22/04/02
「複利」が株主優待や配当金より大切なわけ
株式投資をするとき、株主優待や配当金目当てで投資を行う方も多いのではないでしょうか? しかし、株主優待や配当金よりも、より大切にしてほしいのは、複利効果です。長期的に資産を増やすためには、複利効果を生かせる企業に投資することが大切です。その理由を解説します。
株主優待では資産を増やすのは難しい
株式投資をはじめようと考えている方のなかには、株主優待に魅力を感じている方も多いでしょう。
たとえば、すかいらーくホールディングス(3197)の場合、2022年3月21日時点の最低購入額は15万5200円です。100株保有していれば、毎年6月末・12月末時点の株主に対して、自社のレストランで利用できる2000円分の株主優待カードが贈られます。
また、ライオン(4912)の場合、2022年3月21日時点の最低購入額は14万2700円です。こちらは、100株保有していれば、毎年12月末時点の株主にハミガキや歯ブラシ、洗剤といった自社製品が贈られます。
もちろん、食事ができたり、モノがもらえたりするのはうれしいでしょう。しかし、株主優待は企業が株主に対して贈るプレゼントに過ぎません。せっかく株主優待をもらえても、権利落ち日(株主としての権利が確定した翌営業日)に株価が大きく下がってしまい、損してしまうようでは元も子もありません。
また、受け取った優待品は消費するものなので、資産として残りません。お金であれば、再投資することで複利の効果が得られますが、受け取った優待品は再び投資に回せません。
ですから、株主優待では資産を大きく増やすのは難しいでしょう。
配当金が多ければいいわけではない
株主優待とともに魅力を感じやすいのが、配当金です。配当金とは、利益を得た企業が株主に対して配る現金です。高い配当金を出している企業への投資は根強い人気があります。
配当金の利回り(配当利回り)は企業によって異なります。日本経済新聞によると、東証1部全銘柄の予想平均配当利回り(2022年3月18日時点)は2.34%でした。そのため、高い配当を出す企業の株式を購入し、受け取った配当金を再び投資に回せば資産を増やせると考える方もいるかもしれません。
しかし、配当利回りの高い企業の株式が必ずいいとは限りません。
配当利回り(%)の計算式は、「1株あたりの年間配当金÷現在の株価×100」です。たとえば、現在の株価が1000円で、年間配当金が年20円なら、配当利回りは2%です。しかし、株価がもし半分の500円になり、年間配当金がそのままならば、配当利回りは4%に上昇します。株価が下がっているということは、業績が悪化している可能性もあります。
さらに、利益が出ていないにもかかわらず、自社の資産から配当金を出す「タコ足配当」を行う会社もあります。長期間タコ足配当を行った場合、自社の資産を大きく減らします。そうなれば、将来的な成長はなく、業績が悪化し続ける恐れもあります。そうした企業に投資をしても、逆に損失を被ってしまうでしょう。
事業投資に積極的な企業の複利効果は大きい
資産を増やしたいのであれば、配当金よりも事業投資などを行い、企業価値を上げることを重視している企業を選ぶべきです。
そもそも、企業が事業で得た利益の使い道には、大きく分けて「配当金を支払う」「自社の事業拡大に利用する」「お金のまま保有する」の3つがあります。どれを選ぶかは企業しだいです。
新興企業などの場合、事業拡大を行うために多くのお金が必要だからと、配当金を出さない場合があります。しかし、それが悪いわけではありません。なぜなら、新規事業や製品開発などの事業投資にお金を使い業績がアップすれば、配当金よりも多くの利益を得られる可能性があるからです。
たとえば、毎年5%ずつ利益をあげる企業に100万円投資したとします。この利益を毎年配当金として支払うと、10年後に受け取れる配当金の合計は50万円になります。しかし、この5%の利益を配当金に回さずに再投資しつづけると、株主が保有する価値は複利効果で163万円ほどに増加する計算です。つまり、配当金でお金を得るよりも複利効果が高いというわけです。
もちろん、必ずしも業績が株価に反映されるわけではありません。しかし、将来性を評価されて株価が大きく上昇すれば、株主にも配当以上の利益が還元されることになるでしょう。
複利効果の高い会社に投資しよう
株式投資で資産を増やしたい場合、株主優待や配当金よりも優先すべきなのは複利効果です。なかでも複利効果が高いのは、企業価値を上げるために、利益を事業投資に投入している企業の株式を購入することです。企業価値が高まり、株価が上昇すれば、結果的に多くの利益を得る期待ができます。目先の株主優待や配当金に惑わされず、将来性の高い分野への投資を積極的に行っている企業を探し出し、投資することが大切なのです。
【関連記事もチェック】
・ゆうちょ銀行の窓口で投資信託購入は損だらけ。今すぐネット注文すべき理由
・投資信託を他の証券会社に移すにはどうする? 移管のメリット、デメリット、注意点をプロが解説
・お小遣いを投資で増やす! 米国の「お金教育」アプリから学ぶ日本版お金教育の実践法
・「投資してみたい」子どもでも開設できる未成年口座、どんなことができる?
・お金のプロおすすめの貸付投資サービス「Funds」の魅力
小栗健吾 現役のFXトレーダー及びWEBライター
地方の大学を卒業後、会社員を経て、WEBライターとして活動中。FXや仮想通貨の取引経験(FXは8年以上)があり、現役トレーダーの目線で記事を多数執筆している。また、現在はFXだけでなく、「キャッシング」「副業」「節税」などマネー系の記事も多く執筆している。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう