22/03/09
2022年4月から廃止になる「年金手帳」、今後の年金管理はどうなる?
これまで国民年金・厚生年金の加入者に発行されてきた年金手帳。これが2022年(令和4年)4月から廃止されることになりました。今後は年金手帳に代わるものはあるのでしょうか?また、すでに持っている年金手帳はどうすればいいのでしょうか?今回は、年金手帳が廃止になる理由と今後の管理のしかたについて解説します。
情報の一元化で廃止される年金手帳
これまでは、20歳になると誰もが国民年金の被保険者となり、日本年金機構から年金手帳が送られていました。
この年金手帳には、次のような役割があります。
・基礎年金番号の本人への通知
(1996年12月までは国民年金・厚生年金の記号番号の本人への通知)
・国民年金の種別の記録(第1号・第3号)
・厚生年金保険の加入・脱退の記録
また、会社を退職したときや、結婚して名字や住所が変わったときは役所へ届け出ますが、その際、年金手帳にも国民年金の種別や名前の変更が記録されます。
しかし、2015年10月から、1人ひとりにマイナンバー(個人番号)が交付されるようになりました。マイナンバーとは、社会保障、税、災害対策の分野で、個人を迅速に特定して個人情報を確認するために利用されるものです。マイナンバーによって行政手続きが簡素化し、役所での行政手続が効率的に行えるようになったのです。
さらに個人でも、マイナンバーと紐づけされたポータルサイト「マイナポータル」によって、行政手続きの検索やオンライン申請ができたり、税情報や世帯情報、予防接種の履歴などが確認できたりするようになりました。
こうして、マイナンバーによって個人情報がシステム管理されるようになったことで、年金手帳の必要性がなくなってしまったのです。
そこで、2020年6月5日に、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が公布されました。その中で、2022年4月から年金手帳が廃止されることになったのです。
今後、年金手帳の代わりになるものはあるの?
現在の年金制度が持つ機能を強化するための一環として、2022年4月から年金手帳がなくなるのですが、その代わりになるものとして「基礎年金番号通知書」が交付されます。
●基礎年金番号通知書とは?
基礎年金番号通知書とは、年金手帳の代わりとなって国民年金や厚生年金の被保険者であることを証明するものです。
2022年4月1日以降に20歳となり、新たに国民年金に加入する人には日本年金機構から「基礎年金番号通知書」が送付されます。また、20歳前から厚生年金に加入して働いている人に対しては、勤務先を通じて交付されます。
ちなみに基礎年金番号とは、国民年金・厚生年金などすべての公的年金制度に共通して使用する番号で、1人につき1つの番号を持っています。基礎年金番号は、記号4桁・一連番号6桁、計10桁(○○○○‐△△△△△△)となっています。この基礎年金番号があることで、公的年金の請求や年金に関する相談への対応が迅速に行われるのです。
持っている年金手帳はどうすればいい?
では、すでに年金手帳を持っている人はどうなるのでしょうか?
●引き続き利用できる年金手帳
2022年4月1日以降、国民年金や厚生年金に加入する人には基礎年金番号通知書が交付されますが、すでに年金手帳や年金証書を持っている人に対しては基礎年金番号通知書は交付されません。現在持っている年金手帳は、基礎年金番号を明らかにする書類が必要になったときに、そのまま利用できます。年金手帳の廃止後もそのまま保管しておきましょう。
●年金手帳を紛失した際に交付されるものは?
すでに持っている年金手帳を紛失した場合は、再交付されません。代わりに、基礎年金番号通知書が交付されます。
もし年金手帳を紛失した場合、手続き先は加入する国民年金の種類により異なります。
・学生や自営業者など第1号被保険者:市区町村の国民年金担当窓口か、年金事務所へ
・会社員や公務員の第2号被保険者:勤務先へ
・会社員の配偶者である第3号被保険者:配偶者の勤務先へ
・60歳以上の年金制度に加入していない人:最寄りの年金事務所へ
基礎年金番号通知書を受け取ったら、今度はなくさないように保管しておきましょう。
●基礎年金番号が確認できる書類
年金手帳を紛失したときは基礎年金番号通知書の交付手続きをすればよいのですが、基礎年金番号の確認が必要になったときは、次の書類でも確認できます。
・国民年金保険料の口座振替額通知書
・国民年金保険料の納付書、領収書
・年金証書
・各種通知書等(年金額改定通知書、年金振込通知書等)
・平成28年度の「ねんきん定期便」
会社員の場合は、勤務先の総務関連部署でも確認できます。
まとめ
2022年4月1日以降は年金手帳が廃止され、代わって基礎年金番号通知書が交付されるようになります。ただし、基礎年金番号通知書が交付されるのは、2022年4月以降、新たに国民年金や厚生年金に加入する人で、すでに年金手帳を持っている人には交付されません。そのため、今後も年金手帳は利用できるので、大切に保管しておきましょう。もし年金手帳を紛失した場合は基礎年金番号通知書を交付してもらえるので、その際は早めに手続きをしましょう。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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