25/04/09
知らないと生活苦へ…私立中学入学後にかかる高額な費用・想定外の費用【中学受験後のお金の話】

首都圏を中心に中学受験が過熱しています。我が家も2年前に息子の中学受験を経験しましたが、合格を勝ち取った時の喜びは今でも鮮明に覚えています。一般的に中学受験で合格を勝ち取るには、小学4年生くらいから受験塾に通います。塾代だけでなんと約200万円〜300万円!合格したら高額な塾代から解放されると思いきや、入学後も様々な費用負担が家計に重くのしかかってきます。
今回は、私立中学入学後にかかる様々な費用について解説します。
私立中学の学費はどれくらいかかる?
まずは、公立中学、私立中学の学費はどれくらいかかるのかを見てみましょう。
文部科学省の「子供の学習費調査(令和5年度)」によると、公立中学校の学校教育費は15万747円、学校給食費は3万5667円、学校外活動費は35万6061円となり、学習費総額は54万2475円。
一方、私立中学の学校教育費は112万8061円、学校給食費は9317円、学校外活動費は42万2981円となり、学習費総額は156万359円。公立中学校に比べると学習費総額の差は約2.9倍です。
<中学校の学費・公立と私立の違い>

文部科学省「子供の学習費調査(令和5年度)」より筆者作成
また、私立中学の場合、授業料などは、学校によっても金額の幅があります。
東京都「東京都内私立中学校の学費の状況について」(令和7年度)を参考に都内にある私立の初年度納付金を見てみると、八王子実践の66万8,000円から上野学園(国際コース)の211万7,800円とかなり差があります。また、授業料も愛国の30万円から玉川学園中学部(IBクラス)の136万1,000円と、100万円以上も差があります。どの学校に進学するかによって、学費の負担の差は大きいことがわかります。
進学に必要な金額は進学する学校によっても異なるため、志望校を選ぶ際に学校のホームページでかかる費用を早目に確認しておくことが大切です。
入学前に知っておきたい入学後にかかる高額な費用、想定外の費用は?
では、具体的に私立中学に入学するとどんな費用がかかるのか「子供の学習費調査(令和5年度)」を元に「学校教育費」の支出構成を見てみましょう。
私立中学の学校教育費の内訳を見てみると、入学金11万9829円、授業料45万8018円、修学旅行費等6万5276円、学校納付金等17万2268円、図書・学用品・実習材料費等8万135円、教科外活動費6万5131円、通学関係費15万5293円、その他1万1211円となっています。いずれも公立中学に比べて高額な費用がかかります。
ここからは、筆者の息子が私立中学に入学してみてわかった高額な費用や想定外の費用をご紹介します。
●制服代
入学時に学校指定の制服や体操着、上履き、通学カバン、靴などを揃える必要があります。通学カバンや靴など、市販品で対応可能になっている場合には、工夫次第で費用を抑えることができますが、学校名や校章入りの指定品が多いと費用は嵩みがちになります。
一般的には、上記の物を全て揃えると10万円〜15万円程度かかります。
参考までに息子の学校では、定期的に卒業生等が提供してくれるリサイクル品がもらえるイベントがあります。学校によっては、リサイクル品がもらえたり、安く購入できたりするので、入学後に買い足しが必要になる場合など、上手に活用できれば、費用を抑えることができます。
●ICT機器(iPadなど)代
最近は、授業などでiPadなどのICT機器を活用する学校が増えており、購入する場合10万円程度の費用がかかります。 また、中学入学を機に子供にスマホを持たせる家庭も多く、iPhoneを購入するケースも少なくないようです。iPhoneを購入する場合、端末代は10万円以上かかります。
●通学代
私立中学の場合、自宅から学校までの距離が遠いことが多く、ほとんどの生徒が電車やバスなどの公共交通機関を利用します。電車の定期代として一般的に月5000円から1万円程度かかります。
我が家の場合、息子は電車に加えてバスも利用して学校に通学しているため、電車の定期代とは別に年間で6万円程度のバス代がかかります。ですから、通学代だけで年間15万円程度かかっています。
●学校行事代
入学してから早い段階で親睦も兼ねたオリエンテーション合宿がある学校は多いようです。さらに、遠足代、芸術鑑賞、体育祭、文化祭の衣装代、材料費、各種講座の受講など、様々な行事で細かい出費が嵩みます。
また、修学旅行先が海外という学校も少なくありません。海外での滞在日数や訪問国によって費用の差はありますが、40万円〜70万円程度の場合が多いようです。一般的に海外研修は中学3年〜高校2年くらいの時期に行われますので、中学入学の時点から少しずつ積立を行う学校がほとんどです。
さらに、任意の参加にはなりますが、夏休みを利用して短期留学や海外研修などのプログラムを用意している学校も数多くあります。息子の学校では、中学2年生から海外研修プログラムに参加できますが、欧米諸国に1週間程度研修に行く場合は、80万円〜100万円程度の費用がかかります。
●部活動
意外と侮れないのが部活の費用です。運動部の場合、ユニフォーム代やシューズ代、道具代、練習試合の交通費などがかかります。また、多くの部活で合宿もありますし、入部した部が各地に行って試合をしたり大会にでたりする強豪校だった場合、遠征費なども嵩みます。
文化部の場合、吹奏楽部やオーケストラ部などは、数十万円する楽器代に加えて、楽譜代、コンクール費用などもがかかり高額になるケースも多いようです。また、音楽関係の部活の場合、個人レッスンを受ける生徒も少なくありません。
我が家の場合、息子は卓球部に入りユニフォーム、シューズ、ラケット、Tシャツなどを購入。6万円程度かかりました。また、年に2回合宿があり、合宿代も年間で6万円程度かかっています。
●子供の交際費
私立中学の場合、各地から生徒が通学してきているので、友人たちの居住地がバラバラです。ですから、遊びに行く時にも集合場所が遠方になるケースが多く、電車代が嵩みます。
また、遊びに行く場所も遊園地やカラオケ、話題のスポット、イベント関連など、小学生の頃に比べるとグッと行動範囲が広くなるので、高額な出費になりがちです。
学校にもよりますが、比較的裕福なご家庭の生徒が集まるような学校の場合、月に数万円などのお小遣いをもらっていたり、お小遣いは平均並みでも出かけるたびにお小遣いを渡したりしているご家庭も少なくありません。
息子も夏休みやテスト休みなど長期の休みになると、ディズニーランドに行ったり、ライブに出かけたり、遠方に出かけたり、友達とお茶をする時にはスタバを利用するなど、小学生の頃とは比べ物にならないほど行動範囲が広くなり、出費も増えました。
●その他
他にも細かいところでは、入学時に加入する損害保険や学校が募集している寄付などの負担が生じる場合があります。 また、勉強のサポートが手厚い学校の場合には、春休みや夏休みなどに講習があり、講習代もかかります。反対にみんなが塾に行くのを前提とした学校では、塾代もかかります。さらに、進学校の場合は、授業の進度が速く、内容も高度なため、授業についていけず塾に通い始めるケースも少なくありません。
そして、私立中高一貫校に入学して多くの保護者が驚くのが高校入学時に入学金の支払いがあることです。中高一貫校でも高校入学時には、20万円〜30万円程度の入学金がかかります。これは意外と知らない落とし穴です。
教育費はどうやって用意する?
このように、私立中学の費用を見てくると、かなり費用が嵩むことがわかります。最近、子育て世帯を対象とした助成制度が拡充されてきているとはいえ、私立中学に通うとなるとしっかり準備する必要があります。
基本的に教育費は、高校までは家計のなかで対応しつつ、大学入学前までに300万〜500万円を貯めておきたいところです。
私立中学、高校に子供を通わせる場合には、これまで見てきたような費用がかかることを想定して、月に8万円〜10万円程度家計から捻出できる家計にしておくことが必要です。
教育費に限らず、貯蓄の基本は「先取り貯蓄」です。先に貯める金額を取り分け、残ったお金で生活することで、確実にお金を貯めます。給与天引きでお金を貯める「財形貯蓄」や、銀行の普通預金口座から定期預金口座に毎月一定額を積み立てる「自動積立定期預金」など、自動的・強制的にお金を貯める仕組みを活用すると、手間もありません。ちなみに、子どもが生まれたときから毎月1万5000円を積み立てることができると、18歳の時点で約300万円貯まります。
また、児童手当を使わずに貯めるのもよいでしょう。2024年10月からの改正によって、高校卒業まで児童手当が支給されるようになりました。改正後は、生まれてから18歳まで児童手当を一切使わずに貯めると230万円ほどになります。
さらに、余裕を持って教育費を準備したいという場合には、資産運用も取り入れましょう。投資の王道は「長期」「積立」「分散」投資。リスクを抑えながらリターンを得ることを目指します。
投資で優先的に活用したいのが2024年に改正された新NISA(ニーサ・少額投資非課税制度)です。NISAを利用すると、投資で得られた利益にかかる20.315%の税金がゼロにできるので、お金をより効率よく増やせますし、利益を再度投資に回すことで複利効果も得られます。
仮に新NISAでラインナップされている投資信託で18年間、毎月1万円ずつ積立で投資信託を購入し、年平均4%の利回りで運用できた場合、積立した元本の216万円が約316万円と、約100万円増える計算になります。
もちろん、元本割れのリスクもありますが、金融庁の資料によると、積立・分散投資を20年間行った場合、リターンは2%~8%に収まるとのこと。子供の年齢が低く、大学入学まで時間が取れるようであれば、前向きに活用しましょう。
教育費はどのような進路をとるかによって変わります。我が子にどのような教育を受けさせるのかを考え、早めに用意することが大切です。先取り貯蓄、児童手当の貯蓄、そして新NISAなどを活用し、バランスよく準備していきましょう。

高山 一恵 ファイナンシャルプランナー
(株)Money&You取締役。中央大学商学部客員講師。一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学文学部卒業。NHK「日曜討論」「クローズアップ現代」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「マンガと図解 はじめての資産運用」(宝島社)など書籍100冊、累計180万部超。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。住宅ローンアドバイザー。X(旧Twitter)→@takayamakazue

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