21/12/08
届け出すれば国や自治体からもらえるお金8選
国や自治体は、私たちの暮らしを支える給付金・助成金を用意しています。申請するだけでお金がもらえるありがたい制度も多いのですが、そもそもその存在を知らなければ申し込めませんし、お金ももらえません。そこで今回は、届け出でもらえるお金のなかから、ぜひ活用すべき有用なもの、意外なものをピックアップしてご紹介。使えるものはどんどん使いましょう!
申請すればもらえるお金1:傷病手当金
傷病手当金は、会社員や公務員といった健康保険の加入者が病気やケガで働けない場合に支給される給付金です。仕事ができずに収入が減った(なくなった)となれば、生活が成り立たなくなってしまいます。傷病手当金は、そうしたときの収入をある程度保障してくれます。
傷病手当金を受け取るには、以下の条件を満たす必要があります。
・業務外の病気やケガで働けないこと(業務中の病気やケガは労災になる)
・療養のために仕事を休むこと
・連続する3日間(待機期間)を含めて4日以上仕事を休んでいること
・給与の支払いがないこと(傷病手当金より少ない給与が支払われている場合は、差額が支払われる)
傷病手当金で受け取れる金額は、おおよそ給与の3分の2。たとえば、1日あたりの給与(厳密には、標準報酬月額を30で割った「標準報酬日額」)が1万円の人が30日間休んだとしたら、6666円×30日=約20万円が支給されます。
傷病手当金が受け取れる期間は、支給開始日から「最長」1年6ヶ月ですが、2022年より制度が改正され、「通算」1年6ヶ月受け取れるようになります。これによって、いったん復職してまた同じ病気やケガで休んだ場合にも、より柔軟に傷病手当金を受け取れるようになります。
申請すればもらえるお金2:医療費控除
医療費控除は、年間の医療費が10万円(所得200万円未満の人は所得の5%)を超えた場合に税金を取り戻すことができる制度。毎年2月中旬〜3月中旬の確定申告のときに自分で手続きを行います。
医療費の対象になるものには、医療機関で支払った自己負担分の医療費、薬局で支払った薬代、治療目的で購入した市販の薬の代金、通院に要した交通費などがあります。ただし、交通費といってもタクシーは基本的に認められません(どうしてもタクシーでないといけない事情があれば認められます)。
反対に、健康診断、美容整形、予防接種、リラックスのためのマッサージなど、治療と関係のない費用は医療費の対象になりません。
医療費控除で控除できる金額は、(医療費の総額−保険金や公的給付の補てん額)−10万円です(最大200万円)。たとえば、医療費の総額が30万円、保険金の補てん額が10万円だった場合、(30万円−10万円)−10万円=10万円となります。仮に所得税・住民税の税率がともに10%だとすれば、10万円×20%=2万円お得になります。
医療費控除で申告する医療費は、自分の分だけでなく、「生計を一にしている親族」、つまり家族などの分も合算することが可能。ですから、対象の方全員の領収書を保管しておいて、一番所得が多い人が確定申告しましょう。
申請すればもらえるお金3:セルフメディケーション税制
医療費控除を使うほどには医療費がかかっていない…という場合には、医療費控除の特例を使うことができます。セルフメディケーション税制と呼ばれています。当初2021年12月31日までの制度でしたが、2026年12月31日までに5年間延長されています。
セルフメディケーション税制では、所定の健康診断などを受けている方が、対象の市販薬(OTC医薬品)を年間1万2000円超購入した場合に所得控除ができます。
セルフメディケーション税制で控除できる金額は、年間の対象市販薬の購入額−1万2000円です(最大8万8000円)。たとえば、年間の対象市販薬の購入額が8万円だった場合、控除額は8万円−1万2000円=6万8000円となります。仮に所得税・住民税の税率がともに10%だとすれば、6万8000円×20%=1万3600円お得になります。
セルフメディケーション税制も、家族の分の薬代と合算できます。しかし、医療費控除とセルフメディケーション税制はどちらか片方しか利用できないので、よりお得なほうを利用しましょう。
申請すればもらえるお金4:教育訓練給付金
教育訓練給付金は、資格取得・スキルアップのために厚生労働大臣指定の教育訓練講座を受講し修了した場合に、その費用の一部が給付される制度です。
教育訓練給付金には、一般教育訓練給付金・特定一般教育訓練給付金・専門実践教育訓練給付金の3種類があります。どの給付金が受けられるかは受講する講座によって異なります。対象の教育訓練は約1万4000講座。より専門的な資格・講座ほど、給付金が多くなります。
・一般教育訓練給付金:受講費用の20%(上限10万円)を受講者に支給
・特定一般教育訓練給付金:受講費用の40%(上限20万円)を受講者に支給
・専門実践教育訓練給付金:最大で受講費用の70%(年間上限56万円・最長4年)を受講者に支給
教育訓練給付金を受けるには、雇用保険への加入期間が通算1年以上あることが必要(初めての場合)。2回目以降は、前回受講開始日以降に雇用保険の加入期間が3年以上あること、前回の支給決定日より3年以上経過している必要があります。
対象の講座はハローワークのインターネットサービスから検索できますので、興味のある資格・講座を検索して、受講してみてはいかがでしょうか。
申請すればもらえるお金5:加給年金・振替加算
加給年金は、厚生年金に20年以上加入している人が65歳になったときに65歳未満の配偶者や子どもを養っているときに加算される年金です。65歳未満の配偶者がいる場合は年39万500円(特別加算含む)、子どもがいる場合2人目までは1人年22万4700円、3人目以降は年7万4900円を受け取れます。
加給年金は配偶者が65歳になると打ち切られます。しかし、1966年(昭和41年)4月1日以前に生まれた方の場合は、振替加算という上乗せが受け取れます。金額は生年月日により異なります(なお、1966年4月2日以後に生まれた方は受け取れません)
加給年金や振替加算は、毎年の誕生日ごろに届く「ねんきん定期便」に記載されていません。ですので、まずは対象になるかを確認して、手続きをするといいでしょう。
自治体独自のこんな給付金・助成金も!
自治体によっては、他にもさまざまな給付金・助成金を用意している場合があります。ぜひお住まいの自治体に確認してみてください。
●申請すればもらえるお金6:出産祝い金
出産に際して受け取れる42万円の出産一時金はよく知られていますが、自治体によってはさらにお祝いのお金を助成してくれるケースも。広島県庄原市「出産祝金」では、同市に住所があり、3年以上在住する方を対象に、第1子・第2子に各10万円、第3子以降は25万円を給付してくれます。また。東京都渋谷区「ハッピーマザー出産助成金」では1人につき最大10万円(健康保険から付加給付がある場合はその金額を控除した金額)が受け取れます。
●申請すればもらえるお金7:住宅リフォームに関する助成
多くの自治体では、耐震工事、バリアフリー工事、断熱工事、長寿命化といった住居のリフォームに際して補助金を出しています。補助金の内容・金額はさまざまですが、住環境を整えやすくなるため、リフォームを検討している方はぜひ一度お住まいの市区町村に問い合わせてみるといいでしょう。
●申請すればもらえるお金8:生ごみ処理機の購入費用補助
意外なところでは、生ごみ処理機の購入費用まで補助が受けられます。生ごみ処理機はごみの減量化・資源化に役立つからです。東京都足立区では本体価格の半額(上限1万5000円)、東京都杉並区では本体価格の半額(上限2万円)の補助が受けられます。応募多数の場合は抽選になる場合もあります。
まとめ
今回紹介した8つのお金は、給付金・助成金のごく一部です。このほかにも給付金・助成金はたくさんありますし、お住まいの自治体独自のものもきっとあるはずです。ぜひどんな給付金・助成金があるのか自治体に確認して、使えるものはどんどん使っていきましょう!
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高山 一恵 ファイナンシャルプランナー
(株)Money&You取締役。一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。女性向けWebメディア『FP Cafe』『Mocha(モカ)』や登録者1万9000人超のYouTubeチャンネル『Money&YouTV』を運営すると同時に、全国で講演活動、執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『マンガと図解 定年前後のお金の教科書』(宝島社)、『11歳から親子で考えるお金の教科書』(日経BP)など書籍100冊、累計170万部超。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。X(旧Twitter)→@takayamakazue
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