24/07/16
定年後に貧乏転落…注意すべき5つの支出
定年を迎えると、まとまった金額の退職金をもらえる一方、毎月の収入が減るという具合に、入ってくるお金が大きく変わります。それに合わせて支出も気をつけなければならないのですが、中にはお金の使い方を間違えてしまうケースも。支出を間違えてしまうと、定年後に貧乏を招きかねません。今回はそんな、定年後に貧乏を招く5つの「NG支出」をランキング形式で紹介します。「NG支出」を避け、お金を激減させないよう気を付けましょう。
定年後のお金「NG支出」5位:ぜいたくな生活をするためのお金
退職後は生活のレベルを下げる必要があります。それまでと同じ生活を続けていれば、お金が激減してしまうかもしれません。
●老後は収入が減る
65歳になると、公的年金が支給開始になります。年金の額は人それぞれですが、国民年金と厚生年金の両方から年金がもらえる会社員でも、1か月あたりの平均額は約14.5万円です(厚生労働省「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」より)。もし国民年金だけなら、満額でも月6.8万円(2024年度)なので、かなり少ない金額になります。
年金生活になったら、現役時代よりも収入が減ることを認識しておきましょう。収入が減ってからも現役時代と同じ生活を送っていると、毎月の家計は当然赤字になってしまいます。
●老後の収入と支出はどれくらい?
老後の平均的な収入及び支出の額をみてみましょう。総務省統計局が公表している「家計調査報告(2023年度)」によると、「65歳以上の夫婦のみ無職世帯」「65歳以上の単身無職世帯」の1か月あたりの収入及び支出の平均額は次のとおりです。
<65歳以上世帯の収入と支出の平均>
総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要」
より筆者作成
夫婦二人で生活している家庭でも、一人暮らしの家庭でも、毎月の収支は3万円以上の赤字となっています。赤字になった分は、貯蓄から補てんしなければなりません。貯蓄が十分でなければ、やがてお金が尽きてしまい、生活に困窮する可能性があります。
●老後のぜいたくは控える
仕事を引退した後も、頻繁に外食したり飲みに行ったりしていると、あっという間にお金はなくなります。外食はたまのお楽しみとし、健康のためにも飲みに行く回数も減らしましょう。
外食しなくても、家で美味しいものを食べられるサービスもたくさんあります。簡単に美味しいものが作れるミールキット、冷凍のお取り寄せグルメ、お弁当やお惣菜の宅配など便利なサービスを活用しましょう。
旅行やレジャーも、お金を使ってしまうイベントです。時間があるからと何度も旅行に行っているとお金がなくなってしまいます。旅行は年に1回などと決めておくとよいでしょう。レジャーを楽しむときには、シニア割引なども活用すると節約になります。
●老後は生活をダウンサイジング
老後に安心して暮らすためには、生活のダウンサイジングが必要です。今までの生活を見直し、必要なものだけで暮らすことを覚えましょう。普段はシンプルに暮らし、たまの贅沢を楽しむというメリハリをつけるのがおすすめです。
今はインターネットを活用し、オンラインで勉強や習い事をすることもできます。家でできる趣味を作り、「おうち時間」を充実させると無駄遣いも減らせます。
定年後のお金「NG支出」4位:子供や孫へのお小遣い
かわいい子供や孫には、お小遣いを渡したり、何かを買ってあげたりしたくなるものです。しかし、子供や孫のためとはいえ、無計画にお金をあげすぎるのは問題です。子供や孫にばかりお金を使い過ぎないように気を付けましょう。
●子供や孫は一人だけとは限らない
子供の数が少なくても、孫の数はもっと多くなることがあります。最初の孫にしてあげたことは次の孫にもしてあげないと…と考えるのも当然のことなので、孫が増えるごとに出費もふくらんでいきます。1人の孫に使っている金額はそれほど多くないこともあるでしょう。しかし、孫全員にお金を使っていると、いつの間にか負担が大きくなってしまいます。
●子や孫への贈与には非課税特例を活用
子や孫へ金銭的な援助をしたい場合には、こまめにお小遣いを渡すのではなく、教育資金などとしてまとまった金額を贈与する方法を考えてみましょう。子や孫に教育資金や住宅購入資金、結婚・子育て資金といった目的で金銭の贈与をする場合、次の表のとおり、一定金額まで贈与税が非課税になる特例があります。
<贈与税の非課税特例>
筆者作成
上記のような目的でまとまった現金を贈与すれば、相続財産を減らして、将来の相続税を抑える効果もあります。子どもや孫への贈与を考えたときには、特例が利用できないか確認してみましょう。
ただし、財産を渡し過ぎてしまうと、自分が長生きした場合に、お金が尽きてしまいます。将来逆に子供や孫に援助を受ける結果にならないよう、注意して贈与しましょう。
定年後のお金「NG支出」3位:自宅のリフォーム費用
定年直後はまだ元気でも、もっと歳をとったら動きづらくなります。将来に備えて早めに自宅をリフォームしようと考える人も多いでしょう。しかし、費用をかけて自宅を全面バリアフリーにしても、結局は施設に入ることも考えられます。老後のリフォームは必要最低限にとどめておくのがおすすめです。
●安易にリフォームローンを組まない
リフォーム工事をするとなると、費用がかかってしまいます。貯金からリフォーム費用を用意できない場合には、リフォームローンを組んで借り入れすることを考えるかもしれません。一般に、申し込み時の年齢が70歳以下であれば、リフォームローンを組むことは可能です。ローンで資金が調達できるとなると、あれもこれもと欲が出て、余計なリフォームをしてしまうこともあります。
しかし、高齢になってから安易にローンを組むのは危険です。毎月の収入が減っているのに返済の負担が増えれば、生活がますます苦しくなってしまうでしょう。ローンを組んでリフォームするかどうかは慎重に考えなければなりません。
●リバースモーゲージを利用するなら
リバースモーゲージとは、住んでいる自宅を担保にお金を借りる方法です。リバースモーゲージを利用すれば、リフォーム資金を用意することもできます。通常のリフォームローンでは毎月元本と利息を返済しますが、リバースモーゲージでは生きている間は利息のみの返済でかまいません。亡くなったときに現金一括または自宅の売却で残債務を清算する仕組みになっているからです。
リバースモーゲージを利用すれば、毎月の返済の負担を抑えられる点はメリットです。ただし、リバースモーゲージには契約期間が定められていることがあります。この場合、契約終了時に生きていれば、自宅を売却等して残金を一括返済しなければなりません。また、リバースモーゲージを利用すると、子供や孫に家を相続させられなくなるデメリットもあります。家族への影響も大きいため、家族間でよく話し合ってから利用を決めましょう。
定年後のお金「NG支出」2位:医療保険や介護保険に入る
病気や要介護状態になるのが心配で、「今からでも民間の医療保険や介護保険に入っておいた方が良いのでは?」と考える人もいるのではないでしょうか?高齢になってから医療保険や介護保険に入ると、保険料が高額になってしまいます。払った保険料に見合うだけの給付が受けられるとは限らないので、加入は慎重に検討しましょう。
●公的医療保険でも高齢者は優遇されている
医療費に関しては、公的医療保険制度による保障がありますが、公的医療保険制度では高齢者は優遇されています。現役並みに所得がある人を除き、70歳になると医療費の自己負担割合は3割から2割に下がり、75歳になると1割に下がります。
さらに、もし自己負担が高額になった場合には、高額療養費制度の適用が受けられます。高額療養費制度とは、病院での窓口負担が月々の自己負担額の上限を超えた場合に、申請により超えた部分を還付してもらえる制度です。高額療養費制度の自己負担額は、年齢や所得水準によって異なります。年金以外の所得がない高齢者の場合、自己負担の上限額は月5万7600円になることが多くなっています。医療費についてはあまり心配しすぎなくてもよいでしょう。
●公的介護保険制度
将来介護が必要になった場合の介護費については、公的介護保険による保障もあります。要介護や要支援認定の認定を受けた場合には、対象となる介護サービスを原則1割の負担で受けられます。さらに、自己負担額が高額になってしまった場合には、高額介護サービス費制度や高額介護合算療養費制度により払い戻しが受けられる仕組みもあります。
<介護費用の負担を軽減する制度>
筆者作成
公的制度により、年金生活者の介護サービス費の自己負担額は月4万4400円以下になるのが一般的です。また、医療費・介護サービス費を合算した年間の自己負担額も60万円以下に抑えられることが多くなっています。
公的な制度でまかなえる部分は大きいので、保険料が負担になるようなら、民間の医療保険や介護保険に加入しなくてもよいでしょう。まずは、いざというときに公的制度を活用できるよう知識を持っておくことが大切です。
定年後のお金「NG支出」1位:リスクの高い金融商品に投資
退職金で手元にまとまったお金が入ると、そのまま置いておいては損と、投資を考える人も少なくありません。老後長生きすれば、お金が足りなくなるリスクもあります。すぐに使わないお金を投資に回すのは賢い方法です。ただし、投資経験の少ない人が、ハイリスクの金融商品に投資するのは避けた方が良いでしょう。
●投資にはリスクがあることに注意
FXは急激な為替相場の変動で損失が一気に膨らんでしまうリスクがあります。株式投資も投資初心者は慎重になった方がよいでしょう。比較的リスクが低いと考えがちな投資信託も、商品によっては手数料が高く、元本割れしてしまう可能性があります。
●老後の資産運用におすすめの方法は?
退職金をもらうと、金融機関から投資の勧誘を受けることも多くなっています。勧誘されるまま安易に投資しないように気を付けましょう。リスクが低いのは、退職金向けの定期預金、貯蓄型保険、個人向け国債などです。
投資信託を運用する場合には、NISAを活用しましょう。NISAでは毎年一定額までの投資が非課税となり、上限1800万円の資産を非課税保有できます。投資のリスクをできるだけ抑えるために、「つみたて投資枠」を利用した積立投資がおすすめです。時間の分散によりリスクを軽減する効果があります。
老後のお金の使い方「NG支出」に注意しよう
今は男女とも平均寿命が80歳を超えており、老後の期間が長くなっています。定年退職後は収入も減少することが多いので、お金の使い方をよく考えなければなりません。たとえ貯金があっても、使い方によってあっという間になくなってしまうことがあります。お金を使うときには「NG支出」に注意し、少しでも安心できる老後を楽しみましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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