24/03/24
定年後の再雇用で「有給休暇」は持ち越せるのか
定年後再雇用とは、従業員が定年退職したあと、同じ企業と再び雇用契約を結ぶ雇用継続制度です。この場合、形式上は一度退職して再び雇用契約を結ぶことから、定年退職時には退職金が支払われるのが一般的ですが、この場合「有給休暇」は持ち越せるのでしょうか。
定年後の再雇用で働き続ける場合でも、家族の行事や急な体調不良など、有給休暇を必要とする機会はまだまだあります。いざというときに困らないように、再雇用時の年次有給休暇の付与ルールやポイントを把握しておきましょう。
有給休暇制度の継続勤務年数と付与日数
年次有給休暇は、従業員の心身のリフレッシュを目的に有給で休暇を与える制度で、労働基準法で認められた労働者の正当な権利のひとつです。基準を満たした人であれば、雇用形態を問わず年次有給休暇が付与され、取得することができます。
年次有給休暇は雇用開始日から6ヶ月以上継続して勤務しており、全労働日の8割以上出勤しているすべての労働者に付与されます。継続6ヶ月の勤務で10日間の有給休暇が付与され、以降は以下のように付与日数が増えていきます。例えば、入社した日からの継続勤務年数が6年半以上の従業員は、20日の有給休暇が付与されます。
<年次有給休暇の付与日数>
筆者作成
定年退職で勤続年数はリセットされる?
上記のように有給休暇は継続勤務年数に応じて付与されることになっていますが、再雇用の場合の有給休暇の日数は、いったんリセットされるのでしょうか。
一般的に、定年退職の時点で、勤続勤務年数がリセットされるのではないかと思われがちですが、結論から述べると、再雇用の際に、勤続年数がリセットされることはありません。その理由は、有給休暇制度における「継続勤務」は、勤務の実態により判断されるためです。
定年を迎えたあと、再雇用制度を利用すると、従業員は、形式上はいったん退職することにはなるものの、元の会社で引き続き仕事をすることができます。そのため、定年退職した労働者が嘱託社員として再雇用してもらう場合、勤務年数は継続しているとみなされ、通常の労働者と同じように対応する有給休暇を付与しなければならないとされています。
また、有給休暇は事業場での在籍期間が関係するため、正社員から嘱託社員へ契約形態に変更があっても、勤続勤務年数がリセットされることはないと考えてよいでしょう。
定年前に付与された有給休暇の未消化分も持ち越せる
労働基準法第百十五条により、労働者が有給休暇の権利を行使するには、2年間の時効があるとされています。定年前に付与された有給休暇が未消化の場合、時効により消滅するまでは使う権利が認められています。そのため、再雇用後に未消化分の有給休暇を持ち越すことができます。
年次有給休暇が引き継がれない場合もある
最後に、年次有給休暇が引き継がれないケースについても確認しておきましょう。
定年退職してから再雇用されるまでに期間が空いている場合には注意が必要です。定年退職日と再雇用日の間にブランクがあり、労働関係が途切れていると認められる場合は「継続勤務」とみなされないため、年次有給休暇は引き継がれません。定年退職後の再雇用を希望されているのであれば、できる限り空白期間を作らないよう注意した方がいいでしょう。
また、ここまでは定年後も同じ会社に勤める再雇用の話を前提にしています。定年後、他の会社に就職する「再就職」の場合は年次有給休暇は引き継がれません。ただし、系列の会社に転職する場合などには認められることもあるので、該当しそうな場合は勤め先に確認してみましょう。
再雇用のときに契約内容を要チェック
再雇用の際には、基本給や勤務時間などのさまざまなことが変更になるため、一つひとつの契約内容を正確に理解することが重要です。もし、あなたが会社から再雇用の際に付与されるべき日数を下回る有給休暇日数しか与えられなかった場合には、会社は労働基準法違反に該当する可能性が高いと考えられます。
再雇用時の有給休暇の付与日数について疑問点がある場合は、まずは会社の人事部や総務部などの専門部署に問い合わせてください。それでも解決できないときには、お近くの労働基準監督署で相談もできます。疑問や不安を感じたら、自分だけで考えるのではなく、早めにしっかりと確認することが大切です。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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