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22/09/11

相続・税金・年金

年金「手取りベース」の繰り上げ・繰り下げの損益分岐点は何歳?額面と大きく違うのか

年金「手取りベース」の繰り上げ・繰り下げの損益分岐点は何歳?額面と大きく違う?

毎年の年金額は、受け取り開始の時期により変わります。そして、年金は生涯受け取れるので、長生きするほどもらえる年金額の総額は増えます。となると気になるのは、年金を繰り上げ受給・繰り下げ受給した場合の「損益分岐点」でしょう。
今回は、年金を繰り上げ受給・繰り下げ受給した場合の年金の「手取りベース」での損益分岐点を紹介します。年金額面ベースの繰り上げ・繰り下げの損益分岐点とどれくらい変わるのでしょうか。

年金の額面ベースの繰り上げ・繰り下げの損益分岐点は?

国民年金・厚生年金の受給開始は原則65歳からですが、60〜64歳で受け取りを開始する「繰り上げ受給」、66〜75歳で受け取りを開始する「繰り下げ受給」も可能です。

繰り上げ受給では、1か月早めるごとに年金の受給率が0.4%ずつ減ります。一方、繰り下げ受給では、1か月遅らせるごとに0.7%ずつ受給率が増えます。つまり、年金の毎年の受け取り額は早く受け取る減り、遅く受け取るほど増えます。また、年金は一度受け取りを開始すると、その受給率が一生続きます。したがって、何歳まで生きるかによって、年金の「損益分岐点」が変わってくることになります。

繰り上げ受給・繰り下げ受給の年金受給額を65歳時点と比べたときの損益分岐点となる年齢をまとめると、次のようになります。

●年金の額面ベースの繰り上げ・繰り下げの損益分岐点(65歳と比較)

(株)Money&You作成

いつから受け取るかで損益分岐点は変わってきますが、繰り上げ受給では80歳〜84歳まで長生きしたら65歳受給より損になること、繰り下げ受給では77歳〜86歳まで長生きしたら65歳受給より得になることがわかります。
なお、65歳時点の年金額を180万円としていますが、額面ベースの場合、年金額がいくらでも損益分岐点となる年齢は同じです。

65歳時点との損益分岐点だけでなく、65歳・70歳・75歳時点の損益分岐点も比較してみましょう。

●年金65歳受給・70歳受給・75歳受給の損益分岐点(年金額面ベース)

(株)Money&You作成

グラフから、額面ベースでの年金の損益分岐点を見ると、
・81歳:65歳受給と70歳受給の損益分岐点
・86歳:65歳受給と75歳受給の損益分岐点
・81歳:70歳受給と75歳受給の損益分岐点
だとわかります。

年金の手取りベースの繰り上げ・繰り下げの「真」の損益分岐点

ここまでお話しした損益分岐点は、年金の額面ベースのものです。実際に受け取れる手取りの年金額は、額面から税金(所得税・住民税)や社会保険料(国民健康保険料(74歳まで)・後期高齢者医療保険料(75歳以上)・介護保険料)を支払った後の金額です。年金の損益分岐点は、手取りベースで考えたほうが自然でしょう。

なお、年金の手取り額は、他の所得・年齢・家族構成・お住まいによって変わります。
今回の前提条件は以下の通りです。
・東京都文京区在住、独身、扶養親族無し
・65歳受給の年金額面180万円(月15万円)
・年金以外の収入無し
・所得控除は基礎控除と社会保険料控除のみ

年金の手取りベースの繰り上げ・繰り下げの「真」の損益分岐点を次のようになります。

●年金の手取りベースの繰り上げ・繰り下げの「真」の損益分岐点(65歳と比較)

(株)Money&You作成

表の左側は上でも紹介した年金の額面ベースの繰り上げ・繰り下げの損益分岐点、右側は年金の手取りベースの繰り上げ・繰り下げの損益分岐点を示しています。両者を見比べてみると、おおむね額面ベース+2歳程度が手取りベースでの繰り上げ・繰り下げの損益分岐点になっていることがわかります。

よくみると、62歳のところだけ手取りベースの損益分岐点が遅くなっていることがわかります。65歳になると、「公的年金等控除」の控除額がそれまでの60万円から110万円にアップします。すると、62歳の年金額面154.1万円が住民税非課税世帯に該当する金額となり、住民税がかからなくなるため、65歳未満の時よりもグンと手取りが増えます。そのため、損益分岐点が遅くなっているのです。

さらに、65歳・70歳・75歳時点の年金手取りベースでの繰り上げ・繰り下げの損益分岐点も比較してみましょう。

●年金65歳受給・70歳受給・75歳受給の損益分岐点(年金手取りベース)

(株)Money&You作成

グラフから、手取りベースでの年金の損益分岐点を見ると、
・84歳:65歳受給と70歳受給の損益分岐点
・89歳:65歳受給と75歳受給の損益分岐点
・94歳:70歳受給と75歳受給の損益分岐点
だとわかります。

グラフ上は額面ベースの損益分岐点+3歳となっていますが、実際は2歳1ヶ月〜2ヶ月程度となっています。

まとめ

年金の「損益分岐点」を、額面ベースの場合と手取りベースの場合で比較して紹介してきました。年金の手取りベースの損益分岐点は、額面ベースの損益分岐点に+2歳程度の年齢となることがわかりました。

老後、実際に振り込まれる年金は、手取りベースの金額です。ですから、年金の繰り上げ・繰り下げを検討する際は、手取りベースの年金額で考えるのが重要です。
税金・社会保険料は他の所得・年齢・家族構成・お住まいなどによって変わります。ご自身の正確な情報は年金事務所・年金相談センターなどでご確認ください。

今回の内容は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください

頼藤 太希 マネーコンサルタント

(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki

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