20/10/08
退職金の運用の最適解はコレだ
「そもそも退職金がいったいいくらなのか?」自分が受け取れる金額を、キッチリわかっている人は案外少ないものです。50代の約4割の人が、自分の受け取る退職金の額を把握していないというアンケート調査もあります(日本FP協会「世代別比較 くらしとお金に関する調査2018」)。
ちなみに退職金の額はどのくらいなのかというと、もちろん企業によって違います。厚生労働省の「就労条件総合調査結果の概況」(平成30年)によると、勤続35年間以上の大卒・大学院卒の場合は平均2156万円です。
しかし、退職金を受け取ってから、どうしようと考えるのではちょっと遅いです。事前に計画を立てておいた方がいいでしょう。
えっ、「退職金の金額は調べていないが、退職金の使い道だけは、決まっている?」
ちょっと待ってください。どの口がそんな寝ぼけたことを言っているのですか!
退職金というのは、余裕資金ではなくて、大切な老後の生活資金なのです。
こ退職金を安全に、しかも少しでも増やすことで、資金寿命を長くしたいですね。
今回は、退職金を運用するための、もっともいい方法を考えていきましょう。
退職金の額は、だいたい事前に知っておく
繰り返しますが、退職金とは余裕資金ではありません! 老後のための大切な生活費なのです。これを勘違いすると、運用で失敗してしまいます。
退職金の金額がわからないのに、使い道だけ決めた人は、もし思っていた金額より少なかった場合に、老後の予定が大きく狂ってしまうことになります。
たとえば、退職金を使って住宅ローンを完済するというのは、正しい使い道だと思いますが、想像していたより退職金が少なかった場合、住宅ローンを完済することができなくなります。定年後も住宅ローンが残ってしまうと、予定が狂ってしまいますね。
まずは、退職金の額を確認しておきましょう。総務部などに確認すると教えてくれるはずです。
定年後、資産運用デビューはしないほうがいい
雑誌などには、退職金を運用しないと老後資金が尽きてしまうと言うような記事が多く見られます。これは、本当でしょうか?
たしかに運用をすることで資金寿命を延ばすことができます。しかし、これがすべての人に当てはまるかというと、そうではありません。
それまで、運用経験がある人は、定年後も続けるのはいいかも知れません。しかし、退職金というまとまったお金ができて資産運用デビューという人は、必ずしもこれが正解とはいえません。むしろ、運用を失敗して大切な資金を減らす結果になってしまうことが多いのです。
では、運用デビューの人が陥りやすい失敗についてどんな落とし穴があるのかを解説していきましょう。
金融機関のいいなりは絶対にダメ!
退職金というまとまったお金が銀行に入金されると、すかさず、銀行から連絡が入るというのはよくある話です。「運用をしませんか?」という案内です。そこで、のこのこと出掛けて行くと、「ネギを背負ったカモ」になってしまうことがあります。
金融機関でよく勧められるのが、外貨建ての変額保険です。保険だから元本は保証されているという説明があるかも知れませんが、それはあくまでも外貨での保証です。円に換えたときの保証はありません。保険といっても金融商品のひとつだと思ってください。もちろん手数料は高めです。途中解約したら元本割れをします。
また、退職金特別プランという投資信託と円預金の50%ずつのセット販売を勧められます。一見、円預金の金利が高くお得なように見えますが、セットされている投資信託の手数料(購入時手数料)が高くなっているため、大きくマイナスからのスタートになる商品です。信託報酬も多くは高いものだと思ってもいいでしょう。
株デビューの運用は初心者の定年退職者に不向き?
株式投資は、資産運用の方法としてはとても有効です。値上がりによる利益だけでなく、株主優待がありますし、配当金もあります。高配当ならば毎年配当金を手にすることができます。
しかし、株の値動きは激しいものです。当然上がるときはいいのですが、下がるときもあります。こればかりは仕方がありませんが、それで資金を減らしてしまうと大変です。
現役時代の資金とは違い、老後資金は減ってしまうとそれを取り返すのが難しいのです。
株は運用方法としてはいいのですが、やはり余裕資金で行いたいものです。
「不動産投資で家賃収入」はリスクが高い
退職金を使って不動産を購入して、家賃収入を得て悠々と暮らそうと、不動産投資を考える人もいます。しかし不動産投資も成功するとは言えません。入居者がなかなか決まらなくて、家賃が入らないとか、思っていたよりも物件価値が下がってしまうということもあります。
そうなれば、リスクの高い投資になります。退職金をつぎ込んでするにはリスクの高い投資です。さらに借金をしてまで運用するのはもっと危険です。
退職金の運用の最適解とは「使ってしまう?」
最初にも言ったように、退職金とは余裕資金ではなく、老後の生活費ということを考えれば、投資などの運用には向きません。とはいっても現金や預金で持っておくのもインフレになってしまうとお金の価値が下がってしまうので、正解とは言えません。
退職金の運用は、あれもダメこれもダメと、みんなダメではないのか? では、どうすればいいのか?ということになりますよね。
私が考える退職金の使い道の最適解というのは、生活費に使ってしまうと言うことです!
えっ?それだと老後の生活が破綻ではないか!という声が聞こえてきます。
最後まで聞いてください。退職金を生活費に使って、年金の繰下げ受給をするのです。
繰下げ受給は、年金の受給開始時期を65歳より後に遅らせることです。1年繰下げ受給をすると、受け取れる年金額は8.4%増えます。最長5年間、70歳まで繰下げ受給をすると42%の増額になります。
年金は、投資商品ではありませんが、これだけの高利回りの商品というのはなかなかありません。しかも、国の保障がついているようなものなので、安全です。
退職金の運用を次のように考えてみてはいかがでしょうか。
「老後資金の資金を年金(繰下げ受給)に移し換える」
年金は、増えた額が一生涯受け取ることができるので、長寿社会にとてもマッチしていると思います。
検討してみてはいかがでしょうか?
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長尾 義弘 NEO企画代表
ファイナンシャル・プランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『お金に困らなくなる黄金の法則』『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。
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