21/12/15
失業手当、いくらもらえる? 受給の条件や金額、手続きを解説
雇用保険に加入している人が仕事をやめたあと、失業中に受け取れる手当が失業手当(雇用保険の失業等給付の基本手当)。新しい仕事を探しているときの収入をサポートしてくれる心強い制度です。とはいえ、誰でも無制限に、いくらでも受け取れるわけではありません。今回は、失業手当をもらえる人の条件や金額、受け取る際の手続きをご紹介します。
失業手当をもらえる人の条件をチェック
失業手当を受け取る際には、まずハローワークで求職の申し込みをする必要があります。というのも、失業手当はあくまで新しい仕事を見つけて再就職してもらうために支給される手当だからです。退職後に休み、仕事を探さない場合には受け取ることができません。ハローワークで仕事を探し、就職活動をする必要もあります。
また、失業手当を受け取るには、一定期間以上雇用保険に加入することが必要。必要な加入期間は、仕事をやめた理由によって異なります。
一般離職者(自己都合)の場合、退職前2年間に雇用保険の加入期間(被保険者期間)が12か月以上あることが必要です。
一方、特定受給資格者(会社都合)や特定理由離職者の場合は、退職前1年間に雇用保険の加入期間が6か月以上あれば失業手当が受け取れます。
自己都合とは、正当な理由なく自分の都合で仕事をやめた場合です。それに対して、特定受給資格者は「会社が倒産した」「リストラに遭った」などの会社都合で仕事をやめた場合。特定理由離職者は「妊娠・出産した」「親族の看護が必要になった」など、正当な理由のある自己都合で仕事をやめた場合を指します。自己都合よりも、会社都合や正当な理由のある自己都合の退職のほうが条件がやさしくなっています。
失業手当でもらえる金額をチェック
失業手当でもらえる金額は、退職前6か月の賃金合計を180で割った「賃金日額」に、所定の給付率をかけた金額(基本手当の日額)です。この金額が後で紹介する給付日数分受け取れます。
●基本手当日額の計算方法(2021年8月1日〜)
厚生労働省の資料より
賃金日額には、残業代や通勤手当は含みますが、ボーナスは含みません。賃金日額が4,970円未満の場合は80%、12,240円超(離職時の年齢が60〜64歳の場合は11,000円超)の場合は50%(45%)をかけた金額が基本手当日額になります。
賃金日額が4,970円以上12,240円以下(11,000円以下)の場合は、下部にある計算式に当てはめて基本手当日額を算出します。ここでは、目安の金額を示しておきます。
●賃金日額4,970円〜12,240円までの基本手当日額の目安
賃金日額が増えるほど、給付率は下がるしくみになっています。
なお、賃金日額と基本手当日額には下限と上限があります。下限は全年齢共通で賃金日額2,577円、基本手当日額2,061円です。上限は以下のように年齢により異なります。
・29歳以下……賃金日額上限13,520円、基本手当日額上限6,760円
・30~44歳……賃金日額上限15,020円、基本手当日額上限7,510円
・45~59歳……賃金日額上限16,530円、基本手当日額上限8,265円
・60~64歳……賃金日額上限15,770円、基本手当日額上限7,096円
失業手当の給付日数をチェック
失業手当の給付日数は、原則90日〜330日となっています。何日受け取れるかは、仕事をやめた理由・年齢・雇用保険の加入期間によって変わります。
●失業手当の給付日数
・自己都合の場合
・特定受給資格者・特定理由離職者の場合
自己都合で仕事をやめた場合は年齢に関わらず90日〜150日。雇用保険の加入期間によって給付日数が決まります。それに対して、特定受給資格者や特定理由離職者の場合は雇用保険の加入期間が長いほど給付日数が増えます。
上で紹介した基本手当日額とこの給付日数をかけると、失業手当で受け取れる金額がわかります。たとえば、雇用保険に15年加入していた38歳・賃金日額12,000円の人が会社都合で仕事をやめた場合に受け取れる失業手当の金額は、6,119円×240日=146万8560円となります。
ただし、失業手当の給付がはじまるまでの期間は、特定受給資格者・特定理由離職者の場合と自己都合の場合で異なります。どちらの場合も、ハローワークで申請をしてから7日間の待機期間があるのは同じです。しかし、特定受給資格者・特定理由離職者の場合はその後すぐに給付の対象になるのに対し、自己都合の場合はそこからさらに2か月の給付制限期間を経て給付の対象になります。この間は失業手当を受け取れません。
なお、給付制限期間は以前「3か月」でしたが、2020年10月1日からは5年間のうち2回までであれば「2か月」に短縮されています。5年間で3回目以降の場合は3か月となります。
また、失業手当がもらえる期間は、原則として仕事をやめた日(離職日)の翌日から1年間となっています。手続きが遅くなって、給付日数が残っているのに1年が過ぎてしまったという場合、支給が打ち切られてしまいます。
失業手当の手続きはどうする?
失業手当を受け取るには、まずハローワークで求職の申し込みを行います。この際、退職した会社から受け取る離職票を提出する必要がありますので、忘れずに持っていきましょう。
失業手当の受給資格があると確認されたら、後日雇用保険の受給説明会に参加し、雇用保険制度の説明を受けます。また第1回目の失業認定日も通知されます。失業認定日とは、ハローワークから「失業している状態である」と認定される日のこと。原則4週間に1度あります。この日までに求職活動を行いつつ、失業認定日にはハローワークに足を運び、失業の認定を受ける必要があります。失業の認定を受けると、後日指定した口座に失業手当が振り込まれます。
まとめ
失業手当は雇用保険に加入している人が仕事をやめ、求職活動をしている場合に受け取れる手当。その金額や受給の条件・期間は、人によりさまざまです。自分の場合がどうなのか気になる場合は、最寄りのハローワークに問い合わせてみましょう。
普段から雇用保険の保険料を支払っている以上、きちんと活用しないのは損。失業手当を早く受け取るには、早めの手続きが肝心です。退職する会社に伝えて離職票をなるべく早く発行してもらい、手元に届いたらすぐに手続きしましょう。そして失業手当をもらいながら、次の仕事をしっかりと探しましょう。
【関連記事もチェック】
・失業手当には落とし穴あり。損をしないために押さえるべき5つ
・失業手当をもらっていると年金がもらえない? 在職老齢年金の変更点と合わせて解説
・失業手当だけではない、知られざる「雇用保険」の手厚い補償
・失業手当をもらっていると年金がもらえない? 雇用保険との調整に要注意
・失業手当だけではない!意外と知らない「雇用保険」の手厚い補償
畠山 憲一 Mocha編集長
1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。教員免許も保有。趣味はランニング。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう