25/05/11
再雇用で働く場合は「2年続けるべき」5つの理由

会社員として働き続け、定年退職を迎えたら、その後も同じ会社に再雇用されて働く人も多いのではないでしょうか。老後のお金のことを考えると、定年後は再雇用で働くのがおすすめ。再雇用された場合には最短でも2年は続けたほうがよいでしょう。今回は、再雇用を2年は続けるべき理由を5つ、解説します。
再雇用を2年続けるべき理由1:住民税の支払いがラク
住民税は、前年の所得を元に計算される、後払い方式です。
退職して無職になったとしても、前年の所得が高いと、住民税が前年の高額な所得をもとに計算されますので、とても高い住民税の納付をしなくてはなりません。
たとえば、2024年に年収700万円だった人の場合、2025年6月~2026年5月までにかかる住民税は、約37万円です(所得控除は基礎控除と社会保険料控除のみの場合の概算)。この金額を、無職・無収入で払うのは負担が大きいのではないでしょうか。
住民税は、翌年6月から翌々年5月までの足掛け2年かかりますから、再雇用で働くなら、2年は働くほうがよいのです。働いて収入があれば、住民税の支払いも比較的ラクになるでしょう。
再雇用を2年続けるべき理由2:健康保険料が安い
退職後の健康保険には、4つの選択肢があります。
① 任意継続被保険者になる
任意継続は、最長2年間にわたって退職前と同じ健康保険に継続して加入する方法です。
勤務していた時には、健康保険料の半分は雇用主が払っていたのですが、任意継続被保険者の場合には全額自己負担になります。つまり、退職前の健康保険料の約2倍の金額を払うことになります。
しかし、扶養家族がいる場合には、任意継続被保険者になってもそのまま扶養家族にできるのが大きなメリット。他の選択肢よりも健康保険料が抑えられる場合があります。どちらがよいか、試算してから決めるべきでしょう。
② 国民健康保険に加入する
国民健康保険は、自営業やフリーランス、無職の人などが加入する健康保険です。
国民健康保険の健康保険料は、前年の所得が計算のもとになります。
そのため、少なくとも退職して1年は、勤務していた時の所得を元にして健康保険料が計算されますので、高額になることは避けられません。
任意継続をした場合の健康保険料と、比較検討してから加入先をきめるとよいでしょう。
また、国民健康保険には、「扶養」という考え方自体がないので、扶養している家族がいる場合にはその家族の分も健康保険料を払わなくてはなりません。
夫婦なら2人分払う必要があるので、2人分の健康保険料で試算してください。
③ 家族の扶養に入る
息子や娘などの家族が会社員で、その勤務先の健康保険に加入している場合、家族の扶養に入る(被扶養者になる)方法もあります。
家族の扶養に入れば、被扶養者の保険料を払う必要はありませんから、任意継続や国民健康保険に比べて健康保険料は格段に安くなります。
とはいえ、家族の扶養に入れない状況の人は選びようがありません。また、家族に養われるのはまだ早いという思いがあれば、やはり選択肢からははずれることになるでしょう。
④ 再雇用で社会保険に加入
再雇用では、勤務先の社会保険に加入する道です。
再雇用では、給与が減ることが一般的ですが、社会保険の保険料は給与が計算のもとになるので少なくなります。つまり、定年後も働き続けることで社会保険料を抑えることができるのです。
どの保険に加入しても、医療費は原則3割負担という点は変わりません。
再雇用で社会保険に加入すれば、保険料を安くして、家計も自立できます。
再雇用を2年続けるべき理由3:厚生年金に加入できる
再雇用なら厚生年金に加入できます。
国民年金だけなら、加入は60歳までですが、厚生年金なら70歳まで加入できます。
厚生年金に加入していると、厚生年金保険料の支払いがありますが、その後の老齢年金を増やすことができます。
老齢年金は一生涯受け取れる、老後資金の柱です。
増額できる仕組みはしっかり活用して、老後に備えておきたいですね。
再雇用を2年続けるべき理由4:そもそも再就職が厳しい
再雇用をためらう人は、デメリットを心配しているのかもしれません。
以前と同じ職場で同じ仕事、それなのに給与は下がってしまう。さらに、かつての部下が上司になることもあり、そんな人間関係もストレスになりそうです。
しかし、慣れた職場と業務内容、と考えるとメリットにもなります。
働き口をイチから探す苦労もなく、履歴書を提出することも、面接を受けて値踏みされるようなこともありません。
人手不足とはいえ、こちらの希望にマッチする勤務先はなかなか見つからないもの。
再雇用で働き始めた方が、ロスタイムが少ないのではないでしょうか。
再雇用を2年続けるべき理由5:収入の右肩下がりをなだらかにする
定年退職から先の収入は、大きく3回ダウンします。
1回目は退職時です。数百万円の年収は、退職した後無職ならゼロになってしまいます。
しかし、再雇用で働けば、現役の頃より少なくても、収入がゼロになることはありません。
2回目は、収入が年金のみになる時です。再雇用で働いたとしても、いずれはリタイヤします。
しかし、再雇用で働いて厚生年金に加入していれば、年金額を増やしておくことができます。
3回目は、配偶者が亡くなって一人になる時です。夫婦なら世帯収入は2人の年金ですが、1人になったら世帯収入も減ります。
しかし、厚生年金に加入して自分自身の年金をしっかり増やしていれば、3回目の収入ダウンも大きな谷にはならないでしょう。
再雇用をメインに考えた生活設計を
会社員として定年退職を迎えたら、再雇用はメリットの多い選択肢です。税金や社会保険料の負担を軽減できるうえ、年金も増やせ、収入がガクッと減ることを防げます。何より、これまでと同じ職場であれば、働き方もわかっているでしょう。
人生のかけがえのない時間をどのように過ごすのか、とても大きな問題です。自分らしく悔いのない過ごし方を選ぶには、堅実なマネープランが大切。そのマネープランの実現のために、再雇用をメインに考えた生活設計をしてみてはいかがでしょうか。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー

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