24/05/05
退職後の税金と社会保険、手続きせずに損する5つのケース
新卒から定年まで、ひとつの企業に勤め続ける終身雇用は少なくなり、さまざまな理由で転職する人は珍しくありません。転職時には、新しい仕事や職場環境など考えることはたくさんありますが、社会保険や税金のこともしっかり手続きしてほしいところです。
今回は、退職後にすぐ転職をしない場合に必要な、社会保険・税金の手続きについてお伝えします。
退職後、すぐに転職するかしないかで手続きが変わる
会社を退職したときには、社会保険や税金の手続きが必要です。必要な手続きは、すぐに転職するか、転職までに間があるかどうかで変わります。
<退職後の社会保険・税金の手続き>
筆者作成
退職時に転職先が決まっている場合には、これらの手続きは基本的に新しい勤務先で対応してもらえます。しかし、退職後に転職先を探すなど、次の就職まで期間があく場合には注意が必要です。退職後はフリーランスに転向するなど、就職をしない場合も同様です。手続きを忘れると、思わぬ損をしてしまう場合もあるからです。退職後の手続きをせずに損する人の例を5つ、紹介します。
退職後の手続きをせずに損する人1:健康保険の切り替えをしない人
退職時にはそれまでの勤務先に保険証を返却し、健康保険の加入者ではなくなります。
すぐに就職すれば、新しい勤務先で新たな健康保険の加入手続きをしてくれますが、次の就職までに間がある場合には、自分で健康保険の加入手続きをします。
退職後の健康保険には、3つの選択肢があります。そして、どれを選ぶかで保険料が変わってきます。
1. 国民健康保険に加入する:保険料は前年の収入を元に計算される。手続きは自治体の窓口。
2. 健康保険の任意継続被保険者になる:保険料は退職時の収入を元に計算される。手続きは各社会保険。
3. 家族の被扶養者になる:保険料は払わなくてよい。手続きは家族が勤務先で行う。
国民健康保険の保険料は前年の収入を元に計算されるため、退職の前年に高収入だった場合には負担が大きいでしょう。一方、任意継続被保険者の保険料は、退職時の収入が計算の元ですが、在職時の約2倍の金額になります。これは、在職中は保険料の半分を勤務先が負担していたためです。
とはいえ、扶養している家族がいる場合は、任意継続になっても家族の分の保険料はそれまで同様払う必要がありませんので、国民健康保険に加入するより負担が軽くなるかもしれません。
どちらがより安く済むのかをチェックして、安い方を利用するのがよいでしょう。
また、家族が会社に勤めているならば、家族の扶養に入るのも手。条件を満たせば、保険料の負担がなくなります。
健康保険の切り替えの手続きは、退職後14日以内です。
手続きをせず保険証が無いままにしていると、もし病気やケガで医療機関の受診をすることになったら、医療費が10割負担に。高額な支出になります。
退職後の手続きをせずに損する人2:国民年金に加入しない人
退職すると、厚生年金も加入者ではなくなります。
その場合には国民年金に切り替わりますが、手続きは自治体の窓口で行う必要があります。
手続きは、健康保険同様に退職後14日以内です。
しかし、退職日にすぐさま手続きできるわけではありません。
退職後に勤務先から届く離職票など、退職を証明できる書類が必要です。退職後はできるだけ早く書類を交付してもらえるよう、勤務先に依頼しておくとよいでしょう。
退職後、収入が少なくなるなど保険料の納付が難しい場合には、免除申請をします。
国民年金の加入手続きをしなかったり、保険料を未納にしたりしていると、将来受け取れる年金額が少なくなってしまいます。
公的年期は老齢年金だけではなく、障害年金や遺族年金もあります。
万が一の場合、年金が受け取れない場合もありますので、国民年金の手続きは忘れずにしておきましょう。
退職後の手続きをせずに損する人3:失業保険の手続きをしない人
退職後、働く意思と能力があるにもかかわらず就職できない「失業の状態」にある場合、雇用保険の基本手当(=失業保険)が受け取れる可能性があります。
ただし、退職前の2年間に、雇用保険に通算12カ月以上加入している人が対象です。
もし、病気やケガですぐに就職できない事情があれば、失業保険の対象にはなりませんが、受給期間延長の手続きができます。
失業保険の受給期間は、原則として離職の翌日から1年間ですが、延長の手続きをしておけば最長3年間(=最長で離職の翌日から4年以内)まで延長することができます。
失業保険の手続きはハローワークで行います。手続きをしないと、失業保険が受け取れる状態にもかかわらず受け取れなくなってしまうので、必ず手続きしましょう。
退職後の手続きをせずに損する人4:住民税の納税準備をしない人
会社員であれば、住民税は給与からの天引きで支払うことが多いでしょう。
そのため、納税をあまり意識していないかもしれませんが、退職するとなると退職時に一括で払う、もしくは自治体から送られてくる納付書で納税することになります。
住民税は、6月~翌5月までの1年間に、前年の所得をもとに計算されます。
そのため、退職日が1~4月の場合には、5月までの住民税が退職時に一括して天引きされます。いつもの月よりも、手取り金額は少なくなることを予定しておきましょう。
退職日が5月であれば、その月の住民税が天引きになるだけなので、天引きの金額はいつも通りです。
退職日が6月~12月の場合にも同様の天引きの金額になり、翌月からは払込票での納税に切り替わります。
会社員であれば、わざわざ納税する手間も、納税準備金をプールしておく必要もありませんが、退職してからはそうもいきません。
納税額はあらかじめ確認しておく必要があります。口座振替にしておけば、納付忘れも防げます。
退職後の手続きをせずに損する人5:所得税の申告準備をしない人
所得税については、退職時に源泉徴収票を受け取ります。その年のうちに就職すれば、勤務先に源泉徴収票を提出することで、その後の所得税納付についてはお任せできます。年末には、いつもの年末調整をすれば、生命保険料控除や、iDeCo掛金の小規模企業共済等掛金控除もできるので手間はそれほどかかりません。
しかし、年末まで就職をしなかった場合には、翌年2月16日~3月15日の間に確定申告をすることになります。退職日が年末ではなければ、各種所得控除の申告をしていませんので、戻ってくるはずの税金を受け取れなくなってしまいます。面倒でもしっかり準備をして、確定申告をしましょう。
なお、税金が戻ってくる還付申告は、2月15日以前でも行えます。
退職するなら、社会保険・税金の手続きもしっかりチェック
退職や就職をする場合、社会保険・税金の手続きについては、ついつい優先順位が下がってしまいがち。
なんとかなると思っていても、手続き期限は待ってくれません。
退職してから、こんなはずじゃなかった、と後悔することは避けたいものです。
社会保険や税金についても、しっかり準備しておきましょう。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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