22/03/22
国民年金の絶対やってはいけない7つのこと
日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人は、国民年金に加入することが義務づけられています。私たちの生活を支えてくれる大事な「年金」です。それなのに、加入しなかったり、必要な手続きを怠ったりする人もいます。その結果、老齢年金を受け取れなくなるばかりか、いざというときの障害年金や遺族年金までも受け取れなくなるのです。そんな状況は避けたいですよね。
そこで今回は、国民年金の決してやってはいけないことを7つご紹介します。
国民年金の「決してやってはいけない」こと①:20歳のとき、国民年金の加入手続きをしない
20歳になった人には、日本年金機構から「国民年金加入のお知らせ」の封筒が届きます。この中には、「国民年金の加入と保険料のご案内」「国民年金保険料納付案内書」「国民年金保険料納付書」「保険料の免除・納付猶予制度と学生納付特例制度の申請書」「返信用封筒」が同封されています。
このお知らせが届いたら、同封されている納付書を使って保険料を納めます。このとき、学生で納付が難しいときは、「学生納付特例制度」の手続きとして同封の申請書を返送しましょう。また、学生でないが納付が困難な場合は、「保険料の免除・納付猶予制度」の申請書を返送します。
しかし、何の手続きもせず、国民年金保険料を支払わないでいると、将来老齢年金を受け取れなくなるばかりか、病気やケガで障害が残ったときに受け取れる障害年金、あるいは万が一死亡したときに残された家族が受け取れる遺族年金を受給できなくなってしまいます。生活を支える大事な国民年金です。20歳になったら保険料を納め、納付が難しいときは、必要な手続きを行いましょう。
国民年金の「決してやってはいけない」こと②:国民年金保険料を払えないのに免除や猶予の手続きをしない
国民年金保険料を支払いたくても、経済的に困窮して納付できない場合もあるでしょう。そんな場合にそなえて、国民年金には「免除制度」と「納付猶予制度」があります。
国民年金保険料の免除制度とは、失業したり、所得が一定以下になったりした場合、申請して承認されると、保険料が免除となる制度です。全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除の4種類があり、所得の状況に応じて免除割合が決まります。免除制度を利用した期間は老齢基礎年金の受給資格期間に含まれ、受け取れる年金額は免除割合によって減額されます。ただし、10年以内であれば追納できるので、年金額を増やすことも可能です。
納付猶予制度は、生活に困窮して国民年金保険料が支払えなくなった場合に申請して承認されれば、保険料の納付が猶予される制度です。20歳以上50歳未満の人が利用できます。納付猶予制度を利用すると、老齢基礎年金の受給資格期間には含まれますが、猶予を受けた期間分、年金額が減額となります。
国民年金保険料を支払えなくなったとしても、このように救済してくれる制度があります。それにもかかわらず、未納のまま放置していると、将来老齢年金が受け取れなくなったり、障害年金や遺族年金まで受け取れなくなったりするのです。保険料を支払えなくなったら、必ず免除か猶予の申請をしましょう。また、免除・納付猶予制度の利用者は10年以内であれば保険料の追納が可能です。もし経済的に余裕が出てきたら、追納されることをおすすめします。
国民年金の「決してやってはいけない」こと③:学生納付特例制度を利用した期間の保険料を追納しない
20歳になると国民年金に加入しますが、そのとき大学や専門学校に在学中の人も少なくありません。そのため、国民年金保険料を納めるのが難しい学生もいます。そんな学生のために、国民年金には「学生納付特例制度」があります。
この制度は、申請をすれば、在学中は保険料の納付が猶予されるというもの。本人の所得が「128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等(2021年度からの場合)」であれば利用できます。上でも紹介したとおり、20歳のときに日本年金機構から送られてくる国民年金加入のお知らせに申請書が同封されています。また、多くの大学では学校でも手続きが可能です。
しかし、学生納付特例制度では注意したい点があります。それは、納付猶予を受けた期間分の保険料を追納しないと、将来受け取れる老齢基礎年金が減額となってしまう点です。学生納付特例制度を利用した場合、老齢基礎年金の受給資格期間(10年以上)には含まれます。けれども、年金額には反映されないのです。国民年金保険料は、学生納付特例制度を利用した場合は10年以内であれば追納できるため、就職するなどして収入を得られるようになったら、追納することをおすすめします。
もし追納しなければ、65歳になってから満額の老齢基礎年金が受け取れなくなるかもしれないことを頭に入れておきましょう。
国民年金の「決してやってはいけない」こと④:ねんきん定期便を見ない
毎年誕生月になると、日本年金機構から「ねんきん定期便」が郵送で届きます。また、ネットでの確認でよい人は「ねんきんネット」で郵送停止の登録ができ、ネット上でねんきん定期便を確認することもできます。
このねんきん定期便には、年金の加入状況やこれまでの年金加入期間に加え、50歳未満の場合は加入実績に応じた年金額、50歳以上の場合は老齢年金の見込額が記載されています。
ねんきん定期便を確認することは、とても大事なことです。なぜなら、記載内容に間違いや漏れがあった場合、それを放置していると、もらえるはずの年金がもらえなくなるかもしれないからです。また、年金の見込額を知ることは、将来の生活設計をするのにとても役立ちます。年金見込額を確認して生活費が足りないようなら、早めに貯蓄を増やすための施策を考えて実行することができるからです。
ねんきん定期便は、将来受け取る老齢年金に漏れや間違いがないかを確認するため、そして、将来のための貯蓄計画を立てるために欠かせないものです。手元に届いたら、必ず記載内容を確認しましょう。
国民年金の「決してやってはいけない」こと⑤:会社を退職したのに国民年金への切り替えをしない
会社員は国民年金の第2号被保険者ですが、60歳未満で会社を退職し、その翌日からしばらくは再就職しない、あるいは、自営業者やフリーランスになる場合は、第1号被保険者への切り替えが必要です。また、退職後に配偶者の扶養に入るときも第3号被保険者への切り替えをしなければなりません。切り替え手続きは、退職日の翌日から14日以内に、市区町村の国民年金担当窓口にて行います。その際は、年金手帳または基礎年金番号通知書を持参しましょう。第3号被保険者への切り替え手続きは、配偶者の勤務先を通して行います。
また、第2号被保険者に扶養されていた配偶者も、第3号被保険者から第1号被保険者への切り替え手続きを忘れてはいけません。第2号被保険者が退職して第1号被保険者になると、扶養されている配偶者も同じく第1号被保険者になるのです。このとき手続きを忘れると年金記録に空白期間ができて老齢基礎年金が減ることになるので注意しましょう。ただ、配偶者が再就職した場合は、再び第3号被保険者となります。この場合は、配偶者の勤務先を通して手続きを行います。
退職後の切り替え手続きを忘れると、年金記録に空白期間ができてしまいます。空白期間に該当する分、将来受け取る老齢基礎年金が減額されるので注意が必要です。
国民年金の「決してやってはいけない」こと⑥:そもそも国民年金保険料を支払わない
厚生労働省の調べによると、2020年度における国民年金保険料の現年度納付率は71.5%でした。国民年金保険料を自分で支払う必要のある第1号被保険者のうち、115万人が国民年金保険料を未納にしています。
国民年金保険料を支払わない理由はさまざまです。多くは経済的に支払いが困難という理由ですが、中には、「将来年金がもらないかもしれないから、払っても意味がない」「個人年金保険に加入しているから」「十分に貯蓄しているから」といった理由から未納になっている人も少なからずいるようです。
しかし、注意したいのは、国民年金は老齢年金をもらうために加入しているわけではないということ。老齢年金だけでなく、病気やケガをして身体に障害が残った場合には障害年金、自分に万が一のことがあった場合には残った家族の生活を支えてくれる遺族年金を受け取ることもできるのです。
国民年金の加入は国民の義務です。それなのに、保険料を未納のままにしていると、老齢年金や障害年金、遺族年金が受け取れなくなるばかりか、滞納が続けば財産を差し押さえられてしまうかもしれません。
国民年金の「決してやってはいけない」こと⑦:たびたび納付催告の通知を受けているのにもかかわらず、保険料を滞納し続ける
国民年金の第1号被保険者には国民年金保険料を払い込む義務があります。しかし、納期限を過ぎても払わずにいると、日本年金機構から「国民年金未納保険料納付勧奨通知書(催告状)」というハガキが届きます。それでも未納のままにしていると、次に「特別催告状」が届きます。これを無視すると、次に「最終催告状」が届きます。これには納付期限が記載されており、それでもなお滞納を続けていると「督促状」が届きます。これには指定期限が記載されており、これを過ぎると延滞金が課せられるようになります。ここで滞納している保険料を払い込めばいいのですが、これを無視すると、次に「差押予告通知書」が届きます。その後、財産調査が行われ、財産の差押えが実施されます。対象となる財産は、給与の一定額、預貯金、有価証券、不動産、自動車などの動産などです。
国民年金の加入と保険料の納付は国民の義務です。自営業者やフリーランスなど第1号被保険者は納期限までに保険料を納付しなければなりません。その義務を怠り、保険料を滞納し続け、度重なる催告や督促を無視していると、最終的には財産が差し押さえられてしまうのです。保険料は未納のまま放置しないようにしましょう。また、経済的理由などで納付できない場合は免除や納付猶予などの制度が設けられています。納付できないときは必ず手続きをしましょう。
まとめ
今回は、国民年金に関して絶対やってはいけない7つのことをご紹介しました。国民年金に加入し保険料を納付すること、必要なときは切り替えの手続きをすること、保険料の納付が厳しいときは放置せず免除や納付猶予の手続きをすること、毎年送られてくるねんきん定期便は必ず確認することを忘れないようにしましょう。
また、日本年金機構のサイトでは、国民年金に関わる各種パンフレットをダウンロードできます。国民年金がどのように私たちの暮らしに関わっているのかを知るため、年金に関する制度を知るためにも、一度目を通されることをおすすめします。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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