22/10/16
【徹底比較】全世界株式インデックスファンド、プロが選ぶ最強おすすめ投資信託はコレだ
投資信託の種類のひとつ「全世界株式インデックスファンド」には、いろいろな商品があります。ただ、ひとくちに全世界株式インデックスファンドといっても、よくみると商品ごとに細かな違いがあります。
今回はそんな、全世界株式インデックスファンドの違いをチェックしていきましょう。おすすめ投資信託と合わせて紹介します。
世界経済は年3〜4%で成長している
全世界株式インデックスファンドは、1本買うだけで世界中の株式に投資したのと同様の効果が期待できる投資信託です。
そもそも、なぜ全世界に投資するのでしょうか。それは、世界経済は年3〜4%ずつ成長しているからです。
●世界経済は年3〜4%で成長していく
IMF「World Economic Outlook Database」より(株)Money&You作成
グラフはIMFのデータより作成した、年ごとの経済成長率の推移です。リーマンショックやコロナショックなどの年には成長が鈍化していますが、それ以外の年はおおむね3%〜4%の経済成長を果たしていることがわかります。つまり、全世界に分散投資することで、世界経済の成長率を享受できるでしょう。
また、全世界に投資することで、経済成長率よりも高いリターンが期待できます。
フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏が唱えた「r>g」という不等式があります。rは資本収益率(投資のリターン)、gは経済成長率を表します。現状、世界の経済成長率は年3〜4%なのですから、投資をすることで、経済成長率を超えたリターンが得られると考えられます。
それに、全世界株式に投資すると、値動きともより上手に付き合うことができます。
●長期・積立・分散投資の効果
金融庁「つみたてNISA早わかりガイドブック」より
2001年から2020年までの20年間、毎月1万円ずつ貯蓄して投資しなかった場合、資産の総額は240万円になります。しかし、毎月1万円ずつ全世界株式に投資していたとしたら、資産総額は624万円、日本株式に投資していたら503万円になっています。全世界株式のほうが高いリターンが出ています。
グラフをよく見ると、2008年から2012年ごろまで、元本割れを起こしている時期もあります。しかし、全世界株式は日本株式よりも回復が早く、その後の値上がりも堅調です。ですから、全世界株式インデックスファンドに投資しよう、というわけです。
全世界株式の「インデックス」にもいろいろある
全世界株式インデックスファンドは、世界中の株価の値動きを示す指数(インデックス)と連動を目指す投資信託です。全世界株式インデックスファンドが値動きの連動を目指す(ベンチマークとする)指標には、次のものがあります。
●全世界株式インデックスの分類
(株)Money&You作成
日本を含むものが「FTSE Global All Cap Index」と「MSCI All Country World Index[MSCI ACWI]」、日本を含まないものが「MSCI All Country World ex Japan Index[MSCI ACWI(除く日本)]です。それぞれのインデックスを利用する代表的な商品名も挙げてあります。
1本で「世界中の株」をバランス良く買いたい人は「日本株を含むファンド」、日本株と海外株は別々に管理したい人・日本株は自分で積極的に売買したい人は「日本株を含まないファンド」を選ぶといいでしょう。
もっとも、日本株を含むファンドといっても、組み入れられている日本株の割合は5〜6%と、それほど高くはありません。したがって、気軽に選んでもいいでしょう。個人的には1本で世界株を買える「日本株を含むファンド」がいいと考えます。
このなかで、特に投資家に人気が高いのが、
・SBI・全世界株式インデックス・ファンド
・SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド
・楽天・全世界株式インデックス・ファンド
・eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
の4本です。「世界株ファンドの四天王」と言われることもあります。
FTSEとMSCI、どちらのベンチマークを選ぶのがいい?
世界株ファンドの四天王のうち、
・SBI・全世界株式インデックス・ファンド
・SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド
・楽天・全世界株式インデックス・ファンド
は、FTSEをベンチマークにしています。
一方、
・eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
はMSCI ACWIをベンチマークにしています。
では、FTSEとMSCI ACWI、どちらのベンチマークがいいのでしょうか。
●FTSEとMSCI ACWI、どちらのベンチマークを選ぶ?
2022年8月末時点
(株)Money&You作成
どちらの指標も、ポートフォリオを構成する国の比率は非常に似ています。ポートフォリオに占める日本・米国の組入割合も大差ありません。しかし、FTSEは小型株を含んでいて、銘柄数が多くなっています。またFTSEはMSCI ACWIよりも世界株式市場のカバー率が高いのも特徴。実に98%をカバーしています。
さらに、年率リターンもFTSEのほうが高くなっています。これはFTSEが小型株を含んでいるからと考えられます。FTSEが組み入れている小型株の金額的な比率は低いので、値動きへの影響は大きくありません。しかし年率リターンには小型株の分が入っているため、直近3年・5年の年率リターンが高く出ています。
もっとも、2つの指数の値動きには、それほど大きな差はありません。ですから気軽に選んでも問題ないのですが、個人的には小型株を含み、カバー率が高い「FTSE Global All Cap Index」を推したいと思います。
世界株ファンド四天王、どれがいい?
以上を踏まえて、世界株ファンドの四天王のうち、どれを選ぶのがいいのでしょうか。
4つのファンドはそれぞれ、ベンチマークと連動するために、さまざまな投資先に投資をしています。投資先と投資割合をざっと紹介すると、次のとおりです。
【SBI・全世界株式インデックス・ファンド】
・全米株ETFのVTI(60%)
・米国を除く先進国株ETF(30%)
・新興国株ETF(10%)
【SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド】
・全世界株ETFのVT(100%)
【楽天・全世界株式インデックス・ファンド】
・全世界株ETFのVT(85%)
・全米株ETFのVTI(8.5%)
・米国を除く全世界株ETF(6.5%)
【eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)】
(ETFではなくマザーファンドを通じて投資)
・日本株(5.5%)
・日本を除く先進国株(83.5%)
・新興国株(11%)
ETFのうち、VTIとVTはそれぞれ2つのファンドが採用していることがわかります。
●人気の高い4つのファンドの詳細データ
2022年9月22日時点
(株)Money&You作成
表内赤字の部分が有利と考えられるポイントです。
4ファンドの信託報酬を見ると、楽天・全世界株式インデックス・ファンドのみ0.2%台と、他の3ファンドよりも高くなっています。0.2%でもとても低い水準ではありますが、他の3ファンドはそれよりも低コストです。信託報酬は、SBI・全世界株式インデックス・ファンドがもっとも安くなっています。
純資産総額・年率リターン(3年)・シャープレシオ(※1)・販売会社数の面では、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) に軍配が上がります。トラッキングエラー(※2)は引き分けです。
※1シャープレシオ:リスクに見合った利益を得られているかを数値化したもの。数値が高いほど、同程度のリスクに対してより高いリターンを得ていると考えられる
※2トラッキングエラー:ベンチマークへの連動性を見るもの。数値が低いほど良い
なお、SBI・V・全世界株式インデックス・ファンドは2022年に新設されたファンドなので、リターンなどの表記はありませんが、SBI・全世界株式インデックス・ファンドや楽天・全世界株式インデックス・ファンドに似た数字になっていたと思われます。
なぜeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) のリターンがいいのか
ここで一点、疑問が出てくるでしょう。
FTSEとMSCI ACWIのベンチマークを比較すると、FTSEのほうがリターンは良かったのに、なぜファンドの成績はMSCI ACWI と連動を目指すeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)のほうが良いのでしょうか。
それを調べるために、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)とSBI・全世界株式インデックス・ファンドの騰落率を細かく見たのが、次の表です。
●ファンドの騰落率比較
2022年8月末時点
(株)Money&You作成
両ファンドのベンチマークであるFTSEとMSCI ACWIの騰落率を比較すると、確かにFTSEのほうがよくなっています。しかし、SBI・全世界株式インデックス・ファンドの成績はFTSEよりも悪くなっているのです。
一方のeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は、MSCI ACWIとの運用成績のずれが少なくなっています。そのため、結果的にeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)のほうが成績はよくなった、というわけです。
もっとも、ベンチマークへの連動性を示すトラッキングエラーの数字はどちらも同じ0.07でした。ですから今後、SBI・全世界株式インデックス・ファンドの成績がよくなることにも期待しています。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の信託報酬が安くなる?
SBI・全世界株式インデックス・ファンドの信託報酬は0.1102%。eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の信託報酬0.1144%よりも安くなっています。しかし、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の信託報酬は今後、SBI・全世界株式インデックス・ファンドよりも安くなるかもしれません。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)に限らず、eMAXIS Slimシリーズのファンドには「受益者還元型信託報酬」という仕組みがあります。受益者還元型信託報酬は、ファンドの純資産総額が増えるごとに信託報酬が少しずつ下がっていく仕組みです。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は販売会社が多いうえ、個人投資家にも人気。「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year」でも2019年から2021年まで3年連続で1位になったほどです。今後も、低コスト化が進みそうです。
※編注:2023年9月8日よりeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の信託報酬は年0.05775%に引き下げられました。
結論:世界株インデックスファンド買うならこの2本
全世界株式インデックスファンドには日本株を含むものと含まないものがありますが、日本の割合は数%なのであまり気にしなくてもいいでしょう。個人的には、1本で世界全体の株を買える「日本株を含むファンド」を選ぶのがおすすめです。
日本株を含むベンチマークには「FTSE Global All Cap Index」と「MSCI ACWI」があります。2つの指数の値動きには大きな差はありません。個人的には、小型株を含み、カバー率が高い「FTSE」をお勧めします。
人気の全世界株式インデックスファンドには、
・SBI・全世界株式インデックス・ファンド
・SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド
・楽天・全世界株式インデックス・ファンド
・eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
があります。どれを選んでも運用成績には大差ありませんが、コスト面で言えば「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」「SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド」「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の3本が「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」より多少安くなっています。
また、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)には受益者還元型信託報酬の仕組みがあるので、今後の低コスト化も期待できます。
以上を踏まえると、「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」または「SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド」のどちらかと、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の2本に投資するのが落ち着きどころではないかと考えます。
今回取り上げた4本は、どれも人気のあるファンドですが、投資先のファンドをより絞りたいという場合には、ぜひ参考になさってください。
今回の内容は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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