23/04/06
「食べ放題でお店は潰れないのはなぜ?」と子供に聞かれたら?お金の学びになる答え方
(イラスト/高田真弓)
子どもにも大人にも人気の食べ放題。たくさん食べれば食べるほど、お得な気分になりますね。なかには「お店が潰れてしまわないか」と心配する子どもも……。食べ放題の仕組みを知れば、商売に不可欠な「原価」と「人件費」がわかるもの。
登場するのはFPママとFPパパ、そして息子のヒロの3人です。
※本稿は、頼藤太希・高山一恵著『11歳から親子で考えるお金の教科書』(日経BP)の一部を再編集したものです。
食べ放題で学ぶ「商売の基本」公式
ヒロ:わーい! 今日は、食べ放題のビュッフェレストランだ! 食べるぞー!
FPママ:ヒロは食欲旺盛だからね。食べ放題だと好きなだけ食べてもらっても、お会計は変わらないからありがたいわ。
ヒロ:うん!
FPパパ:でも、食べ放題の時間は2時間と決まっているからね。
ヒロ:了解! 2時間あれば、デザートもたくさん食べられそう♪
FPママ:ママはヒロほど食べられそうにないわ。
ヒロ:でもさー、僕みたいにたくさん食べる人ばかりきたら、お店が潰れちゃうんじゃないのかなー。ほらっ、あの人もお皿いっぱいにローストビーフを盛っているよ。
FPパパ:確かに心配になるよね。でも、ちゃんとお店側は潰れないように考えているんだよ。食べ放題のお店が潰れない理由は、商売の基本にヒントがあるよ。
ヒロ:えーっと、商売の基本は「売上−経費=利益」だったよね。
著書「11歳から親子で考えるお金の教科書」(日経BP)より
FPパパ:そう! よく覚えていたね。じゃあ、食べ放題で利益を出して儲けるためには、どうしたらいいとヒロは思う?
ヒロ:うーん、売り上げを増やすことも大切だけど、経費を減らすことも大切だったよね。ここの食べ放題はすごく人気で、たくさんお客さんがきているから、売上は多そうだよね。それで経費は………。
FPパパ:レストランの経費って、どんなことに使うお金だろうね?
ヒロ:お料理の材料費とか? あとは、店員さんのお給料もあるよね。
FPパパ:その通り。
ヒロ:うーん、食べ放題だと、お客さんがたくさん食べるから、材料もたくさん必要で、材料費がかかっちゃいそうだよね。
FPパパ:そうだね。それでも利益が出るようにするには、どうしたらいいかな?
ヒロ:材料費の安い料理をたくさん出すとか?
「原価率」と「人件費」に工夫あり
FPママ:うん、いい視点ね。レストランみたいな外食のお店では、材料費のことを「原価」、売上に対する材料費の割合のことを「原価率」っていうのね。で、ここのお店みたいに、ローストビーフやステーキ、パスタ、ピザ、カレーなんかを出す洋食のビュッフェレストランの場合、原価率はだいたい30〜40%くらいといわれているのよ。
ヒロ:じゃあ、僕らが1000円払ったら、そのうち、300~400円が原価?
FPママ:そうね。でも、メニューによって違いがあるのよ。外食の会社で働いている人に話を聞くと、ローストビーフやステーキなどのお肉料理は、原価率が高めで40%くらいのことが多いんだって。一方、パスタやピザのような小麦粉からつくる料理や、カレーなどのご飯ものの原価率はだいたい20〜30%で低めなのよ。
ヒロ:そうなの? じゃあ、お肉料理をたくさん食べたほうがお得ってことだよね。
FPパパ:そうなんだよ。でも、人によっては、パスタやピザが好きでそればかり食べる人もいるよね。
ヒロ:それ、僕のことだね♪
FPパパ:ある人が原価率の高いお肉ばかり食べたとしても、ヒロみたいに原価率が低いパスタやピザを好んで食べる人もいる。パパはステーキが好きだけど、そればっかりだとやっぱり飽きちゃうから、ヒロほどじゃないけど、パスタも食べる。そうやって全体としては、バランスがとれるんだよ。つまり、お店側としては、原価の高いものと低いものを組み合わせて提供することで、全体では利益が出る仕組みにしているってことだね。
FPママ:それにお客さんにとっても、いろんなお料理があったほうがいいでしょ。
ヒロ:そうだね。僕はお肉ばっかりでパスタのない食べ放題なんてイヤだもん。
FPママ:さっきの外食業界の人に聞いた話だと、ファミリーレストランの飲み放題のドリンクの原価はだいたい30円くらい。コーラみたいな炭酸飲料やコーヒーは特に安くて1杯15円〜20円くらいなんだって。最近はインフレで物価が上がっているから原価はもっと高くなっているかもしれないけどね。
ヒロ:うちがいつもいくファミリーレストランのドリンクバーセットは200円、僕は小学生だから100円だよね。僕のコーラは7杯飲まないと元がとれないんだね。
FPママ:ママのコーヒーなんて14杯以上飲まないとダメね。ところで、原価のほかにも、経費ってなかったかしら?
ヒロ:えっとー、店員さんのお給料があったよね。「人件費」っていうんだよね。
FPパパ:お、よく知っているな!
ヒロ:あっ! 食べ放題のビュッフェだと、自分でお料理を取りにいくから、店員さんがたくさんいなくても大丈夫だよね。そのぶん、食べ放題では人件費が減るってことか!
FPママ:そうなのよ。それにビュッフェの場合、注文をとってから、お料理をつくるわけじゃないでしょ。あらかじめお店側が選んだ料理をまとめてたくさん料理しておけばいいから、その意味でもわりとラクなのよ。
FPパパ:ほら、うちでもママやパパが忙しかったり、疲れていたりするときは、週末にまとめてつくったカレーで夕飯を済ませたりするじゃん?
ヒロ:あ、そうだね。料理って、まとめてたくさんつくっておくほうがラクなんだね。
FPパパ:そう。お客さんの注文を聞いてからつくると、用意していた材料があまっちゃったり、逆に足りなくなっちゃったりしやすいっていうのもあるしね。ムダも出やすいんだ。
著書「11歳から親子で考えるお金の教科書」(日経BP)より
ヒロ:そっかー、ビュッフェって、いろんな工夫をして経費を減らしているんだね。
FPパパ:そう、お客さんを喜ばせながら、いろんな工夫で経費を減らして、利益を出すんだ。そういうのを「儲けの仕組み」とか「ビジネスモデル」と呼ぶよ。
ヒロ:そっかー。「儲けの仕組み」があるから、僕がどれだけ食べても、お店は潰れないんだね。よーし、安心してモリモリ食べるぞ!
【FP夫婦からの解説】儲かるかどうかの鍵は「原価」と「人件費」
好きな料理を好きなだけ食べられる食べ放題のビュッフェ。子どもたちと話していると「お店は潰れちゃわないのか」と心配する声も聞かれます。商売の基本は「売上―経費=利益」です。食べ放題のお店が潰れない理由は、この式のなかの「経費」と深く関わります。
商売の経費で大きいものといえば「原価」と「人件費」です。
「原価」とは、商品を製造するのに必要な費用のことで、飲食店の場合は「材料費」です。そして、売上に対する原価の割合のことを「原価率」といいます。
飲食店の原価率の目安は一般に30%程度です。洋食のビュッフェレストランの場合、原価率は30〜40%くらいといわれます。ただし、原価率はどの商品(メニュー)も一律に同じではありません。ステーキなどの肉料理は、原価率が高めで40%程度、パスタやピザ、カレーなどの炭水化物中心の料理の原価率は20〜30%程度が一般的です。
さまざまなメニューの原価率の相場は、ネット検索でもわかります。具体的な数字を調べながら、なぜそうなるのかを子どもと話しあうと結構、盛り上がります。
例えば、肉料理がお得だと、それを目当てにくるお客さんが増えるんじゃないかとか、パスタやピザは、原価率が低くても注文するお客さんが多いんじゃないか、など。
原価率の高い商品と安い商品を組み合わせて提供することで、お客さんを満足させると同時に、お店の利益を確保しているというわけです。100円ショップも、原価率が高い商品と低い商品をうまく組みあわせています。
「原価」と並んで大きい「人件費」は、働く人のお給料などです。ビュッフェは、さまざまなかたちで人件費を抑えられるという意味で、お店にメリットがあります。
ビュッフェはセルフサービスで、お客さんが自分で料理を取りにいきます。そのぶんスタッフが少なくて済みます。また、料理をあらかじめ大量に準備できるのも大事なポイントです。飲食店では一般に、ランチタイムなどの混む時間帯に多くの人手を必要とします。けれど、あらかじめ大量に準備しておけば、それほどの人手はいりませんし、ムダな材料費がかからないという意味でもメリットがあります。
食べ放題のお店には、利益を上げるための工夫がほかにもいろいろあります。ぜひ、お子さんと一緒に楽しく考えてみてください。
<まとめ>
▼ 「食べ放題のお店が潰れない理由」を考えるカギは「経費」にある。経費と
して大きいのは、一般に「原価」と「人件費」
▼ 食べ放題のお店は、原価の高い商品と低い商品をうまく混ぜているもの
▼ 食べ放題のお店は、人件費を抑えやすい仕組みでもある
『11歳から親子で考えるお金の教科書』 頼藤太希/高山一恵 著
ファイナンシャルプランナー(FP)夫婦がつくった、楽しくてわかりやすいお金の教科書。11歳の息子の「なぜ?」に答えて、お金の上手な「稼ぎ方」「使い方」「増やし方」を伝えます。年収、社会保険、電子マネー、投資、NISA、暗号資産…気になるトピックを、漫画と図解、会話形式でわかりやすく解説。大人の入門書にも好適。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
高山 一恵 ファイナンシャルプランナー
(株)Money&You取締役。一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。女性向けWebメディア『FP Cafe』『Mocha(モカ)』や登録者1万9000人超のYouTubeチャンネル『Money&YouTV』を運営すると同時に、全国で講演活動、執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『マンガと図解 定年前後のお金の教科書』(宝島社)、『11歳から親子で考えるお金の教科書』(日経BP)など書籍100冊、累計170万部超。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。X(旧Twitter)→@takayamakazue
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