24/11/14
【年収の壁】2024年10月から社会保険加入義務が生じるのはどんな人?【106万円・130万円・180万円の壁】
収入が一定額を超えると税金や社会保険料が増える「年収の壁」。2024年10月からは、さらに社会保険の適用範囲が拡大されます。手取りが減ってしまうことを懸念して就業調整をしていた人は、改めて自身の働き方を見直さなければなりません。
今回は、社会保険の適用範囲拡大において、配偶者の扶養に入っている人がどのような影響を受けるのか見てみましょう。
新たに社会保険の対象になる人
年収の壁は、大きく4つあります。壁と呼ばれるのは、その金額を境に税金や社会保険料が変化するからです。
<主な年収の壁>
筆者作成
注目したいのは社会保険料の「106万円の壁」です。106万円の壁は、パートやアルバイトなどの短時間労働に従事していても、一定の条件を満たせば勤務先で社会保険に加入しなければならなくなることを指します。
2024年9月までは、
・従業員数が101人以上
・労働時間が週20時間以上(残業時間などは含まない)
・賃金が月8万8000円以上(残業代、賞与、通勤手当などは含まない)
・学生ではない(夜間学生などは対象になる)
・2カ月を超える雇用が見込まれる
の5つの要件をすべて満たす場合、自ら社会保険に加入するルールになっていました。
2024年10月からは、このうちの「従業員数」の要件が「51人以上」に変わります。そのため、社会保険に加入しなくてはならない人が増えます。
106万円の壁に該当しない場合でも、年収が130万円以上になると扶養から外れて、自分自身で社会保険に加入しなければなりません。これが「130万円の壁」です。なお、扶養されていた人が60歳以上などの場合には、年収180万円以上が壁になります。
年収の壁のために就業調整?
厚生労働省の令和3年「パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査」によれば、配偶者のいる女性の約2割が就業調整をしています。その理由を複数回答で聞いたところ無期雇用パートタイムで60.7%、有期雇用パートタイムで55.4%が「一定額を超えると配偶者の健康保険、厚生年金保険の被扶養者から外れ、自分で加入しなければならないから」と答えています。
社会保険料を自分で負担するようになると、手取りが減ることにつながりやすくなります。会社によっては、配偶者手当を設けている場合もあり、税金、健康保険料の負担が増え、配偶者の会社の配偶者手当がもらえなくなると、さらに手取りベースで収入が減ってしまいます。結果的に働いたところで保険料負担が増えれば「働き損」と感じる人が多く、就業調整をするという結果に結びついています。
年収の壁を超えて働くことのメリット
社会保険の適用範囲の拡大にともない社会保険料の負担増が気になりますが、一方で社会保険加入によるメリットもあります。
ひとつは、厚生年金保険への加入によって、老齢厚生年金の受給額が上乗せされることです。女性は男性にくらべて長生きなので、老後の備えを厚くする効果は大きくなります。
もうひとつは、病気などで仕事を休んだときに通算1年6カ月受け取れる傷病手当金や、出産の場合に受け取れる出産手当金の給付があることです。病気やケガで障害を負った場合には、一定の条件で障害厚生年金の対象になります。国民年金第3号被保険者のままでは受給できないメリットに目を向けると、手取り金額だけで働き方を決めるのは、もったいない気がします。
今後の公的年金の行方
2024年7月に、5年ごとに行われる公的年金の財政検証の結果が公表されました。そのうち、主な改革案として厚生年金の適用対象拡大があり、最も優先度が高いとされています。適用拡大が国民年金(基礎年金)の給付水準の向上に寄与するからです。こうした流れを受けて、今後は従業員数の要件が撤廃される見込みです。こうなると税金や社会保険料の負担より、どう働きたいかという視点を持つ必要が出てきます。
厚生年金の適用拡大によって、短期労働者でも老後の保障を厚くし、働き方によって不公平を生まないようにすることは大きな効果があります。また、配偶者の扶養の範囲内で働いた方がよいという思い込みから短時間労働を安易に選んでしまうことを防ぐことができます。
老後資金に不安を持っている人は少なくありません。しかし、年金は働き方によって変えられるし、自分の年金は自分で作れると考えたら、これからの未来は違ったものになります。いろいろな選択肢が増えているにもかかわらず、働き方を思い込みだけで決めていないでしょうか。手取りだけではなく、保障と合わせて扶養のまま働くかどうか再点検をすることが大切になります。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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