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23/06/24

資産運用・経済

新NISAに向けて増えそうな株式分割 株価はどう動く?

新NISAに向けて増えそうな株式分割 株価はどう動く?

2024年から始まる新NISAを見越して、株式分割を実施する会社が増えてきています。株式分割は、株価の上昇要因として挙げられることがありますが、果たして実際はどうなのでしょうか。今回は、株式分割のしくみと株式分割を実施した会社の株価の値動きの例、株式分割が今後増えそうな理由を紹介します。

株式分割ってそもそも何?

株式分割とは、1株をいくつかの株に分割して、発行済み株式数を増やすことです。たとえば1株を2株に分割したり、3株に分割したりすることをいいます(「1:2に分割」「1:3に分割」などと表されます)。いくつに分割するかは、会社ごとに決めます。すでに株を持っている株主は、分割された分だけ保有する株が増えることになります。

株式分割をして、発行済み株式数が増えても、これまであった株を複数に分割するだけなので、会社の価値そのものは変わりません。そのかわり、1株あたりの株価の水準が下がります。たとえば、1株1,000円の株が株式分割で2株になったら、1株あたりの株価は、理論上は半分の500円になります。1,000円札1枚を500円玉2枚に両替するのと同じようなイメージです。

株価が1,000円から500円に下がることで、投資家はこの株を買いやすくなります。「これまで1,000円だから手がでなかったけれど、500円ならば買いたい」となるというわけです。そして、新しい投資家による買いが見込まれることから、株価の上昇要因として挙げられることがよくあります。

株式分割の前後の株価はどうなっている?

株式分割の前後の株価が実際にどうなっているか、実際の例で確認してみましょう。なお、以下紹介するチャートは2022年10月から2023年6月9日時点、株式分割実施後のものを利用しています。

●株式分割の例①:ファーストリテイリング(9984)

Yahoo!ファイナンスのデータより(株)Money&You作成

「ユニクロ」「GU」でおなじみのアパレルメーカー、ファーストリテイリングの株価は、一時1株10万円を超えるほどの値がさ株(株価の高い株)でした。日本の株は通常100株単位の「単元株」で購入しますので、100株買うには1,000万円以上が必要に。これでは個人投資家はとても投資できないですよね。

ファーストリテイリングは、2022年12月26日に1株を3株にする株式分割を発表しました。このとき、単元株で購入するとおよそ800万円が必要でしたが、株式分割の実施後、2023年3月1日の終値は2万6600円になったので、およそ266万円で100株での投資ができるようになりました。「これでもまだ高い」と思われるかもしれませんが、その後の株価は順調に増加しています。

もちろん、株価の上昇の要因はさまざまあり、株式分割だけで値上がりしているわけではありません(たとえば、2023年4月13日には業績予想の引き上げと増配が発表され、株価が上昇しました)が、ひとつのきっかけと考えることはできるでしょう。

●株式分割の例②:明治ホールディングス(2269)

※チャートは株式分割実施後のもの
Yahoo!ファイナンスのデータより(株)Money&You作成

お菓子、アイス、乳製品をはじめ、さまざまな食品の製造を行う明治ホールディングスは2022年11月8日に1株を2株にする株式分割を発表しました。発表の直後、株価が大きく上昇していることがわかります。2023年3月末に株式分割が実施された直後は、大きな動きは見えませんが、株価はいったん上下して再び同水準となっています。

いくら株式分割で株が買いやすくなるからといっても、「株式分割があるから必ず値上がりする」というほど単純ではありません。たとえば、株式分割をしても業績が厳しい銘柄では値上がりは見込めません。また、株価水準がそれほど高くない銘柄が株式分割しても、「ようやく買えるようになった」と感じる投資家の注目は集めにくいでしょう。そのうえ、株式分割をすることで、既存の株主の中には、「100株が200株になったから、100株だけ売っておこうか」と考える人もでてきます。株式分割によって株が売りやすくなり、株価を下げる要因になる可能性もあることは押さえておきましょう。

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新NISAに向けて株式分割が増える!

2023年になって、株式分割を実施する企業が増えています。2023年3月末には一気に31社が株式分割を実施。2022年3月末は13社でしたから、増えている様子がよくわかります。また、6月末、9月末といった四半期のタイミングで株式分割を行うことを発表している会社もあります。

株式分割が増えている理由のひとつには、2024年から始まる新NISAの影響があります。

NISAは投資の利益にかかる税金がゼロにできる制度です。2023年までの旧NISAでは、つみたてNISAを利用している人は、NISAで株を購入することができませんでした。また、一般NISAを利用すれば株を購入できますが、一般NISAとつみたてNISAは併用できません。

その点、2024年からの新NISAでは、両制度の併用ができるため、つみたてNISA同様の「つみたて投資枠」を利用しながら、一般NISA同様の「成長投資枠」を利用して株を購入可能。成長投資枠では、年240万円まで非課税で株式投資ができます。企業は個人投資家に投資してもらうために、株式分割を行い、株価の水準を引き下げているというわけです。したがって、今後も2023年12月、2024年3月など、企業の決算が行われるキリのいいタイミングで、株式分割の実施を発表する企業が出てくるものと考えられます。

また、東京証券取引所は以前から「望ましい投資単位の水準」として5万円以上50万円未満という水準を明示しています。これにより、投資単位が50万円未満の上場会社の割合は94.6%(2023年3月末時点)となっています。投資を始める人が増えているなか、こうした要請に応えるために株価を引き下げていることも考えられます。

もっとも、上記で紹介したファーストリテイリングのように、株式分割後も100株で投資するのに50万円以上かかる銘柄もあります。そうした銘柄は、今後また株式分割を行うかもしれません。

まとめ

株式分割のしくみと値動きの例、考え方を紹介してきました。株式分割そのものは、株価の上下には直接影響を与えませんが、投資家が株を買いやすくなるために株価が上昇する要因になりえます。新NISAのスタートを背景に、これから株式分割を行う会社も増えてくる可能性があります。ぜひ注目してみてくださいね。

*本記事で紹介する個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として申し述べたものであり、その銘柄又は企業の株式等の売買を推奨するものではありません。購入する場合は自己責任でお願い致します。

高山 一恵 ファイナンシャルプランナー

(株)Money&You取締役。一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。女性向けWebメディア『FP Cafe』『Mocha(モカ)』や登録者1万9000人超のYouTubeチャンネル『Money&YouTV』を運営すると同時に、全国で講演活動、執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『マンガと図解 定年前後のお金の教科書』(宝島社)、『11歳から親子で考えるお金の教科書』(日経BP)など書籍100冊、累計170万部超。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。X(旧Twitter)→@takayamakazue

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