22/02/22
公務員の定年は今後どうなる? 60歳以降の給与はどのくらいか
公務員の定年は、原則60歳となっています。具体的には、60歳に達した日以後における最初の3月31日が定年退職日になります。この定年年齢が、2023年度から段階的に引き上げられることをご存知でしょうか。今回は、公務員の定年の引き上げの概要と、60歳以降の給与についてご説明します。
公務員も定年年齢が引き上げ
高年齢雇用安定法の改正により、民間企業には、希望する方全員を65歳まで雇用することが義務付けられています。また、2021年4月からは70歳までの就業機会を確保することも企業の努力義務になりました。
一方、公務員の定年は冒頭でふれたように、国家公務員、地方公務員ともに原則60歳(地方公務員の定年は、国家公務員法に基づく国家公務員の定年を基準として、各地方公共団体において条例で定める)です。しかし2021年6月に成立した「国家公務員法等の一部を改正する法律」によって、この定年の年齢は2023年度(令和5年度)以降、下表のように段階的に引き上げられ、2031年度(令和13年度)には65歳になります。
●公務員の定年年齢引き上げ
人事院のウェブサイトより
公務員の60歳以降の給与はどうなるの?
定年年齢引き上げに伴い、公務員の60歳以降の給与についてどのように扱われるか不安な方もあるでしょう。人事院のウェブサイトによると、当分の間、公務員の60歳以降の給与は「その者に適用される俸給表の職務の級及び号俸に応じた額に7割を乗じて得た額とする」とされています。つまり、60歳直前の給与の7割程度の水準になるということです。
公務員ばかり優遇されている?
実際、民間企業の多くも60歳以降は給与が下がる傾向があります。
2020年3月に公表された「高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)」(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)では、民間企業にお勤めの方の60 歳直前の賃金と 61 歳時点の賃金との比較を行っています。それによると、平均的な水準の人で、60歳直前の賃金を100とすると、61歳時点の賃金は78.7に減少しています。
●61歳時点での賃金の指数(60歳直前の水準=100)
※賃金水準が「平均的な水準の人」のデータで作成
独立行政法人 労働政策研究・研修機構「高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)」より作成
しかし、上のデータにもありますが、実際のところは、業種、従業員規模などによっては収入が60 歳直前の6割程度、もしくはそれ以下に減少する方もあるようです。このような状況に対して、やはり公務員優遇ではないかと感じる方もいらっしゃるでしょう。
とはいえ、民間企業にお勤めの方で雇用保険の加入歴がある方は、「高年齢雇用継続給付」の支給を受けられる可能性があります。高年齢雇用継続給付は、60歳以降の賃金が一定未満になったときに受け取れる給付です。以下の条件を満たす方に支給されます。
【支給資格】
・雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある
・60歳以上65歳未満の雇用保険加入者
・60歳以降の賃金が60歳時点に比べて、75%未満に低下
【支給額】
筆者作成
一方で、公務員は雇用保険に加入していないため、60歳以降の給与水準が60歳直前の給与の7割程度の水準になるとはいえ、「高年齢雇用継続給付」の支給を受けることができません。そのため、一概に、今回の公務員の定年引き上げに伴う60歳以降の給与水準が「公務員優遇」とはいいきれないかもしれません。
まとめ
人生100年時代といわれる今日。定年後も仕事を続けている方が多いのは、「従来通りの考え方では生活が成り立たない」と考えている方が増えてきているからなのではないでしょうか。定年年齢の引き上げは、そう考える方にとって長く働ける機会を得られるチャンスでもあります。
定年年齢が引き上げられたからと言って、必ずしも定年年齢まで在籍する必要はありません。公務員、民間企業にお勤めの方、いずれにしても、セカンドライフをどのように過ごすのか、そのお金の準備をどうするのか、そのためにいつまで働くのか、ご家族で話し合いながら見通しを立てておくことが大切です。
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キムラミキ 株式会社ラフデッサン 代表取締役
AFP・社会福祉士・宅地建物取引士。外資系生命保険会社、マンションディベロッパーの営業を経て独立。現在は、就労移行支援事業所Fine米子オフィス(うつや発達障がいのある方の就労サポート施設)の運営に携わり、経済的自立をしたいと考える方のサポーターとして活動中。得意分野はライフプラン、キャリアプラン、生命保険、不動産。BSS山陰放送ラジオパーソナリティ歴10年以上の顔も持つ。
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