23/08/22
65歳から介護保険料が急上昇 2倍・3倍もあるのは本当か
40歳から介護保険の被保険者になりますが「毎月どのくらい負担しているのか知っている!」という人は少ないのではないでしょうか。しかし、65歳以上になったときから、介護保険料は諸々の事情で大きく値上がりします。「2倍」「3倍」となってしまうこともあるのです。
今回は、介護保険の制度を簡単にご紹介。そのうえで、65歳以降になると、どうして介護保険料が急上昇するのか解説します。
そんななか、働くなら公務員が安心、と考える人も多いのではないでしょうか。公務員は安定しているし、福利厚生も充実、リストラのリスクが小さく、社会的信用もあります。
さらに給与が高ければ言うことなしと思われますが、公務員の給与は職種によって平均額に差があります。今回は、公務員の給与について、見ていきたいと思います。
介護保険制度とはどんな制度?
介護保険制度は、介護が必要になった人を、家族だけで世話するのではなく、社会全体でサポートしていくための制度です。
介護保険制度で提供される介護保険サービスは、65歳以上の人の場合、原因を問わず要支援・要介護状態となったときに受けられます。また、40~64歳の人の場合は、末期がんや関節リウマチ等の老化による病気が原因となり要支援・要介護状態になったときに受けることができます。
介護保険制度の被保険者は、40歳になったときから始まります。40~64歳の医療保険に加入している人は「第2号被保険者」といい、健康保険料とあわせて徴収されます。会社員の場合は、事業所と折半になるため、負担するのは実質半額となります。一方、65歳以上の人は、「第1号被保険者」といい、全額を負担します。65歳から1年間は、自治体から送られてきた納付書で支払い、66歳以降からは、年金額から天引きされます(年金の年間の受給額が18万円以上の場合)。つまり介護保険料は、40歳以降、一生涯に渡り支払い続けることになります。
65歳以上になったら、介護保険料の負担が2~3倍に!
介護保険料は、40~64歳の人が該当する「第2号被保険者」と、65歳以上の人が該当する「第1号被保険者」では、負担する金額が大きく違い、約2~3倍に増えます。その理由としては、以下の3つが考えられます。
●介護保険料の負担が2~3倍になる理由1:65歳未満は事業主と折半、介護保険料負担は「1.82%」とわずか
40~64歳の人(第2号被保険者)は、40歳の誕生日の前日から、介護保険料の徴収対象になります。会社員や公務員は、給料に一定料率(2023年度は1.82%)を乗じた金額が、健康保険料とあわせて給料から天引きされます。その際の介護保険料の負担額は、事業主と折半となります。
たとえば、毎月の給与額が25万円(標準報酬:26万円)の場合、介護保険料の負担額は以下のとおりです。
【給与25万円(標準報酬:26万円)の月額介護保険料】
・26万円×1.82%=4732円(年額:5万6784円)
・4732円÷2=2366円(事業主と折半した年額:2万8392円)
第2号被保険者のときの介護保険料は、給与の支給額を標準報酬に置き換えた額に、1.82%を乗じた金額の半額だけ負担しますが、65歳以降は、会社に勤務していても健康保険料と介護保険料は別々に支払うことになります。さらに、会社との折半もなくなりますので、実際の負担は単純計算で2倍、またはそれ以上になることもあるのです。
●介護保険料の負担が2~3倍になる理由2:第1号被保険者は「所得段階」ごとに負担する介護保険料が変るため
65歳(第1号被保険者)の介護保険料は、介護保険の運営を行っている市区町村が決めます。実際の介護保険料は、いくつかの保険料段階が設定されており、被保険者本人の前年度の合計所得金額などを、あてはめて決定します。参考までに、東京都中央区の所得段階を確認してみましょう。
【東京都中央区・保険料段階区分】
東京都中央区のウェブサイトより
東京都中央区の場合、所得段階は全部で16段階になっています。そのうち、基準になる段階が「第5段階」です。対象になるのは、本人が住民税非課税(同じ世帯に区民税課税の方がいる場合)で、本人の合計所得額と課税となる年金収入を合計した金額が80万円を超える方です。この場合、負担する介護保険料は年額7万1040円(月額5920円)となります。先述した第2号被保険者よりも介護保険料が増えています。
さらに、本人が住民税を負担している場合は、合計所得金額に応じて上の第6~第16段階のいずれかに該当します。そうなれば、負担する介護保険料は基準額よりも「1.15~3.70」多く負担することになります。介護保険料が2倍・3倍…となる方も出てくるでしょう。
●介護保険料の負担が2~3倍になる理由3:前年度の収入が多い
介護保険料は、被保険者の前年度の合計所得金額に応じて決まります。そのため、64歳時に会社で働き、そこそこの収入を得ているのであれば、合計所得金額も多くなります。もし、所得段階の「基準額」以上になれば、負担しなければならない介護保険料は、その分多くなります。ここで、実際の以下の条件で、介護保険料をシミュレーションしてみましょう。
【条件1:年収300万円の場合】
・64歳の年収:25万円×12か月=300万円(イ)
・給与所得控除:300万円×30%+8万円=98万円(ロ)
・社会保険料(健康保険):1万5366円×12か月=18万4392円(ハ)
・社会保険料(厚生年金):2万3790円×12か月=28万5480円(ニ)
・社会保険料(雇用保険):1500円×12か月=1万8000円(ホ)
・基礎控除:43万円(へ)
・扶養家族なし
・合計所得金額:(イ)-(ロ)-(ハ+ニ+ホ)-(へ)=110万2128円
今回の合計所得額「110万2128円」は、上記の保険料段階区分の「第6段階:合計所得金額が120万円以下の方」に該当するため、負担する介護保険料は「年額8万1720円(月額6810円)」になります。
第2号被保険者のときの介護保険料は、先述のとおり年額2万8392円です。第1号被保険者になると、約2.9倍の介護保険料を負担することになります。
【条件2:年収420万円の場合】
・64歳の年収:35万円×12か月=420万円(イ)
・給与所得控除:420万円×20%+44万円=128万円(ロ)
・社会保険料(健康保険):2万1276円×12か月=25万5312円(ハ)
・社会保険料(厚生年金):3万2940円×12か月=39万5280円(ニ)
・社会保険料(雇用保険):(2100円×12か月)=2万5200円(ホ)
・基礎控除:43万円(へ)
・扶養家族なし
・合計所得金額:(イ)-(ロ)-(ハ+ニ+ホ)-(へ)=181万4208円
今回の合計所得額「181万4208円」は、上記の保険料段階区分の「第7段階:合計所得金額が120万円以上210万円未満の方」に該当するため、負担する介護保険料は「年額8万6640円(月額7220円)」になります。
第2号被保険者のときの介護保険料は、「36万円×1.82%÷2=3276円(年額:3万9312円)」。第1号被保険者になると、約2.2倍の介護保険料を負担することになります。
介護保険料は3年に1度見直しがある
65歳以上の第1号被保険者の介護保険料は、3年に1回見直されることが、各市区町村の条例で決められています。次回の介護保険料の改定は2024年度から反映されます。
介護保険料の全国平均月額は、介護保険制度が始まった2000年(平成12年)には月あたり2911円でしたが、2021~2023年(令和3年~5年)は6014円と、約2.1倍になっています。今後も高齢化が進むこともありさらに負担額も増えると予想されます。
まとめ
会社員や公務員の方々が第2号被保険者のときは、事業主と折半になったり、給料から健康保険料と一緒に天引きされたりするので、介護保険料のことを意識しないという方が多いかもしれません。しかし、65歳になって第1号被保険者になったら、全額個人の合計所得額ごとに負担が変わります。そのため、収入が同じでも、2~3倍の介護保険料になってしまうこともあるのです。後から「こんなに多いの?」とならないよう、事前に確認しておきましょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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