23/04/24
残業代の多い業種は?4月から残業代の割増率がアップする人はどんな人?
本来の労働時間を超えて働くともらえる残業代。残業はないほうがいいのかもしれませんが、それでも努力が給与に反映されると、モチベーションに繋がりますよね。そこで、今回は日本で働く人の残業時間や残業代の現状と、2023年4月から残業代の割増率がアップする人について解説します。
業種別の平均残業代と平均残業時間は?
厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和5年1月分結果確報」から16業種の業種別の平均残業代と平均残業時間を見てみましょう。月あたりの「所定外給与」(以下、残業代)と所定外労働時間(以下、残業時間)は以下の通りです。
●16業種の所定外給与と所定外労働時間
厚生労働省「毎月勤労統計調査」(令和5年1月分結果確報)の「月間現金給与額」と「月間実労働時間」を基に筆者作成
業種によって残業時間・残業代に幅がありますね。残業時間の長い順・短い順に5つずつ並べ替えると、次の表のようになります。
●残業時間の長い業種・短い業種(上位5位)
厚生労働省「毎月勤労統計調査」(令和5年1月分結果確報)の「月間現金給与額」と「月間実労働時間」を基に筆者作成
残業時間が多い業種と、少ない業種を5つずつ並べました。残業時間が長い業種には、「運輸業,郵便業」、「情報通信業」、「電気・ガス業」、「製造業」、「建設業」と、縁の下の力持ちとして日々の生活を支えてくれる業種が多いことが分かります。
一方で残業が少ない業種は「飲食サービス業等」をはじめ、「医療,福祉」、「生活関連サービス等」、「卸売業,小売業」、「教育,学習支援業」と、私たち消費者が直接利用するものやサービスを扱う業種が多いことが分かりました。これらの仕事はシフトによりあらかじめ勤務時間が決められているため残業時間が短いのかもしれません。
平均残業時間を比較すると、一番長い「運輸業・郵便業」では21.8時間に対し、一番短い「飲食サービス業等」では5.2時間と、約4.2倍の差があります。運輸業・郵便業の長時間残業は問題になっており、2024年4月からは、トラックドライバーの残業時間に上限が定められることが決まっています。2024年以降のデータでは、今よりも平均残業時間が短くなる可能性が高そうです。
●残業代の高い業種・安い業種(上位5位)
厚生労働省「毎月勤労統計調査」(令和5年1月分結果確報)の「月間現金給与額」と「月間実労働時間」を基に筆者作成
残業代が高い業種には「電気・ガス業」「運輸業,郵便業」「情報通信業」「製造業」と先ほど紹介した残業時間が長い業種が並んでいます。また、残業代が低い業種では順位に違いこそありますが、全て残業時間が短い業種として紹介した業種が上位となっています。
一方で、「学術研究等」は残業時間が長い業種の上位5位ではありませんでした。そのため平均残業時間が同等の業種よりも、1時間あたりの残業代単価が高いといえます。
冒頭の16業種の表を、1時間あたりの残業代単価の高い順に並べると、次のようになります。
●残業代の単価ランキング
厚生労働省「毎月勤労統計調査」(令和5年1月分結果確報)の「月間現金給与額」と「月間実労働時間」を基に筆者作成
電気・ガス業の残業代の単価は3,563円。医療,福祉も2,941円と、3,000円近くなっています。それに対して教育,学習支援業は721円と、大きな開きがあることがわかります。
残業代の割増率がアップする人はこんな人!
2023年4月から60時間を超える時間外労働をした場合の残業代の割増率が、25%から50%に引き上げられました。
●時間外労働の割増賃金率の引き上げ
厚生労働省の資料より
実は図のとおり、大企業については60時間超の残業代の割増率はすでに50%になっていました。しかし、中小企業の場合、60時間超の残業代の割増率は25%だったのです。これが、2023年4月1日から大企業と同じく50%になった、というわけです。
対象となる中小企業は「資本金または出資金」、もしくは「労働者数」によって決まります。
●60時間超えの残業代の割増率が適用される中小企業(①もしくは②を満たす企業)
厚生労働省の資料より
なお、この引き上げは深夜労働にも影響があります。60時間を超えた残業時間に22:00~5:00の勤務が含まれる場合、深夜割増賃金率25%と、さらに時間外割増賃金率50%が追加されます。
しかし、先ほどの業種別の残業時間の平均では、最大で「運輸業,郵便業」の21.8時間でしたので、60時間を超える業種はありません。そのため割増率が適用される人はそれほど多くないと言えるでしょう。もし該当する中小企業にお勤めの場合は、60時間を超える残業をした月分の給与明細を確認してみましょう。
残業代は生活費の当てにせず暮らそう
日本の業種別の平均残業時間と残業代をご紹介しました。長時間、仕事を頑張る月もあると思います。ですが毎月、長時間の労働は疲弊してしまうものです。また、残業代が増えると社会保険料や所得税率が増える場合があります。そのため、残業は無理せず効率よく働きましょう。
そして残業代はなるべく生活費には使わずに、貯金や投資などをして特別な出費のために備えておくといいでしょう。社会情勢などで残業時間が短縮された場合にも生活に影響がでないよう家計管理も工夫していきましょう。
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金子圭都 ファイナンシャルプランナー(CFP︎®︎)
学生の頃、親族の死をきっかけにお金について学び、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。お金の勉強をする女性コミュニティでイベントの企画・運営に3年間携わり、のべ200人以上のお金の悩みに寄り添う。その後独立し、お金の不安を安心に変えるマネー相談を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー。
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