19/02/22
まったく問題なし!正社員登用後の即産休が認められる理由を弁護士が解説
ある会社に勤務するSさん(40代・女性)は、同じ部署に勤務する20代の女性社員に憤りを感じています。その理由は2ヶ月前に派遣から正社員登用されたその女性が妊娠し、産休を申請してきたから。
Sさんや会社の人事は、その事実に驚くとともに処遇に頭を悩ませており「仕事も覚えないうちに産休とは何事か」と怒る幹部もいるそう。正社員に推薦した人物については左遷することを検討中で、産休を申請してきた女性についても、「却下できないか」と考えているとのことです。また、部署内に不満の声があるといいます。
このような場合、会社は女性社員に産休を与えなければならないのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士に見解を伺いました。
Q.派遣から正社員登用されてすぐ妊娠し産休申請…却下することはできる?
A.できません。
冨本弁護士:「結論から述べますと、産休を与えなければならないでしょう。労働基準法は、6週間以内(双子の場合は14週間以内)に出産する予定の女性が休業を請求した場合、その者を就業させてはならないと規定しています(同法65条第1項)。
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則は、女性労働者が妊娠中である場合、女性労働者が妊婦健康検査を受けるために必要な時間を確保しなければならないと規定しています(同規則2条の4)。
同規則は、妊婦健康検査を受けるために必要な時間の確保についての目安についても定めており、以下のように定めています(同条第1項)。
・妊娠23週までは4週間に1回
・妊娠24週から35週までは2週間に1回
・妊娠36週から出産までは1週間に1回
・医師等がこれと異なる指示をした場合はその回数
妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針(平成9年労働省告示第105号)というのもあり、担当の医師等の指導がある場合、妊娠中の女性労働者について休業等の措置を講じるべきであることも定めています。
以上は、これから母親となる女性労働者を保護するためです。派遣から正社員になっただとか、まだ仕事も覚えていないといった事情によって否定されるようなものではありません」
Sさんの気持ちも理解できないものではありませんが、これから母親になる女性労働者は保護されるべき存在。会社の「事情」に左右されることがあってはなりません。」
取材協力弁護士:冨本和男
法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。
取材・文: 櫻井哲夫
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記事提供:シェアしたくなる法律相談所
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