23/02/21
60代の貯蓄額と年金額の平均の実態
定年退職の時期が近づくと、他の家ではどれくらい貯蓄を持っているのか、そして、年金はどれくらいもらえるのか気になるかもしれませんね。もらえる年金額から必要な貯蓄額の目安が見えてくるので、平均額を知っておきたいところです。そこで今回は、60代の人が持っている平均貯蓄額と、年金の平均月額を調べてみました。また、年金を増やせる方法も5つご紹介します。
60代の人はどれくらい貯蓄してる?
60代といえば、経済的に子どもの手が離れて、家計管理が落ち着く頃なのではないでしょうか。また、定年退職を迎えたり、年金生活が始まったりと、セカンドライフが始まる時期でもありますね。
●60歳代の平均貯蓄額
そんな60代の人たちは、どれくらいの貯蓄を持っているのでしょうか?そこで、60歳代の貯蓄額の平均を調べてみました。
【60歳代の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)】
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](2022年)」より筆者作成
また、60歳代の金融資産保有額の平均額は1,819万円、中央値は700万円となっています。
貯蓄がある世帯に絞ると、最も多いのが3,000万円以上(20.3%)でした。これが平均額を押し上げています。おそらく定年退職で退職金が入った人が多いため、貯蓄額が3,000万円以上の世帯が多いと考えられます。
ただ、気になるのは中央値が700万円という点です。中央値は貯蓄額を少ない額から多い額までを順に並べて、ちょうど真ん中に来る金額を指します。平均額に比べ、より実態に近い金額になるのが中央値です。60歳代で貯蓄が700万円とすると、残りの人生が30年近くあるとすれば、中には年金の不足分を賄う貯蓄が足りなくなる人が出てくるかもしれません。
さらに気になるのが、金融資産を持たない人(非保有)です。これは全体の20.8%に上ります。この場合、年金生活に入ってから頼れるのは年金のみで、不足分を補うことができないため、生活費を相当切り詰める必要が出てきそうです。
●60歳代はどんな方法で貯蓄をしているのか?
ここで、60歳代の人がどんな方法で貯蓄をしているのか調べてみました。
【種類別金融商品保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)】
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](2022年)」より筆者作成
上記は金融資産保有額の平均額1,819万円の内訳を表したものです。これによると、貯蓄方法のうち預貯金の割合は45%以上を占めていることがわかります。2番目に多い株式は約17%です。60歳代の人は投資よりも預貯金に頼る人の方が多いことがわかりますね。
年金月額の平均はいくら?
60代はちょうど定年退職の時期となるため、65歳からもらう年金額が気になるのではないでしょうか。老後生活は年金を主な収入減として、足りない分を貯蓄の取り崩しで補っていくことになります。そのため、自分がどれくらいの年金をもらえるかは、資産寿命を延ばすための重要なポイントとなるのです。
そこで、年金月額の平均を調べてみました。
●老齢厚生年金
・平均月額:14万3965円(基礎年金も含む)
・65歳以上男性の平均月額:16万9006円
・65歳以上女性の平均月額:10万9261円
●老齢基礎年金の場合
・平均月額 5万6368円
厚生労働省2021年度厚生年金保険・国民年金事業の概況より
老齢厚生年金では、男性と女性の平均月額に約6万円の開きがあります。女性は結婚や出産、育児などで働く時間が少なくなるため、男性に比べて老齢厚生年金が少なくなる傾向があります。老後生活でも夫婦で暮らしている間は2人分の年金で生活ができそうですが、もし1人になったときのことを考えると、貯蓄や年金を増やす工夫が必要かもしれません。
また、自営業者やフリーランスの場合、もらえる年金は老齢基礎年金のみになります。厚生年金のような上乗せになるものがないので、貯蓄や年金を増やす工夫は必須といえるでしょう。
年金を増やすためにできる5つのこと
年金生活になってからもゆとりのある暮らしを目指すためには、計画的な貯蓄と年金を増やす工夫が必要です。ここでは年金を増やすためにできることを5つご紹介します。
●年金を増やすためにできること1:年金を繰り下げ受給する
年金は66歳以降75歳までに、1ヶ月単位で繰り下げて受給できます。繰り下げ受給をすると1ヶ月につき0.7%年金が増額します。70歳まで繰り下げると42%、75歳までなら84%年金を増額できます。もらえる年金額を増やすと、その分社会保険料も増えるので、バランスを見ながら増額を考えましょう。
●年金を増やすためにできること2:iDeCoに加入する
iDeCoは私的年金制度で、自分で運用商品を選び、自分で掛金を積み立てていきます。iDeCoでは掛金全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)となり、運用益は非課税です。また、老齢給付金を受け取るときも税制優遇を受けることができます。
●年金を増やすためにできること3:国民年金基金に加入する
自営業者やフリーランスなど国民年金の加入者は、会社員の厚生年金にあたるものがないため、将来は老齢基礎年金しかもらうことができません。そこで、もらえる年金を上乗せするために、国民年金基金の加入をおすすめします。一生涯、終身年金を受け取れて、掛金は全額社会保険料控除の対象になります。
●年金を増やすためにできること4:つみたてNISAを始める
つみたてNISAとは、少額から長期、分散、積立投資ができる非課税制度です。運用益が年間40万円まで最長20年間非課税になります。また、2024年にはつみたてNISAは生まれ変わる予定です。非課税保有期間が無期限化となり、つみたて投資枠として年間120万円までの運用益が非課税になります。積立投資は少額からできるので税制優遇を受けられるつみたてNISAを使って、自分ペースの投資を考えてみてはいかがでしょうか。
●年金を増やすためにできること5:長く働く
厚生年金は、原則70歳まで加入することができます。厚生年金に加入して働く期間を延ばせば、老齢厚生年金を増やすことができます。また、健康保険にも加入でき、働くことで月々の収入を得ることができるので、資産寿命を延ばすことも可能です。
まとめ
60代の平均貯蓄額を知ることで、貯蓄計画を見直すきっかけになったのではないでしょうか。また、将来も安心して暮らしていくためには、貯蓄額だけでなく年金額にも目を向けることが重要です。自分がもらえる年金の見込み額は、ねんきん定期便やねんきんネットで確認できます。毎年、誕生月にねんきん定期便が送られてくるので、必ず確認して必要であれば貯蓄計画を見直すことをおすすめします。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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