22/01/13
老後資金はいつから貯めはじめるのが正解? 50代からでは間に合わないのか
昔は、老後資金は教育資金の準備が終わったタイミングでの準備を考えたものです。しかし、今は晩婚化が進んだため、第一子が生まれるタイミングが30代後半~40代前半という夫婦が多くあります。そうなると、子どもの教育資金も大事だけど、自分たちの老後資金も心配…と焦りを感じるもの。2つの資金を並行して貯めなければならないからです。では、老後資金はいつから貯めはじめるのが正解なのでしょうか。50代からでは間に合わないのでしょうか。ムリなく貯まる方法を考えてみましょう。
老後資金の準備は、早く取り組むほど良い
2019年に「老後資金2000万円不足問題」が大きな話題になりました。国民年金・厚生年金といった公的年金だけでは、老後2000万円程度不足するというのです。
厚生労働省「令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金の平均受給額(月額)は5万5946円、厚生年金の平均受給額(月額・国民年金含む)は14万4268円。たとえば、夫が厚生年金、妻が国民年金をこの平均額で受給するならば、公的年金による月収は約20万円。年収で240万円程度となります。
もっとも、世帯によって老後に必要となる金額は大きく異なります。また一般に、老後の生活費は現役世代の約7割と言われます。それでも、年金額を計算すると「これでは足りない」と思われる方が多いのではないでしょうか。
老後はまだ先のことと思い、老後資金の準備を先延ばししたとしても、誰もが老後を避けることはできません。少しでもゆとりのある老後を望むのであれば、早めの準備を検討しましょう。
というのも、老後に不足する金額は世帯ごとに違いはありますが、早めに貯め始めること、長く貯め続けることで、老後資金の準備の負担が少なくて済むことは共通しているからです。
たとえば、金利を考えずに10年間で1000万円を貯めるとしたら、月8万4000円ほどを積立てる必要があります。しかし、貯める期間が20年間あるとすれば、月4万2000円ほど、30年間であればさらに少ない2万8000円ほどで済みます。
さらにもし、1000万円を資産運用によって年利3%で増やすことができたとすれば、10年間では7万2000円ほど、20年間では3万2000円ほど、30年間では1万8000円ほどで済みます。資産運用を行い、増えたお金を再び資産運用に回すことで、増えたお金がさらにお金を生み出す複利効果が受けられます。複利効果は、期間が長ければ長いほど、お金を増やすことができます。また、後述するiDeCoやつみたてNISAを活用すると、節税の効果により、効率良くお金を増やすことができます。
資産運用は、運用の期間が長いほど、毎月の負担が少なくすみます。老後資金もしっかり準備したいと思えば、早く取り組む方が有利といえます。
子どもの教育資金の準備と重なるから老後資金は後回しと考えず、毎月、少額ずつでも老後資金の準備を考えてみませんか。複利効果を最大限に生かすためにも、30代、40代と、できるだけ早い時期から始めるのが大切です。
というと、今50代であればもう遅いのではと感じるかもしれませんが、そんなことはありません。50代は、子どもの教育費が一区切りついている時期とも考えられます。50代の収入は、他の年代よりも比較的多いこともあり、お金を貯めやすい場合もあります。そうであれば、ここから定年までの期間を集中し、貯めることもできるはず。「最後の貯めどき」というチャンスを逃さず、早めのスタートを切りましょう。
老後資金を準備するための4つの方法
老後資金を確保するための方法を、優先度の高い順に紹介します。
●老後資金を準備するための方法1:非課税制度を活用し貯める
税金を節約しながら、老後資金を準備できる制度があります。それぞれ活用すれば、お金を効率的にまわすことができ、ムダがありません。具体的には、iDeCoとつみたてNISAがおすすめです。
・iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)
iDeCoは、加入者が毎月一定の金額を積み立て、あらかじめ用意された預金・保険・投資信託などの金融商品で自ら運用し、60歳以降に一時金または年金で受け取る仕組みです。60歳未満の方であれば、原則誰でも始めることが可能です(2022年5月より65歳未満まで利用可能)。
月額5000円からはじめることができ、上限は、加入者の職業等で違いがあります。
iDeCoの最大の特徴は、拠出、運用、受取のどの状況においても、税金がかからないことです。
毎年拠出した積立金はすべて所得控除の対象になり、所得税や住民税が安くなります。また、運用で得た利息、投資での利益には税金がかかりません。受取の際には、公的年金控除、退職金所得控除の対象になり、税制優遇が受けられます。ただし、老後資金を準備するのが目的であり、原則60歳まで引き出すことはできません。
・つみたてNISA
つみたてNISAは、国が定めた基準を満たした投資信託に、20年間かけてコツコツ投資する制度です。年間の投資上限額は40万円です。つみたてNISAは、投資信託などで得た配当金や分配金、売却益などに対して、通常であればかかるはずの税金(20.315%)がかかりません。
たとえば、10万円の利益が出たと仮定すると、通常であれば約2万円が税金で差引かれ残り約8万円を受け取りますが、つみたてNISAは税金がかからないので、10万円をそのまま受け取れます。このように、利益が出ても税金が掛からないため、おトクに老後資金が準備できます。iDeCoと違い、途中どうしてもお金が必要になったら、引き出すことも可能です。
●老後資金を準備するための方法その2:手堅く、先取り貯蓄で貯める
投資は少額だけにし、貯蓄で多めに老後資金を準備したいと思うのであれば、自動積立定期預金や財形貯蓄といった先取り貯蓄に取り組むのも良いでしょう。自動積立定期預金では、毎月一定額を口座から引き落として自動的に貯めることができます。また財形貯蓄は会社の制度としてある場合にしか利用できませんが、給与から一定額を天引きして貯めることができます。
「お金があるとき貯蓄しよう」と思っていても、手元にあるとつい使ってしまいますが、このような方法をとれば、いつの間にかお金が貯まっています。もし、どうしてもお金が必要な場合は、自由に引き出せます。しかし、利率が低い点が難点といえます。そのため、iDeCoなどでベースを作っておくことをおすすめします。
●老後資金を準備するための方法その3:支出のムダを省いて家計をスリムに
現役時代は、収入も多く、少しぐらいのムダであれば、多めに見ることができるかもしれません。しかし、リタイア後の収入はおおよそ決まってきます。リタイア直前になって、焦って家計を見直ししようと思っても、長い間のお金の使い方、習慣を変えるのは難しい…のではないでしょうか。
なるべくなら、若いうちから、支出のムダを省き、家計をできるだけスリム化しましょう。ダラダラとしたお金の使い方を止め、食費は○○円まで、コンビニは利用しない、毎月使ったお金を把握するなどのルール決めをし、メリハリのあるお金の使い方を心がけましょう。
自身のお金の使い方を客観的に診断するには、FPなどお金の専門家に固定費削減の相談するのも一案です。他人に相談することで、気持ちが切り替わり、スムーズな節約生活をスタートできます。
●老後資金を準備するための方法その4:老後も働けるよう健康管理
子どもの教育資金と老後資金の並行準備はなかなか大変。思うように貯まらない場合もあるかもしれません。そんなときは、継続的に働き、収入を得ることも視野に入れておきましょう。
その際、今までの仕事を継続するにしろ、新しい仕事にチャレンジするにしろ、体と心が健康なことが大前提です。活き活きと働くためにも、若いうちから、バランスの良い食事や、適度な運動の習慣など、自分への気配りを忘れず過ごしましょう。
まとめ
老後資金の準備は、時間を味方につけるためにも、1歳でも早く取り組みましょう。そうすることで、ムリなくまとまったお金を貯めることができます。個人の状況に合わせて、準備の方法は変わってきますが、準備できる時間が少なくなれば、焦る気持ちも出てきます。なるべく早く、できることから1つずつトライしましょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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