22/08/08
定年後の平均貯蓄額 300万円、65歳以上で貯められていない世帯の割合は?
少し前に話題になった「老後2000万円問題」を受けて、老後生活への蓄えに不安を感じている方も多いでしょう。実際のところ、65歳以上で2000万円貯められている世帯はどのくらいあるのでしょうか。300万円貯められていない世帯の割合はどうでしょうか。今回は、家計調査報告のデータをもとに、平均いくら貯蓄しているのかを紹介します。
貯蓄の平均はいくらなの?
総務省統計局がまとめた「家計調査報告(貯蓄・負債編)/2021年(令和3年)」によると、2人以上の世帯の1世帯当たり貯蓄現在高(貯蓄額)は、次のようになっています。
●2人以上の世帯の貯蓄額
総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)/2021年(令和3年)」より
貯蓄額の平均値(すべてのデータを足し合わせて、データの個数で割って得られる値)は、1880万円となっています。前年と比較すると89万円増加しており、3年連続で増加となっています。
「平均1880万円」というととても高額に思われるかもしれませんが、平均値は一部の大金持ちによって引き上げられてしまう傾向があります。上のグラフでも「4000万円以上」が12.8%、「3000万円〜4000万円」が6.7%もいます。実際、平均値を下回っている世帯は67.6%と、全体の3分の2を占めているのです。
そこで、平均値と合わせて中央値も見てみましょう。中央値は、データを大きさの順に並べたとき、全体の中央にくる値です。
2人以上の世帯の貯蓄額の中央値は1104万円となっています。さらに、「貯蓄ゼロ」の世帯も含めた中央値になると、1026万円となります。平均値とはずいぶん違うことがわかります。
65歳以上の世帯では貯蓄額はどれくらい?
では、65歳以上の世帯で貯蓄額の平均値と中央値をチェックしてみましょう。
●世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄額
総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)/2021年(令和3年)」より
世帯主が65歳以上の世帯の場合、貯蓄額の平均値は2376万円、中央値は1588万円です。
貯蓄額が2000万円以上の世帯は全体の41.3%を占めており、先に紹介した全世帯の平均値・中央値よりも貯蓄額が多くなっています。「4000万円以上」が17.7%、「3000万円〜4000万円」が9.2%と、貯蓄額が多い人の割合も増えています。
しかし、65歳以上であっても、お金を貯められていない世帯もあります。グラフからは、
・100万円未満:8.3%
・100万円〜200万円:3.3%
・200万円〜300万円:3.2%
と、貯蓄額が300万円未満である世帯の割合は14.8%を占めていることもわかります。
結局、定年後・老後のためにいくら貯蓄しておけばいいの?
貯蓄額の平均値や中央値を見て、焦りを感じた方もあるのではないでしょうか。しかし定年後、老後のためにいくら貯蓄しておけばいいかは、世帯によって異なります。
冒頭でふれた「老後2000万円問題」は、総務省がまとめた2017年の「家計調査年報」で収入と支出の平均データを基に計算が行われています。2020年のデータで同じように計算をすると、老後の不足額は50万円程度となっていることをご存知でしょうか。
世帯によって収入と支出の状況は様々です。65歳以上となっても働き続けることを選択する方も多くなっていますし、全ての方が海外旅行に毎月のようにいくわけではありません。つまり、貯蓄残高が平均値や中央値を下回っていても、必ずしも老後の生活に窮してしまうというわけではなく、世帯ごとに状況は変わるのです。仮に65歳時点で貯蓄が300万円なかったとしても、65歳以降も働き続けて収入を得たり、年金を繰り下げてもらえる金額を増やしたりすることで、十分に生活していくだけのお金を用意できるでしょう。
ですから、貯蓄額の平均データに振り回されるのではなく、
「我が家の場合、どのような老後生活を送るのか」
「そのためには、いくら老後のために貯蓄しておく必要があるか」
「どれくらいの期間をかけて貯蓄の準備を行っていくのか」
を考えてみるとよいでしょう。
貯蓄に着手するのが早ければ早いほど、時間が大きな味方になってくれます。
まとめ
65歳以上で2000万円貯められている世帯、300万円も貯められていない世帯の割合を紹介してきました。もちろん、貯蓄額は多いに越したことはありません。しかし貯蓄額の平均のデータを見て、「我が家は貯蓄額の平均値・中央値を下回っている」と慌てる必要はないのです。貯蓄額の平均値や中央値はあくまでも参考です。
冷静に「我が家の場合は老後に備えてどのような準備が必要なのか」「貯蓄がいくら必要なのか」、家族と話し合いの機会をもってみてはいかがでしょうか。
【関連記事もチェック】
・60歳からの国民年金と厚生年金、1年間保険料を払うと年金はいくら増えるのか
・お金持ちがする節約・しない節約ベスト3
・円安でも株安でもS&P500への積立投資を続けるべきか【Money&You TV】
・退職後に訪れる「3つの支払い」放置で起こり得る最悪の事態
・厚生年金を月10万円もらえていない人はけっこう多い
キムラミキ 株式会社ラフデッサン 代表取締役
AFP・社会福祉士・宅地建物取引士。外資系生命保険会社、マンションディベロッパーの営業を経て独立。現在は、就労移行支援事業所Fine米子オフィス(うつや発達障がいのある方の就労サポート施設)の運営に携わり、経済的自立をしたいと考える方のサポーターとして活動中。得意分野はライフプラン、キャリアプラン、生命保険、不動産。BSS山陰放送ラジオパーソナリティ歴10年以上の顔も持つ。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう