22/11/21
iDeCoと企業型DCの併用には「3つの条件」があるって本当?併用すべきはどんな人?
2022年10月から、企業型DC(企業型確定拠出年金)に加入している人でもiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)に加入しやすくなりました。今回は、iDeCoと企業型DCを併用するための3つの条件を紹介します。また、iDeCoと企業型DCを併用すべき人がどんな人かもみていきます。iDeCoと企業型DCの併用を検討する際に参考にしてみてください。
iDeCoと企業型DCの概要を確認
iDeCoも企業型DCも、老後資金を用意するための制度です。
●iDeCo
iDeCoは、国民年金や厚生年金の上乗せ部分を自分で用意できる制度。公的年金だけでは将来が不安だと感じる方が老後資金の準備をするために加入しています。
iDeCoの加入者は、自分で掛金を拠出して積立運用を行います。そして、その成果を原則60歳以降にもらいます。掛金は毎月5,000円からで、上限額は職業や企業年金の有無で異なります。
iDeCoには、税制面でのメリットがあります。
・拠出している期間:拠出額の全額が所得控除の対象(毎年の所得税や住民税が安くなる)
・運用中:運用で得た利益は非課税(20.315%の税金がかからない)
・受取時:一時金としてもらえば退職所得控除の対象、年金でもらえば公的年金等控除の対象(税金の負担が減る)
iDeCoは2022年に制度改定が行われました。最長で65歳未満までの方が加入できるようになり、資産の受取開始年齢を最長75歳まで延ばすことができるようになりました。
●企業型DC
企業型DCは、企業が毎月拠出してくれる掛金を従業員(加入者)が自分で運用して老後資金を用意する制度。企業型DCの掛金の額は企業での役職等によって決められています。
企業型DCの制度の有無は企業によって異なります。企業型DCの制度がある企業でも、従業員が自動的に加入できる場合と加入するかしないかを選択できる場合とがあります。
企業型DCでは、定年退職を迎える60歳以降に積み立ててきた年金資産をもらうことができます。iDeCoと同様、運用で得た利益は非課税になるうえ、一時金としてもらえば退職所得控除の対象、年金でもらえば公的年金等控除の対象になるため、税金の負担が減らせます。
また、企業が拠出する掛金だけでは足りないと考える方は「マッチング拠出」という制度を使えば加入者自身で掛金を上乗せすることができます。マッチング拠出を利用して加入者が上乗せした掛金は、所得控除の対象になります。
iDeCo・企業型DCの併用に必要な3つの条件
iDeCoと企業型DCを併用するには、次の3つの条件を満たしている必要があります。
●iDeCo・企業型DC併用の条件①:企業型DCの事業主掛金が各月拠出であること
企業型DCで企業が拠出してくれる掛金(事業主掛金)が各月拠出、つまり毎月拠出されていることが必要です。企業型DCを導入している企業の中には、年1回、年2回だけ掛金を拠出するところもあります。この場合は、iDeCoを併用できません。不明な方は勤務先に確認してみてください。
●iDeCo・企業型DC併用の条件②:企業型DCの事業主掛金+iDeCoの掛金が拠出限度額を超えないこと
iDeCo・企業型DCには、それぞれ掛金の上限があります。iDeCoと企業型DCを併用する場合にも、上限額が決められています。
【iDeCo・企業型DCの掛金上限額】
(株)Money&You作成
iDeCoと企業型DCを併用する場合の掛金の上限額は、企業型DCのみに加入する場合は5.5万円(うち、iDeCoの掛金額上限は2万円)、企業型DCと確定給付企業年金などに加入する場合は2.75万円(iDeCoの掛金額上限は1.2万円)です。
たとえば、企業型DCの掛金額が多く、iDeCoの拠出可能額が5,000円を下回ってしまう場合は、iDeCoの最低拠出額が5,000円と決まっているためiDeCoには加入できません。
●iDeCo・企業型DC併用の条件③:企業型DCでマッチング拠出をしていないこと
企業型DCのマッチング拠出とiDeCoは併用できません。どちらか片方を選ぶ必要があります。ただ、マッチング拠出を停止すればiDeCoに加入できるようになります。マッチング拠出を停止したい場合、あるいはそもそもマッチング拠出をしているかがわからない場合は、勤務先に確認しましょう。
iDeCoと企業型DCを併用すべき人はどんな人?
iDeCoと企業型DCの併用条件をすべてクリアしていたら、iDeCoと企業型DCを併用するべきかどうかを考えましょう。基本的には、企業型DCだけでなくiDeCoも利用したほうが、老後資金をより手厚く用意することにつながります。お金に余裕があって、iDeCoも併用できるのであれば、併用した方がいいでしょう。
ただし、iDeCoでは、どの金融機関を使ったとしても、口座開設時に2,829円の手数料がかかります。さらに、国民年金基金連合会と信託銀行に支払う毎月計171円(年2,052円)の手数料も必ずかかります。そのうえ、iDeCoを利用する金融機関にも月数百円の運営管理手数料がかかる場合があります(無料の金融機関もあります)。企業型DCの場合はこれらの手数料がかからない(企業が負担)ことは覚えておきましょう。
iDeCoの拠出額が少額になってしまうのであればiDeCoではなく、その分をつみたてNISAで運用するのもいいでしょう。つみたてNISAは運用益が非課税ですし、引き出すタイミングを自身で決められます。
企業型DCでマッチング拠出ができる場合は、iDeCoかマッチング拠出かを選ぶ必要があります。ポイントは、企業型DCで企業が拠出する掛金にあります。マッチング拠出で加入者が拠出する掛金は、企業が拠出する掛金と同額までだからです。
たとえば、企業型DCのみの場合、企業の掛金が月1万円なら、マッチング拠出で本人が拠出できる金額も月1万円までとなってしまいます。
しかし、iDeCoならば企業の掛金に関わらず月2万円まで拠出できます。この場合は、iDeCoを利用したほうが掛金を多くできます。
一方、企業の掛金が月3万円なら、マッチング拠出で本人が拠出できる金額は月2.5万円まで。iDeCoならば月2万円ですので、企業型DCを利用したほうが掛金を多くできます。
また、金額ではなく運用したい商品がある方もiDeCoのほうがいいでしょう。金融機関によって商品ラインナップが違うので、運用したい商品を扱っている金融機関を選ぶことができます。
まとめ
2022年10月からiDeCoと企業型DCの併用条件が緩和されました。企業型DCのある企業でお勤めの方はiDeCoと併用することで老後資金準備をこれまでよりも手厚く準備することが可能になります。iDeCoと企業型DCの併用にあたっては、3つの条件を満たしているかを確認してください。また、マッチング拠出が利用できるならば、iDeCoとマッチング拠出のどちらを選んだ方が掛金を増やせて老後資金を手厚く用意できるのか、確認してみてください。
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小塚歩 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
大手証券会社、IRリサーチ会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。FP事務所 まいまねい 代表。人生100年時代だからこそ、もっと金融を身近に感じてほしく、セミナー活動を通して、金融リテラシーや金融教育を広めるセミナー講師。得意分野は投資・金融資産運用。
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