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22/04/04

相続・税金・年金

「どうせ長生きしないから」年金保険料を10年しか納めなかった人の末路

「どうせ長生きしないから」年金保険料を10年しか納めなかった人の末路

「年金は損だから払っても意味がない」という話を耳にします。また、「将来年金をもらえないかもしれない」と思っている人も多くいます。しかし、本当にそうでしょうか。年金は若い世代が高齢者を支える制度なので、貯蓄とは違います。制度を知らずに、年金保険料を「受給資格期間の10年だけ納めればいい」と勘違いしていると、残念な結末になってしまいます。年金の基本的なしくみを押さえ、損をしない知識を身につけましょう。

国民年金のしくみと実際の納付率

日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人は、職業や収入に関わらず、国民年金に加入することが義務づけられています。

国民年金の加入者を「被保険者」といいますが、職業によって3つに分かれています。自営業や学生、無職の人などは第1号被保険者、会社員や公務員、私立学校の教職員などは第2号被保険者、会社員や公務員などに扶養されている配偶者は第3号被保険者です。

そのうち、会社員や公務員、私立学校の教職員などは厚生年金に加入します。「年金は2階建て」と呼ばれることがありますが、厚生年金の制度に加入することで、国民年金と厚生年金の2つの年金をもらえることになります。

また、国民年金では「未納率が4割」という情報も出回っていますが、実際は会社員や公務員という職業の人は、年金保険料は給料から毎月天引きされていますから、未納ということは制度上ありえません。未納の可能性があるのは、第1号被保険者のみです。厚生労働省の「令和2年度の国民年金加入・保険料納付状況」によれば、公的年金加入者6740万人のうち未納者は115万人なので、本当の数字は1.7%の人が未納だということになります。

もし年金保険料を滞納するとどうなるのか

老齢基礎年金(国民年金)を受け取るために必要な保険料の納付期間は10年です。以前は25年でしたが、年金を受け取れる人を増やすために、2017年8月から10年に短縮されています。しかし、年金は最低の納付期間を満たせばよいというものではありません。年金保険料を納めるのは、任意ではなく義務なので、税金と同じ性格のものです。

保険料を納めない場合には、国民年金未納保険料納付勧奨通知書(催告状)が送られてきます。未納期間が続き催告を無視していると、延滞金がかかってきたり、財産差し押さえがあったりと、国が保険料を強制的に徴収する事態に発展してしまいます。

そればかりか年金保険料を滞納すると、遺族年金や障害年金を受け取れない場合があります。たとえば国民年金の障害年金を受け取るためには、

・加入から初診日(病気や事故にあった日)の前々月までのうち、3分の2以上が保険料を納めていた期間(保険料を免除されていた期間を含む)であること
・初診日の前々月までの1年間に保険料の滞納がないこと(初診日が2026年(令和8年)4月1日より前の場合)

という要件のどちらかを満たさなければなりません。事故に遭った場合には事故の前日の状態を見るので、事故に遭ってから保険料を納付しても間に合いません。
障害者になって、本当に国の援助が必要なときに「無年金」になるのは大変です。年金は年をとったときばかりではなく、障害者になったときや、死亡したときにも給付があることを忘れないでおきましょう。

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10年保険料を納めたから老後は大丈夫?

10年間年金保険料を納めたからといっても、国民年金を満額もらえるわけではありません。年金額は40年加入した満額の人で月額6万4816円、年額77万7800円(2022年度)です。保険料を納めない未納期間があると減額されます。たとえば10年間だけの保険料納付だとすると、年金額は満額の4分の1にしかなりません。月額にすると1万6000円ほど、年額では20万円にも届きません。これから、健康保険料、介護保険料を差し引くと、手元には1万円残るかどうかわかりません。

「人生100年時代」と呼ばれているこの時代に、「どうせ長生きしないから」と構えて、万が一100歳を超えて生きていたらどうなるでしょう。自助努力だけで十分な資産形成を行うには限りがあります。年金はもらい始めると、生きている間はもらえます。周囲に迷惑をかけず経済的に自立して老後を過ごしたいと思うのなら、年金は老後の生活を支える基盤になります。

年金保険料が支払えない場合の制度がある

年金保険料が納められない場合には、免除や納付猶予の制度があります。免除は、世帯の所得が一定以下のときに承認されれば、保険料の一部や全部を納めなくてもよい制度です。納付猶予は、50歳未満の人で本人と配偶者の所得が低いときに、申請して認められると保険料の納付が猶予される制度です。このほか学生納付特例制度や産前産後期間が免除される特例があります。

保険料を未納にした期間は年金を受け取るための加入期間に入りません。一方、免除・納付特例・学生納付特例・産前産後の保険料免除は、加入期間になります。もちろん老後の年金だけではなく、障害年金や遺族年金を受け取るための加入期間にもなります。保険料を払うのが難しいときには、未納期間にしないため、免除や猶予などの制度を利用しましょう。

また国民年金は、支払った保険料以外に2分の1を税金で賄っています。自分の資金だけで運用する金融商品にくらべると有利になります。年金は当てにならないから保険料を納付しないでおくことは、将来自分が困ることになることを重々考えておくべきです。

池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®

証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー

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