21/11/17
老後資金が少なめでいい人、たくさん必要な人
以前、世間を騒がせた「老後資金2000万円問題」。これをきっかけに、老後資金に不安を抱えた人は少なくありません。本当に老後のために2000万円もの額を貯蓄しなければいけないのでしょうか?そこで今回は、老後資金2000万円の根拠をご紹介し、老後資金の準備が少なめでもいい人とたくさん準備する必要のある人をケースごとに解説します。
老後資金2000万円問題、本当に生活費は足りなくなるの?
2019年6月、金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループが「老後の生活資金は2000万円不足する」という報告書を発表し、世間を騒がせたことは記憶に新しいのではないでしょうか。報告書によると、毎月約5.5万円の生活費が赤字になるとのこと。「今から2000万円用意しろと言われても…」と困惑した人も多いのではないでしょうか。
この老後資金2000万円問題ですが、実はすべての人に当てはまるわけではありません。なぜなら、これはモデルケースの家庭で予測される数字だからです。報告書を作成するにあたって設定されたモデルケースは以下のものでした。
・夫65歳以上,妻60歳以上の夫婦1組のみの無職世帯
・余命は30年。(夫95歳以上、妻90歳以上まで生きる)
・2017年度家計調査における実収入と実支出から1ヶ月の生活費が54,520円不足と算出
老後資金2000万円問題は、上記のケースに当てはまる家庭での不足額を表しています。つまり、2000万円の不足はすべての家庭に当てはまるわけではないのです。また、家計調査で算出される生活費の不足額も年々異なります。たとえば、2019年度の家計調査での生活費の不足額は高齢夫婦無職世帯で33,269円と減少しています。
年金収入やその受け取り方、持っている貯蓄、寿命、家庭状況などにより、必要とされる老後資金の額は異なります。まずはご家庭の家計状況を確認したうえで、老後生活に必要な資金を考えてみましょう。
老後資金が少なめでいいのはこんな人
年金や退職金の受取額が比較的多くなりそうな人、あるいは生活費が抑えられる人は、老後資金が少なめでも問題なく暮らしていけるかもしれません。たとえば、次のような人が挙げられます。
●共働き夫婦で受け取れる年金が多い
日本の公的年金は2階建てになっています。そのため、2階部分にあたる厚生年金を受け取ることができる人は、老齢年金の額が多くなります。夫婦が共に会社員であれば、公的年金は老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受け取れるため、2人分を合算すると年金額は多くなります。そのため、準備する老後資金は少なめでも対応できるでしょう。
●受け取れる退職金が多い
夫婦が共働きで、退職金制度が充実している会社に勤めている場合、退職金を合算すれば、老後資金として十分に活用できます。先を見越した退職金の使い方を実践できれば、老後資金の準備が少なめでも生活していけるでしょう。事前に、お勤めの会社の退職金規程を確認しておくとよいでしょう。
●定年退職後は地方都市へ移住する予定である
大都市部に比べると、地方都市の物価は低い傾向にあるため、生活費を低く抑えられるでしょう。今よりも生活費を抑えられるのなら、老後資金は少なめでも暮らしていけるかもしれません。ただ、店や病院など生活に必要な施設が近くにない地域は車の維持費がかかり、かえって出費が増える場合もあるので、実際にどのくらい生活費がかかる(抑えられる)のかよく検討しましょう。
老後資金がたくさん必要なのはこんな人
仕事や家計状況によっては、老後資金を多く準備しておかないと、老後の生活に支障が出る場合があります。たとえば、次のようなケースは注意したいですね。
●自営業者、フリーランスで受け取れる老齢年金が少ない
自営業者やフリーランスの場合、公的年金で厚生年金のような2階建てになる部分がありません。そのため、国民年金基金やiDeCo、個人年金保険といった私的年金制度などを利用して老後資金を多めに準備しておかないと、老齢年金だけでは生活費が不足する可能性があります。
●ゆとりある老後生活を送りたい
生命保険文化センターが2019年度に実施した生活保障に関する調査では、ゆとりある老後生活費として必要な額は平均36.1万円という結果が出ています。ゆとりある老後生活を希望する場合は、ねんきん定期便を見て夫婦で受け取れる老齢年金の見込額を確認し、不足する分を貯蓄やiDeCoなどを活用して準備していきましょう。
●退職金の見込額が少ない
勤務年数や会社の退職金制度によっては、十分な退職金を見込めない場合があるかもしれません。そのようなケースの人は、早めに老後資金を準備するための貯蓄や運用、私的年金制度などを始めたほうがよいでしょう。
老後の生活に備えて早めの対策を
老後資金が少なめでいい人と、たくさん必要な人のケースをご紹介しましたが、準備する資金が少なめでいいからといっても安心してはいけません。
現在、日本人の平均寿命は過去最高を更新し続けており、老後の人生は長くなる傾向にあります。これは老後資金が多く必要になることを意味しています。また、人は高齢になると身体の機能が衰えて病気やケガのリスクが大きくなり、場合によって介護が必要になるかもしれません。そんな高齢者リスクに備えた資金も必要になるでしょう。
そこで、老後の経済的リスクに備えて、ライフプランで家計状況を確認しておきたいものです。そのうえで、高齢者リスクを考えた老後資金の準備を始めましょう。老齢年金の繰下げ受給、iDeCoやつみたてNISAの利用など、老後資金を増やすための対策をできるだけ早く始められることをおすすめします。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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