19/12/04
年金保険料を払わない人の末路
年金には、国民年金と厚生年金があります。このうち、厚生年金は会社に勤務する正社員などが加入しているものです。保険料は給料から天引きされているので、保険料を払っていないということはありえません。
でも、自営業や学生などが加入している国民年金の保険料は、自分で納付しないといけないので、支払い忘れや預金の残高不足などできちんと払えていないことがあります。これを「未納」といいます。
では、国民年金保険料が「未納」だと、どうなるのでしょうか。
国民年金保険料の「未納率」は約25%
平成30 年度の国民年金保険料納付状況は次の表のとおりです。
令和元年6月発表厚生労働省資料より
「納付率(現年度分)」が、その年度内に支払われた保険料の割合です。
未納の保険料は、翌々年までなら支払うことができます。例えば平成28年度分は平成30年度中に納付すればいいことになっています。「最終納付率」はそうして、各年度の2年後までに支払われた保険料を含めた割合を表します。
この表からわかる通り、納付率も最終納付率も、年々増加傾向にはあるものの、依然25%程度の未納が発生しているのです。
未納を続けるとどんなことが起きるの?
国民年金を未納のままにしておくと、どんなことが起きるのでしょうか?
まず、将来受け取る年金がもらえなくなる、または少なくなることが挙げられます。
65歳から受け取る老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は、保険料を10年以上払っていないと受け取れません。例えば保険料の納付期間が119カ月で、あと1カ月足らないだけでも年金は1円ももらえないことになります。
また、老齢基礎年金は20~60歳の40年間すべての期間の保険料を払うことではじめて満額の年78万100円(令和元年度の額)の年金を受け取ることができます。未納期間が1カ月でもあると、将来の老齢年金は少なくなってしまいます。
また、年金には65歳から受け取る老齢年金だけでなく、一定の障害を負ったときに請求できる「障害年金」や、死亡したときに一定の遺族に支払われる「遺族年金」もあります。
この障害年金や遺族年金にも「保険料納付要件」という条件があって、障害を負うまで、または死亡するまでに、あまりにも未納期間が多いと、年金を請求することができなくなります。
1年間未納だと、将来の年金はいくら減る?
老齢基礎年金は20~60歳の40年間すべての期間の保険料を納付してはじめて満額の年78万100円(令和元年度の額)を受け取ることができます。この40年のうち、厚生年金加入期間は自動的に保険料の納付済期間となりますので、国民年金加入期間に未納がどれだけあるかが重要になるのです。
例えば、未納期間が1年あったとすると、
78万100円×12カ月/480カ月=1万9502円(減額)
年間約2万円年金が少なくなってしまいます。
延滞金や差し押さえの対象になることも…
本来、保険料は翌月末日までに納付しなければなりませんが、その間に納付しなかったら督促状が送られてきます。その督促状に書かれている期限までに保険料を払えば延滞金はかかりません。
その督促状を無視して未納を続けていた場合、2年後の翌月末までおさめることができるとはいえ、納付期限である翌月末日の次の日から、納付した日の前の日までの期間に対して、延滞金がかかってしまいます。
日本年金機構ホームページより抜粋
日本年金機構は、前年の所得額を把握できるため、所得があるにもかかわらず国民年金保険料を納めていない人に対しては、強制徴収の対象として督促状などを発送します。それでも保険料を納めない場合は、滞納している本人だけでなく、世帯主や配偶者の財産の差し押さえが行われます。
まとめ
国からの年金は、生きている間はずっと受け取れるのが大きな特徴です。年を取って収入源が年金だけになってから、受け取れる年金が少なかったら、生きていく上でとても不安ですよね。
また、事故で大きなけがをして障害が残り収入が減ってしまったにも関わらず、保険料を払っていなかったばかりに障害年金の請求ができなかった事例や、幼い子どもがいる妻が大黒柱の夫を亡くしたときにも、保険料を払えていなかったことで、遺族年金を受けることができなかった事例を、筆者はいくつも見てきました。
そんな不安な思いや悲しい思いをしないように、国民年金保険料を期限までにしっかり納付したいものです。
【関連記事もチェック】
・失業手当をもらっていると年金がもらえない? 雇用保険との調整に要注意
・学生時代の年金保険料を払わなかったら、年金は年間数万円以上減る!
・自分の年金はいくら? 新ねんきん定期便の見方を徹底解説!
・iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)のオススメ金融機関はこの3社
・単身者は老後の生活費を年金だけに頼ると「老後破綻」に。でも、こうすれば老後破綻は免れる!
小野 みゆき 中高年女性のお金のホームドクター
社会保険労務士・CFP®・1級DCプランナー
企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆などを中心に活躍中。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう