22/09/08
児童手当がもらえない所得制限ギリギリの人は、iDeCoをやればもらえるって本当か
2022年10月から、児童手当の特例給付がもらえない人が出てきます。児童手当の特例給付が支給されるかどうかは、給与収入を目安としていますが、実際は、さまざまな所得控除を差し引いた後の所得額が判定基準となります。
「給与収入がぎりぎり基準に引っかかってしまう」といった場合でも、iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)を使って所得を減らせば、問題なく児童手当の特例給付がもらえるかもしれません。今回は、児童手当の特例給付、所得制限のこと、なぜiDeCoを使えば所得が減らせるのかを解説します。
子育て世帯に支給される児童手当
児童手当では、中学生以下(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の子どもがいる世帯に対して、現金が給付されます。
●児童手当の金額
内閣府「児童手当のご案内」より
上の表のとおり、児童手当は子ども1人につき、3歳未満には月額1万5,000円、3歳以上から中学生までには月額1万円が支給される制度です。なお、第3子以降は、3歳から小学校修了までの期間は、月額1万5,000円に引上げられます。この第3子以降とは、高校卒業まで(18歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の養育している児童のうち、3番目以降をいいます。
児童手当の支給は年に3回、6月・10月・2月にそれぞれの前月分までの手当が支給されます。6月は2月~5月分、10月は6月~9月分、2月は10月~1月分の4か月分がそれぞれ支給されます。
児童手当の特例給付、2022年10月分から支給されない人も
児童手当には、所得制限が設けられているため、対象年齢の子どもがいても、必ず支給されるわけではありません。子どもを養育している人の扶養親族等の数に応じ、所得制限限度額・所得上限限度額が決まっています。
●所得制限限度額・所得上限限度額
内閣府「児童手当のご案内」より
子どもを養育している人の所得が所得制限限度額以上の場合、児童手当は特例給付となり、月額一律5,000円となります。さらに、2022年10月分からは、子どもを養育している人の所得が所得上限限度額以上の場合、児童手当が支給されなくなります。
たとえば、扶養親族が7歳と10歳の子ども2人と年収103万以下の配偶者のモデルケースの場合で考えてみましょう。この場合、世帯主の年収が960万円未満であれば1か月あたり「1万円×2人=2万円」の児童手当が支給されます。また、世帯主の年収が所得制限限度額の960万円~1,200万円未満であれば「特例給付」が支給されます。1人につき5,000円が支払われるため「5,000円×2人=1万円」を受け取れます。しかし、世帯主の年収が所得上限限度額の年収1,200万円以上となったら、特例給付は0円になってしまいます。
児童手当の所得制限・所得上限はiDeCoを利用しよう
「年収が1200万円超える…、児童給付の特例給付がもらえなくなる」とがっかりされた方もいるかもしれません。しかし、児童手当の判定基準は年収ではなく所得です。
児童手当の基準となる所得額は、以下の式で計算します。
所得額(※1)-控除額(※2)-8万円(施行令に定める控除額)
※1 会社員の場合、給与所得の源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」欄をみます。
※2 雑損控除、医療費控除、小規模企業共済等掛金控除(iDeCo含む)、障害者控除、ひとり親控除、寡婦控除、勤労学生控除の合計。
つまり、所得制限の判定基準にぎりぎりで引っかかりそうな場合、iDeCoを利用することで、所得額から差し引く控除額を増やせば、所得額が減り、児童手当が受け取れるというわけです。
iDeCoは、毎月一定の金額を積み立て、あらかじめ用意された積立・保険・投資信託などの金融商品で自ら運用する制度です。そして、運用の成果を原則60歳以降に一時金または年金で受け取ります。iDeCoの積立額は月額5,000円から。上限は加入者の職業で違いがあります。
iDeCoでは、毎年拠出した積立金はすべて所得控除の対象になるため、所得税や住民税を安くすることができます。また、運用で得た利息、投資での利益には税金がかかりません。そのうえ、一時金でまとめて受け取るときは退職所得控除、年金を分割で受け取るときは公的年金等控除の対象になり、所得税を抑えることができます。
たとえば、上で紹介した扶養親族3人の世帯の所得が980万円の場合、所得が所得上限限度額以上となっているので、児童手当がもらえなくなります。しかし、iDeCoを利用して掛金を毎月2万円(年24万円)出したとすれば、所得は980万円−24万円=956万円となり、所得上限限度額を下回るため、児童手当の特例給付の5,000円がこれからも受け取れます。年間にして6万円、15歳までで90万円も受給できます。
同様に、この世帯の所得が740万円の場合、iDeCoで年24万円の掛金を出すと、所得は740万円−24万円=716万円に。所得が所得制限限度額を下回るため、児童手当は毎月1万円受け取れるようになります。
なお、iDeCoだけでなく、医療費控除(年間の世帯の医療費が一定額を超えた場合に受けられる控除)でも同様に所得を差し引けます。とはいえ、医療費がかかっていなければそもそも医療費控除は利用できません。その点、iDeCoは自分で加入できて所得が減らせるのでおすすめというわけです。
2022年10月からは、会社員・公務員もiDeCoに加入しやすくなる
これまで、企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している人は、事実上iDeCoに加入できませんでした。企業型DCとiDeCoを併用するには、労使合意によって「企業型DCとiDeCoの併用を認める」といった規約が必要だったからです。しかし、2022年10月以降は、そうした規約がなくてもiDeCoに加入できるようになります。
もし、児童手当の所得制限・所得上限にかかってしまいそうであれば、iDeCoを活用することで所得を抑え、児童手当を受け取れるようになります。また、児童手当に関係なく、iDeCoは老後資金を合理的に準備するにはうってつけの方法ですので、ぜひ利用を検討しましょう。iDeCoは加入手続きに時間がかかりますので、早めの準備をおすすめします。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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