厚生年金は、受給開始を60歳から64歳に繰り上げることが可能です。繰り上げ受給する場合、受給開始が早いほど年金額は減らされることになります。
●(2) 特別支給の老齢厚生年金
特別支給の老齢厚生年金とは、昭和36年(1961年)4月1日以前生まれの男性及び昭和41年(1966年)4月1日以前生まれの女性がもらえる年金です。「特別支給の老齢厚生年金」の支給開始は、生年月日に応じて、60~64歳までのいずれかの時期になります。
65歳よりも前に年金を受け取ると、繰り上げ受給で年金額が減ると勘違いしてしまうことがありますが、上記(1)と(2)は別のものです。「特別支給の老齢厚生年金」なら、65歳よりも前に受け取っても、年金額が減額になることはありません。
なお、「65歳からもらえる年金」については、受給開始を先延ばしにすれば受給額がアップする繰り下げ受給の制度があります。しかし、「特別支給の老齢厚生年金」には繰り下げ受給の制度はなく、受給開始年齢から5年を経過すると時効で全くもらえなくなってしまいます。「特別支給の老齢厚生年金」の年金請求書(緑の封筒)が届いたら、速やかに請求しましょう。
勘違いその5:60歳を超えて働くと厚生年金は受け取れない
会社で働いている間に支給される老齢厚生年金については、月給や賞与、年金の金額に応じて一部または全額が支給停止になる「在職老齢年金」の制度があります。
60代前半(60~64歳)では、基本月額(老齢厚生年金額を12で割った金額)と総報酬月額相当額(月給に直近1年分の賞与を12で割った額を加えた金額)の合計額が28万円を超える場合に年金額が調整されることになります。もし28万円以下なら年金は全額支給されます。さらに、65歳以上では基準額が47万円となります。働いていても厚生年金を受け取れるケースは多くなっています。
なお、在職老齢年金の制度が適用されるのは、厚生年金保険の被保険者である人です。パート・アルバイトなどで厚生年金保険に加入せずに働く人や自営業者については、年金を減らされることはありあせん。
まとめ
定年退職が近づくと、今後の働き方や年金のもらい方について考えなければなりません。年金のもらい忘れをなくし、受給額をできるだけアップさせるためにも、正しい知識を持っておきましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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