22/04/18
「年金だけでは赤字」なのに老後資金を用意していない人は多い
2019年の「老後資金2000万円不足問題」では、国民年金・厚生年金といった公的年金だけでは老後2000万円程度不足することが大きな話題になりました。「老後は公的年金が支給されるけど、それだけで大丈夫かな…」など不安な気持ちを抱えた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
ただ、「年金だけでは生活できない」と考えている人が多い一方で、老後資金を用意していない人もまた多いようです。今回は、老後資金についての調査結果をもとに、年金以外の老後資金について考えてみましょう。
年金についての意識調査と老後資金確保について
株式会社エイチームフィナジーが全国の10~50代の男女525名を対象に行った「老後の資金計画と年金受給改正法に関する意識調査」では、必要な老後資金の金額を把握しているか、受け取る予定の年金額を把握しているかなど、老後資金や年金に関する調査をしています。
同調査の「あなたは年金のみで老後の生活をまかなえると考えていますか?」という質問に対しては、76.4%の方が「年金のみではまかなえないと考えている」と回答しています。
●年金のみで老後の生活をまかなえる?
エイチームフィナジーの調査結果より
多くの方が、将来受け取る年金額に不安を感じていることがわかります。冒頭でも申し上げた2019年の「老後資金2000万円不足問題」を意識されているのかもしれません。
一方で、「年金以外の老後資金を確保するために、あなたが行っている工夫はありますか?」という質問に対して、「特にない」と答えた方が38.7%という結果になりました。
●老後資金確保のための工夫は?
株式会社エイチームフィナジーのアンケート結果から抜粋
老後資金は、漠然と「年金だけでは足りない」という意識があるものの、約4割の人は老後資金確保の行動ができていないことがわかります。
残り約6割の方々は老後資金を準備していますが、準備の方法の割合(複数回答)をみてみると「積立貯金」が35.6%と一番多くなっていることがわかります。
積立貯金をしている方々は、とりあえず老後資金準備として何かしなくてはと考え、積立を始めることにされたように感じます。実際、老後になってから、お金がないと慌てても始まりません。そうならないための行動として、申し込んだ当月、もしくは次月からすぐにお金を貯めはじめることができる積立貯金をするのはとても理にかなっていると思います。給料日の翌日などに自動で積立できるように設定しておけば、手間なく強制的にお金が貯められて便利です。使ってしまうことを防ぐためにも、他の貯蓄と混じらないよう区分し確保しましょう。
もし、現段階で「老後資金をまったく用意していない…何から始めようか?」と悩んでいるようであれば、まずは積立貯金から始めてみてはどうでしょう。
老後資金を増やすつみたてNISAやiDeCoを活用しよう
老後資金の準備に、積立を活用するというのは、心がけとしては大変素晴らしいことです。特に、年齢が20~30代などと若いほど、年金を受け取り始める65歳まで間があります。コツコツ積立を継続すれば、年金生活が始まるときまでに、まとまった老後資金が準備できる場合もあるでしょう。
しかし、今のご時世、普通預金や定期預金の利率が低いことを考えると、積立貯金だけで準備するのは効率的とはいえません。お金を効率的に増やすには、つみたてNISAやiDeCoなどの制度を活用するのが得策です。節税しながら資産運用ができるので、お金を堅実に増やせるでしょう。
●つみたてNISA(ニーサ・少額投資非課税制度)
つみたてNISAは、投資信託などで得た配当金や分配金、売却益などに対して、通常であればかかるはずの税金(20.315%)がかからなくなる制度。毎年40万円までの投資の利益にかかる税金を最長20年間非課税にできます。
たとえば、10万円の利益が出た場合、通常であれば10万円の約20%となる2万円ほどが税金で差引かれ、実際の受け取りは、残りの約8万円となります。しかし、つみたてNISAはそのような税金がかかりません。利益の10万円は、そのまま受け取ることができます。大変おトクな制度といえます。
つみたてNISAで購入する商品は、国が定めた基準を満たした投資信託・ETF(上場投資信託)のみ。いずれも手数料が長く、長期間かけてお金が増やせると見込まれる商品が揃っています。
つみたてNISAの資産は、途中でお金が必要になったらいつでも自由に引き出せます。老後資金の準備としても良いですし、それ以外の必要なコトにも活用できます。
●iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)
iDeCoは、毎月一定の金額を積み立て、あらかじめ用意された積立・保険・投資信託などの金融商品で自ら運用する制度です。そして、運用の成果を原則60歳以降に一時金または年金で受け取ります。iDeCoの積立額は月額5000円から。上限は加入者の職業で違いがあります。
iDeCoの最大の特徴は、拠出時、運用時、受取時に税制優遇が受けられることです。具体的には、次のとおりです。
・拠出時
毎年拠出した積立金はすべて所得控除の対象になるため、所得税や住民税を安くすることができます。
・運用時
iDeCoの運用で得た利息、投資での利益には税金がかかりません。
・受取時
一時金でまとめて受け取るときは退職所得控除、年金で分割で受け取るときは公的年金等控除の対象になり、所得税を抑えることができます。
このようにiDeCoは、老後資金を合理的に準備するには、うってつけの方法といえます。原則60歳まで引き出せませんが、老後資金を確実に用意するためには好都合でしょう。
まとめ
調査結果より、7割以上の方が「年金のみで老後の生活はまかなえない」という不安を抱えている一方で、4割近くの方が老後資金確保の行動を起こしていないことがわかりました。もしまだお金を貯めていないのであれば、まずお手軽な積立貯金で、老後資金を準備することから始めてみてはどうでしょう。そして次の段階で、つみたてNISAやiDeCoなどを活用し、お金を効率よく準備していくとよいでしょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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