23/06/29
月収10万、15万、20万円…50歳から働き出したら年金はいくら増える?
女性の働き方は、家族の状況によっても変わります。「働き方改革」とはいっても現実には子どもが小さいうちは専業主婦、という方も少なくないのでは。そして、子どもの手が離れたら働きに出る人も多いでしょう。
2016年から短時間勤務でも厚生年金に加入しやすくなりました。また以後も、厚生年金に加入できる人が増えています。では、50~70歳まで働いたら、年金はいくら増やせるのでしょうか。
今回は、月収10万円、15万円、20万円のケースごとに試算しました。
50~70歳まで月収10万円で働いた場合
公的年金は2階建て、とよく言われます。1階部分の国民年金は基礎年金とも呼ばれ、すべての国民が対象です。そのうえで、2階部分の厚生年金にも加入すれば、将来の年金受取額に厚生年金分の上乗せがあります。
2023年4月からの国民年金は、満額で年79万5000円、月6万6250円(67歳以下の場合)です。
そこにプラスできる厚生年金は、収入によって受取額が変わります。ざっくり言うと、収入が増えると、年金の受取額も増えます。
厚生年金の受取額は、以下の計算式で算出できます。
●厚生年金の計算式
・2003年3月以前の厚生年金加入期間
平均標準報酬月額 × 7.125÷1000 ×2003年3月までの加入月数
・2003年4月以降の厚生年金加入期間
平均標準報酬額×5.481÷1000×2003年4月以降の加入月数
平均標準報酬月額は、かんたんに言うと毎月の給与を平均したものです。それに対して平均標準報酬額は、標準報酬月額と賞与を合算して平均したものです。以下試算は、すべて2003年4月以降に働いたものとします。
月収10万円で働いたら、平均報酬月額は10万円。加入月数は、50~70歳の20年間ですから240カ月です。
計算すると、厚生年金部分は年13万1544円。月あたり約1万1000円のプラスです。
10万円×5.481÷1000×240カ月=13万1544円
国民年金と合計すると、年金の年額の合計は92万6544円、月7万7212円になります。
79万5000円+13万1544円=92万6544円
さらに、年金受取りを65歳から70歳まで繰り下げると、月0.7%増額されるので、5年で42.0%増やすことができます。
この場合、年金の年額は約131万6000円になり、月あたりで約11万円です。
国民年金だけの場合と比べると、しっかり受け取れることがわかります。
厚生年金の保険料は、月収10万円なら約9000円が毎月の給与から差引かれます。厚生年金に加入すると、手取り収入が減ってしまいますが、老後の厚生年金の増額を考えればメリットは大きいのではないでしょうか。
50~70歳まで月収15万円で働いた場合
同様に、月収15万円で働いたら、厚生年金部分は年19万7316円。月あたり約1万6000円のプラスです。
15万円×5.481÷1000×240カ月=19万7316円
国民年金と合計すると、年金の年額の合計は99万2316円、月8万2693円になります。
79万5000円+19万7316円=99万2316円
さらに、年金受取りを70歳まで繰り下げると、月0.7%増額されて5年で42.0%の増額。
年額は約140万9000円になり、月あたりで約11万7000円です。
月収が増えれば、厚生年金保険料も増えて、約1万4000円です。毎月の給与から差し引かれるのは痛いと感じるかもしれませんが、老齢年金の受取り額は、70歳まで繰り下げると約5万1000円アップする計算です。
手取り額も大事ですが、将来の年金額を考えれば厚生年金への加入はぜひ検討したいところです。
50~70歳まで月収20万円で働いた場合
さらに、月収20万円で働いたら、厚生年金部分は26万3088円。月あたり約2万2000円のプラスです。
20万円×5.481÷1000×240カ月=26万3088円
国民年金と合計すると、105万8088円、月8万8174円になります。
79万5000円+26万3088円=105万8088円
さらに、年金受取りを70歳まで繰り下げると、月0.7%増額されて5年で42.0%の増額。
年額は約150万2000円になり、月あたりで約12万5000円です。
厚生年金保険料は、月1万8300円ですが、それに見合う老齢年金の増額ではないでしょうか。その金額が一生涯受け取れるのは、大きな安心感につながります。
まとめ
それぞれの月収で、50~70歳まで働いて厚生年金に加入した場合と、国民年金の3号被保険者だった場合を表にまとめ、比較してみましょう。
●国民年金と50〜70歳まで働いた場合の厚生年金(国民年金含む)の比較
保険料、年金額は2023年度で計算(厚生年金保険料は協会けんぽ)
筆者作成
厚生年金はパート勤務でも、勤務先が一定規模以上などの条件をクリアしていると加入できるようになりました。加入すると保険料の差引きがあり、所得税がかかるなど手取りが減る、働き損、といった意見もあります。
しかし、長い目で見れば厚生年金が増えることは決して損ではないでしょう。
せっかく働くなら、保険料や税金分以上の収入を得られる働き方を選んではいかがでしょうか。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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