20/12/16
「年金特別徴収」に要注意! 初年度は手取りの年金が大きく減る可能性大
老後に支給される年金は、生活を支える重要なお金となります。ところで、その年金にも税金がかかるのをご存じでしょうか?ここでは、年金から税金を天引きする年金特別徴収について説明します。年金生活初年度は手取りが減ることも知っておきましょう。
年金にも所得税・住民税がかかる
個人で収入があった場合にかかるのが、所得税や住民税といった税金です。働いて得た収入に税金がかかることは誰もが認識していることですが、国などから支給される公的年金にも税金がかかることは意外と知らない人も多いのではないでしょうか?
公的年金は、所得の区分で言えば「雑所得」に該当し、課税対象となります。ただし、公的年金の場合には「公的年金等控除」として一定額が控除されるので、他の所得と比べて優遇されています。
年金生活に入った場合、所得税は年金支給の際に源泉徴収されます。住民税については、各市町村で計算された税額が、年金から「特別徴収」という形で引き落としされます。このほかに、国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)や介護保険料も差し引きされるので、年金の手取りは額面よりも少なくなります。
住民税は前年度の所得を基準に計算される
上に書いたとおり、年金からは所得税や住民税も差し引きされます。と言っても、公的年金の受給額は現役時代の給料よりも少ないケースがほとんどですから、税金はあまり気にならないという人も多いかもしれません。
しかし、ここで少し注意が必要なのは、所得税は今年度の収入を基準に計算されますが、住民税は前年度の収入を基準に計算されるという点です。
会社を退職して年金生活に入った場合、初年度の住民税は、会社員時代の収入に対応した額になります。年金生活になって収入は減ったのに、初年度だけは住民税が高くなってしまうということが起こるのです。さらに、年金特別徴収のしくみにより、住民税をまとめて払わなければならない月があるため、戸惑ってしまうことがあります。
住民税は均等に引き落とされるわけではない
公的年金は、年6回、偶数月(4月、6月、8月、10月、12月、2月)の15日に振込されます。一方、住民税は年金から天引きになりますが、その年度にかかる分が均等に引き落とされるわけではありません。
住民税の年税額が決まるのはその年の6月頃であるため、4月の振込時には今年度の税額をもとに引き落とすことができないのです。また、初年度は特別徴収の開始までにも時間がかかってしまいます。以上のような事情から、年金受給者の住民税の支払金額は、次のようになっています。
(1) 初年度
・年税額の2分の1を、6月と8月の2回に分けて普通徴収(納付書または口座振替)
・年税額の残り2分の1を、10月、12月、2月の3回に分けて特別徴収
(2) 2年目以降
・前年度の税額の2分の1の額を、4月、6月、8月の3回に分けて特別徴収(仮徴収)
・今年度の税額から仮徴収した金額を差し引きした額を10月、12月、2月の3回に分けて特別徴収(本徴収)
年金生活初年度の住民税の支払金額はどうなる?
たとえば、年金生活初年度の住民税の年税額を36万円とすると、各月の支払金額は次のようになります。
●年金生活初年度の住民税の支払金額(年税額36万円の場合)
上の表を見るとわかるとおり、年金生活初年度の6月と8月の支払金額が大きくなってしまいます。10月、12月、2月は、少し支払金額が減ります。2年目からは住民税の年税額自体減りますから、初年度の6月と8月さえ乗り切れば、後はだんだん楽になるでしょう。
まとめ
年金からは税金などが差し引きされるため、額面と手取りには差があります。特に、会社を退職して年金生活に入った場合、年金特別徴収の仕組みにより、初年度は住民税の負担を大きく感じます。年金をもらうようになっても税金はかかるということを認識しておき、あらかじめ資金を準備しておきましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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