21/10/27
故人の銀行口座が凍結されるタイミングはいつ? 口座凍結で慌てないために知っておくべきこと
亡くなった人の銀行口座は凍結され、お金が引き出せなくなることをご存じでしょうか?今回は、銀行口座が凍結されるタイミングやお金を引き出す方法について説明します。そのときが来ても慌てないよう、手続きの概要を把握しておきましょう。
口座が凍結される理由と凍結のタイミング
銀行口座の名義人が死亡すると、その口座は一切の入出金ができない状態になります。これを口座の凍結と言います。
●口座はなぜ凍結される?
亡くなった人の預貯金は、亡くなった時点で相続財産となります。相続人は一人とは限りません。預貯金を誰が相続するか確定する前に一人の相続人が引き出してしまうと、トラブルになる可能性があります。こうしたことから、口座名義人が死亡すれば口座は凍結される扱いになっているのです。
●口座凍結のタイミングは?
役所に死亡届を出したら自動的に口座凍結されるわけではありません。役所から銀行に死亡の連絡をするしくみはないからです。ではいつ凍結されるかと言うと、銀行が死亡の事実を知ったときになります。
銀行が死亡の事実を知るのは、一般には親族から問い合わせがあったときでしょう。亡くなった人の親族は、相続手続きについて銀行に問い合わせをすることが多いはずです。逆に、親族が問い合わせしなければ、口座はいつまでも凍結されないこともあります。なお、新聞の訃報欄などで銀行が独自に口座名義人の死亡を確認したときにも、口座は凍結されます。
凍結を解除するにはどうすればいい?
口座の凍結は、放っておいても解除されません。凍結を解除するには、預貯金の相続手続きを行う必要があります。預貯金を誰が相続するのかを明確にし、必要書類を揃えて銀行に提出すれば、払い戻しが受けられます。
●預貯金の相続手続きには何が必要?
預貯金の相続手続きを行う際には、亡くなった人の遺言書がある場合には遺言書を、遺言書がない場合には相続人全員で遺産分割協議を行って遺産分割協議書を添付する必要があります。遺産分割について、家庭裁判所の調停や審判で決まった場合には、調停調書や審判所を添付します。このほかに、戸籍謄本や相続人の印鑑証明書なども必要になります。
凍結解除前でも相続人は仮払いを受けられる
相続手続きを行って口座の凍結を解除してもらうには、遺産分割協議をしたり必要書類を集めたりしなければならず、時間がかかります。実際には、手続きが終わるまでに、亡くなった人の入院費用や葬儀費用の支払いがあり、お金を引き出したいケースも多いでしょう。亡くなった人の口座から払い戻しを受けたい場合、家庭裁判所の仮処分を受ける方法もありますが、やはり時間はかかってしまいます。
相続開始時のこうした不便を解消するために、家庭裁判所の判断を経ずに相続人が一定額までの預貯金の仮払いが受けられる制度が2019年7月にスタートしました。
●預貯金の仮払い制度で払い戻しできる金額は?
各相続人が単独で仮払いを受けられる金額は次のとおりです。
払い戻し可能な額=相続開始時(亡くなった時)の預貯金額×1/3×法定相続分
※ただし、同一の金融機関からの払い戻し額の上限は150万円
法定相続分とは、民法で定められた相続割合です。たとえば、相続人が妻と長男、次男の場合、妻の法定相続分は2分の1、長男、次男の法定相続分は各4分の1です。相続開始時の預貯金額が300万円とすると、それぞれの払い戻し可能額は次のようになります。
妻 300万円×1/3×1/2=50万円
長男 300万円×1/3×1/4=25万円
次男 300万円×1/3×1/4=25万円
●預貯金の仮払い制度の必要書類は?
預貯金の仮払い制度を利用して銀行に払い戻しを請求するときには、相続関係がわかる戸籍謄本一式と、払い戻しをする人の印鑑証明書が必要です。
口座凍結で慌てないために
家族が亡くなった後、すぐに現金が引き出せないと困ることがあります。仮払い請求ができるよう、家族が普段使っている銀行は把握しておきましょう。通帳や印鑑など大事なものはまとめておくと、手続きする際にもスムーズです。
口座凍結前であっても、亡くなった人の預貯金を引き出すときには、他の相続人の同意を得る必要があります。何にいくら使ったのかがわかるよう記録を残しておき、後日のトラブルを予防しましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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