23/04/30
日本のお金持ちはどれくらいいる?増え続けているのは本当か
物価が高くなって、去年より家計が厳しいと感じている方は多いでしょう。そうした庶民の生活とは反対に、日本では富裕層が増え続けているそうです。野村総合研究所が2005年から継続的に日本の純金融資産の保有額別の世帯数と資産規模を各種統計から推計しています。コロナ禍という厳しいときであっても、お金を増やし続けている富裕層の実態を推計結果から読み説いていきましょう。
いくらお金があったら富裕層だといえる?
漠然と「お金持ち」だといっても、資産の種類は、現預金、有価証券、金地金、不動産など幅広くあり、イメージしにくいものです。野村総合研究所では、2005年から継続的に純金融資産保有額別に世帯数と資産規模を推計しています。
純金融資産保有額とは、預貯金、株式、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、保有する金融資産の合計額から負債を差し引いたものです。その純金融資産の保有額をもとに、総世帯を5つの階層に分類し、各々の世帯数と資産保有額を推計しています。
5つの階層は
・超富裕層(5億円以上)
・富裕層(1億円以上5億円未満)
・準富裕層(5000万円以上1億円未満)
・アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満)
・マス層(3000万円未満)
と分類されていて、ピラミッドの形になっています。この推計によると、純金融資産が1億円以上ある世帯が富裕層だということになります。2021年の推計では、超富裕層の世帯は9万世帯、富裕層の世帯は139.5万世帯になっています。この2つの世帯を合わせた割合は全体の2.8%です。超富裕層にいたっては全体の0.2%以下で、簡単にお目にかかれるというわけではなさそうです。
●純金融資産保有額別の世帯数と資産規模(2021年)
野村総合研究所の資料より
増え続けている日本の富裕層と超富裕層世帯
日本の全世帯のうちの一握りともいえる富裕層や超富裕層ですが、調査のたびに増え続けています。
●純金融資産保有額別の金融資産と世帯数の推移
野村総合研究所の資料より
超富裕層と富裕層を合わせた「純金融資産1億円以上」の世帯数は、前回2019年の132.7万世帯から15.8万世帯増加して、12%増の148.5万世帯になっています。前々回2017年から2019年間では6万世帯の増加でしたので、富裕層の世帯数が大きく増えていることがわかります。2021年の富裕層・超富裕層の世帯数は、2005年以降の調査開始後で最多になっており、アベノミクスが始まった2013年から一貫して増加しています。
これは世帯数だけではなく、純金融資産保有額についても2013年以降、増加が続いています。2019年から2021年にかけて、富裕層は9.7%、超富裕層は8.2%も保有額が増加し、両者の保有合計額は333兆円から364兆円に増加し、9.3%増となっています。また、富裕層や超富裕層以外でも純金融資産の保有額は増えており、3000万円以上保有の世帯は全体の22%を占める結果になっています。
富裕層や超富裕層が増え続けている要因は?
2013年の前年の2012年12月に発足した第2次安倍政権では、成長重視の経済政策が行われるだろうという期待感から株価が上昇しました。それに加え2013年4月から始まった異次元緩和、2016年1月に決まったマイナス金利政策は投資環境に大きな影響を与えました。
過去10年近くにわたって富裕層や超富裕層の世帯数や資産額が増えた要因は、アベノミクスによってもたらされた株式などの資産価値上昇によって、保有している資産が増えたことによります。また金融資産の運用によって、準富裕層から富裕層へ、富裕層から超富裕層へランクが上がったためだと考えられます。
特に2020年には、コロナショックによる世界的な株価の暴落があり、その局面で株式や投資信託などの購入ができていれば、大きく資産を増やせるチャンスも存在しました。
調査を行った2021年においては投資環境が好転していましたが、今後は世界の景気減速や地政学リスクが懸念されており、富裕層や超富裕層の世帯数や金融資産の保有額に影響を与える可能性があります。
富裕層や将来の富裕層候補の相談相手とは
富裕層の内訳をみると、その約3分の1が事業オーナーになっています。野村総合研究所が2022年11月に実施した「NRIスタートアップ企業経験調査」では、現役の起業家や起業家予備軍を対象に、事業立ち上げの悩みや相談相手、家庭内でのコミュニケーションを調査しています。
調査結果からは、現役起業家は相談相手として金融機関を信頼して相談しており、起業家予備軍は外部の専門家や家族や知人を相談先としているケースが多いことがわかりました。また起業のカギは家族とのコミュニケーションで、現役起業家の8割が家族の理解が重要だったと答えています。
どうしても起業の際には、「人・モノ・金」といったリソース不足が課題になります。スタートアップでは、新しい商品・サービスなどで社会に新たな価値を提供することが目的になり、革新的なビジネスモデルである必要があります。
特に起業の際に必要になる「お金」は資金調達に頼ることが多く、金融機関やVC(ベンチャーキャピタル)、公的機関のサポートが事業立ち上げには必要になってきます。そこで金融機関にとっては、スタートアップの事業立ち上げや運営の支援を行うことに注力すれば、将来富裕層となる顧客へのビジネスチャンスにつながるという面もあるのです。
国の政策でも「新しい資本主義」として、持続可能な経済社会を実現することが課題となって、スタートアップを育成する動きがあります。このように社会的な課題を解決し、経済成長につながる起業家の拡大や支援は、間接的に富裕層を増やす一因ともなっているのです。
【関連記事もチェック】
・【2023年度から改定】残業代の「割増率」が変わる 金額の影響はいくら?
・年金受給者「確定申告不要制度」でも住民税の申告が必要なのは本当か
・親を扶養に入れるといくら節税できる?扶養に入れる条件、注意点、手続きをプロが解説
・【知らないと大損】退職金は一時金と年金で手取り額が全然違う!どう受け取るのが正解か【Money&You TV】
・年金を月20万円もらえる場合の手取りはいくら? 年金から天引きされる税金・社会保険料の金額【Money&You TV】
池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
この記事が気に入ったら
いいね!しよう