23/01/06
実際の年金振込額が少なくて落胆!年金から税金・社会保険料はいくら天引きされるのか
50歳以降になるとねんきん定期便には、将来受け取れる年金額が掲載されます。年金受取の準備として事前におおよその受取り金額を把握することができますので、とても便利ですよね。ですが、ねんきん定期便に記載されている金額=受取額ではありません。なぜなら、年金は額面通りの金額を受け取れるわけではなく、受取時には住民税や所得税、介護保険料などの社会保険料が天引きされるからです。
今回は、65歳以上の方の年金から引かれる税金の種類、年金の手取り額のシミュレーション、年金手取りを増やす方法について解説します。
振り込まれている年金は「額面」ではなく「手取り」
年金からは、いろいろなものが天引きされていることをご存知でしょうか?この仕組みは、会社員の給与の「額面」と「手取り」の関係と同じです。
「額面」の金額を聞いて喜んでいると、いろいろと引かれた「手取り」の金額が、思った以上に少なくてがっかりしたという経験がある人は多いでしょう。年金も同様に一般的に「源泉徴収」や「特別徴収」という仕組みによって、税金や社会保険料が差し引かれて手取りとなります。
現在、老齢年金から天引きされるのは、「所得税」「住民税」「介護保険料」「国民健康保険料もしくは後期高齢者医療保険料※」です。
つまり、年金からは4つもの税や保険料が引かれた上で、やっと手元に届いているのです。
※健康保険料は、75歳未満なら「国民健康保険料」、75歳以上なら「後期高齢者医療保険料」が天引きされます。
●年金の「額面」と「手取り」の関係
筆者作成
ねんきん定期便に記載される年金額は、これら年金から引かれる税金・社会保険料については考慮されていないため、「実際に年金をもらうときに、思ったよりも手取りが少なくてがっかりした」という話をよく耳にします。
年金の手取り額のシミュレーション
税金や社会保険料の負担額は所得や年齢、家族構成などによっても変わるので一概には言えません。ただ、税金や社会保険料の負担額合計で「年金収入の1割程度」が一応の目安ととされています。
今回は、「東京都世田谷区」に住む65歳の夫婦2人のみの世帯を例にとり、年金受給額に対し、それぞれ税金・社会保険料の負担がどのくらいになるかをざっくり計算しましたので、一応の目安として参考にしてみてください。
●年金手取り額シミュレーション前提条件
[住所] 東京都世田谷区在住の夫婦2人のみ世帯
[年齢] 夫婦ともに65歳(同い年)
[年金加入歴]2人とも収入は公的年金のみで、夫婦ともに男女別の平均給与で厚生年金40年加入した場合を想定
筆者作成
なお、実際の金額を具体的に把握するには、介護保険料・国民健康保険料・後期高齢者医療保険料・住民税が天引きされている年金受給者へ市町村から年金から天引きする金額が掲載されたお知らせが郵送されますので、こちらで確認するようにしましょう。
事前に知りたい方は、お住まいの市区町村によって、ウェブサイト上に等の年金の支払金額などを入力するだけで簡単に住民税や社会保険料の試算をすることができる「税額シミュレーション」が活用できる場合がありますので、こちらをご利用いただくといいと思います。
年金の手取り額を増やす方法
年金から天引きされる税金や社会保険料の金額は、毎年、日本年金機構へ提出する「扶養親族等申告書」の情報をもとに計算されています。
例えば、所得税や住民税で控除の対象となる配偶者がいる場合、決められた期限までに
扶養親族等申告書を提出していれば、配偶者控除が適用されますので、天引きされる金額が少なくなります。また、扶養親族等申告書を提出すると、所得税の税率が下がるケースもあります。逆に言えば、扶養親族等申告書を提出していないと、振り込まれる年金の金額は、本来よりも少なくなっています。
扶養親族等申告書の書式は、以前よりも複雑になっていますが、書きやすいよう配慮されたものになっている印象です。たった1枚の書類を提出することで、年金の手取りが増えるのですから、しっかりと記入して提出するようにしましょう。
●扶養親族等申告書の書式
日本年金機構ホームページより画像引用
確定申告で収めすぎた税金を取り戻す方法も
ほとんどの年金受給者は、天引きだけで税や社会保険料の支払いが済むため、改めて確定申告を行なう必要はありません。しかしながら、「マイホームを住宅ローンなどで取得した」「一定額以上の医療費を支払った」「災害や盗難に遭った」などの場合は、それぞれに応じた控除が用意されています。これらの場合は、確定申告を行なうと、その分の税金が戻ってきます。
特に、1年間の間に病気やケガで医療機関に支払った治療費や医薬品代などが一定額以上になると税金が戻ってくる「医療費控除」は、活用できるでしょう。
医療費控除の対象となるのは、一般には「10万円以上」とされていますが、「所得が200万円以下の場合は、所得の5%以上」も対象となります。例えば、年金による所得が100万円の場合、医療費が5万円以上であれば、医療費控除の対象となるのです。
また、医療費が10万円を大きく下回る場合でも「セルフメディケーション税制」が対象となります。セルフメディケーション税制は市販の「スイッチOTC医薬品」の年間購入額が1万2000円を超えれば、超えた金額(上限8万8000円)を課税所得から控除できるものです。
対象の医薬品はパッケージに表示があるほか。レシートに「★」印がつくなどで区別が付きます。ただ、セルフメディケーション税制の利用には予防接種の領収書や健康診断の結果通知表などが必要で、医療費控除との併用はできませんので注意しましょう。
年金生活者でもふるさと納税を利用できる
ふるさと納税は、年金所得者でも利用できます。ただし、ふるさと納税のメリットを最大限受けられるかどうかは、人によって異なりますので注意が必要です。その理由は、ふるさと納税の寄附控除の効果が、公的年金等の収入によって異なるためです。公的年金や副業収入、不動産収入、家庭の状況などによって、税控除の限度額や特例制度の利用可否が変わります。所得が少なく、所得税や住民税がほとんどかからないようなケースに至っては、寄附金額の全額が自己負担になってしまう可能性もあり、シミュレーションサイト等でメリットがあるかをよく調べてから活用することをおすすめします。
ふるさと納税によってメリットを得られるケース
年金受給者でほかに収入がない場合、ふるさと納税によってメリットを得られる目安は、以下になります。
<メリットを得られる目安の年金受給額>
・60歳未満で公的年金等の受給額が105万円超
・65歳以上で公的年金等の受給額が155万円超
公的年金等の受給額が上記金額以下の場合には、税控除を受けられません。一方で年金以外の収入がある場合には、それらを合算した金額を基準にして寄附限度額が計算されますので、しっかりと確認しておきましょう。
また、確定申告の要否にも注意が必要です。医療費控除など他の理由から確定申告を行う場合、ワンストップ特例は申請済みだったとしても利用することはできません。もし確定申告をするのであれば、ふるさと納税分も含めて実施するようにしましょう。
まとめ
税金や社会保険の計算は複雑ですが、扶養親族等申告書をきちんと提出し、さらにメリットがある場合はふるさと納税なども利用するとよいでしょう。せっかくもらえるようになった大切な年金ですから、できるだけ大きな金額が振り込まれるようにしたいですよね。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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