20/08/21
電気・ガスの「セット割」が得とは言い切れないワケ
電気やガスといえば東京電力や東京ガスを思い浮かべる方も多いと思いますが、現在は「電力自由化」によって石油会社や通信業者といった他業種の会社も電気やガスの販売を行っています。各社様々なプランで攻勢を仕掛けており、顧客の囲い込み競争が激化しています。
特に目玉となるプランが、電気とガスのセット契約プラン。これは、「電気とガスを同じ会社で申し込むことにより割引価格で利用でき、全体的なコストを抑えられる」というものです。しかし、セット契約したことにより、かえって割高となってしまうこともあり、必ずしも得とは言い切れないのです。確かに、電気・ガスのセット割引は通常よりもお得なのですが、それが誰にでも当てはまるわけではないからです。
そこで今回は、東京電力・東京ガスの料金プランを参考に、果たしてセット契約したほうが金銭的にお得なのかを検証します。これから乗り換えを検討している方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
東京電力と東京ガスのセット割サービスとは?
東京電力と東京ガスは名前が似ているため、「同じ会社なの?」と思う方も多いですが、まったくの別会社です。2016年4月の電力自由化、2017年4月のガス自由化により、東京電力と東京ガスの両社で電気とガスの契約ができるようになりました。両社ともに電気とガスをセットで契約することで電気料金がお得になるセット割のサービスがあるので、しっかりと比較してお得な方を選びましょう。
東京電力は従来からある一般的なプラン、東京ガスの電気には使用量に応じた2種類のプランがあるので、以下の3つのプランでシミュレーションしてみます。それぞれのセット割の概要は以下の通りです。
【東京電力「ガスセット割」】
電気の「スタンダードS」プランとガスの「とくとくガスプラン」をセットで契約することで、毎月の電気料金から102円引きされます。
【東京ガス「ガス・電気セット割」】
東京ガスの「ガス・電気セット割」には、「ずっとも電気1S」と「ずっとも電気1」の2種類があります。
「ずっとも電気1S」は、毎月の電気料金の基本料金と電力量料金の合計額の0.5%が割引されます。
また、「ずっとも電気1」は毎月の電気料金の基本料金から275円(税込)引きされます。
東京電力「とくとくガスプラン」と東京ガス「ずっとも電気1」の割引額は一律ですが、「ずっとも電気1S」は電気料金に応じて変化するのが特徴です。
3つのプランで1人暮らし・夫婦のみ世帯・4人以上世帯の3つのパターンで試算をした結果、以下の表のようになりました。
※上記は、各社のシミュレーションに基づいて筆者が作成。
(燃費調整額及び再生可能エネルギー賦課金を含まず)
毎月の電気料金が8,000円を超えるかどうかが一つの判断基準に
パターン1では、東京電力にまとめたほうがお得、パターン2,3では東京ガスにまとめたほうがお得という結果となりました。
どちらも電気とガスをセットにすることで割引が受けられますが、東京ガスの「ずっとも電気1」は割引額が月額275円になることにあわせて、電力量が多くなるほど割安になる料金体系が適用されることが大きな要因です。
具体的には、東京ガスの「ずっとも電気1」にまとめると、パターン2では、292円安くなるのに対し、さらに電力消費量の多い世帯のパターン3では、2,445円と東京ガスにまとめるメリットがより大きくなっていくことが分かりました。
また、注意していただきたいのは東京ガスの「ずっとも電気1」プランは30A以上の契約電力の加入が条件となっており、消費電力が多い世帯にメリットがある反面、10A~30Aに収まっている家庭では乗り換えるメリットは小さくかえって負担が増えてしまうこともありえます(パターン1)。
電気使用量が少ない家庭向けプラン「ずっとも電気1S」の場合のセット割は電気代の合計額から「0.5%引き」と小幅になってしまうので切り替えず、東京電力にガスをまとめて102円割引を受けたほうがお得になります。どちらにまとめるかは毎月8,000円以上かどうかが一つの判断基準になるといえそうです。
セット割は必ずしもお得ではない
今契約している電気ガス会社でセット契約をするのではなく、別会社へ乗り換えたほうが安くなる場合もあります。電気もガスも自由化の流れを受け、東京ガスより安い電力会社もありますし、東京電力より安いガス会社もたくさんの中から選べるからです。セット割引は基本的に、電気の使用量が多いほどお得になるイメージです。
電気の使用量が少ない場合、電気とガスを個別に契約した方が安くなる場合があるため、1ヶ月の電気使用量が少ない方向けの割安なプランを展開している小売業者がないか、事前に調べてみることをおすすめします。また、電気の使用量が多い家庭でも地域によっては割安な小売業者のプランが使えることもあるので、まずは電気は電気、ガスはガスで一番安いところを探し、個々に契約することも視野にいれて比較検討しましょう。その2つを合計した上で、さきほどの電気・ガスセットプランの料金と最終比較するのがベストなやり方です。「セットだから、一番安いはず」と盲目的に信じ込まないことが大切です。
「電気の使用量」を中心に検討するのがポイント
電気にしろ、ガスにしろ、各家庭の使い方はそれぞれ異なりますので、あらゆる点から、事前のチェックは欠かせません。ですが、色々調べるうちについ面倒になってそのままにしてしまいがちですので、比較検討の際は、電気使用量を中心に乗換えを比較検討することを強くおすすめします。なぜなら、「家庭で使うエネルギーの割合はガスよりも電気の方が比重が高い」という前提があるからです。
オール電化でなければもちろんガスも使用しますが、ガスを使用するのはキッチンのコンロと給湯器がメインでしょう。一方で電気の利用は、テレビ・エアコン・冷蔵庫・照明・パソコンなど、使う場面がガスよりも圧倒的に多く、年間を通じた使用量も季節の変動が大きくなります。そのため、セットで契約するのであれば電気料金のプランを優先した方が得策なのです。結論としては、電気の使用量が少ない場合は別々の契約が、多い場合はガスとセットで契約した方がお得な場合がお得というケースが多いと思います。
まとめ
東京電力または東京ガスのどちらかに契約をまとめることで確かに通常よりいくらかはおトクになり、支払いを一本化できることで家計管理がしやすくなるなど便利になる点も増えるのは嬉しいポイントです。
しかしながら、それが最安の組み合わせというわけではないことにも注意が必要です。そもそもの電気料金やガス料金が高くては、せっかくのセット割引もあまり意味がありません。そのため、まずは基本的な使用料金が安い会社を選ぶことが大切です。
特に電気料金に関しては、各社さまざまな料金プランを準備しています。上記表はあくまで目安なので、お手元に電気とガスの検針票を準備して、ぜひ各電力会社のWebサイトからシミュレーションをおこなってみてください。ご家庭に合ったプランを検討するには、1年を通して、平均どのくらい電気料金を使っているのかを把握したうえで、料金プランを変えるとこれからどうなるか、しっかり試算しておきましょう。
自分は、セット契約のほうが向いているタイプなのか別個に契約したほうが安くなるタイプなのか確認し、そのうえで、電気とガスをまとめたセット割が一番お得ということになれば、納得して契約できますね。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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