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21/07/28

相続・税金・年金

遺族年金の受給資格は今でも25年 もらえる・もらえないで年金額はどう変わる?

年金には、老後に受け取る老齢年金のほか遺族年金や障害年金があります。このうち、遺族年金は、配偶者等が死亡し、遺された遺族の生活が大変になるリスクに備えて支給されるものです。ただ、注意していただきたいのは、「年金未納」の期間がある場合、そうした万が一のときの年金を受け取れるかどうかです。遺族年金の受給資格について、具体的に見ていきましょう。

子どもが巣立ったあと、配偶者に先立たれた場合は遺族厚生年金がもらえる可能性

まず制度の全体像からみていきましょう。遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。基本的に死亡時の加入制度が国民年金(第1号被保険者、第3号被保険者)なら「遺族基礎年金」のみが、厚生年金(第2号被保険者)なら「遺族基礎年金+遺族厚生年金」の両方を受け取ることができます。

●年金の種類と受給対象者・受給期限

このうち、遺族基礎年金については、受け取れる対象が「子のある妻」または「子」に限定されており、「夫」や「子のいない妻」は受け取ることができない等、受け取れる人がかなり限定されています。「子のある妻」についても、子どもが18歳年度末を過ぎると支給が終了してしまうため、長期的な保障としては不十分といわざるをえません。

一方、遺族厚生年金を受け取れる対象は、「配偶者」「子」「父母」「孫」「祖父母」までとなり、55歳以上という条件はつくものの「夫」も対象となりますし、「子のいない妻(年齢は不問)」も対象となります。また、遺族基礎年金と違い、配偶者(夫55歳以上、妻30歳以上)は再婚等しない限り、一生涯支給されます。そういう意味で、遺族厚生年金は遺族基礎年金に比べ格段の安心感があるといえるでしょう。

遺族厚生年金の受給資格は今でも25年のまま

老後にもらえる年金の1つである老齢年金を受給するためには、最低で通算して10年以上年金保険料を納めていれば良いことになっています。かつては25年以上の納付期間が必要でしたが、2017年8月から現行の10年以上に緩和されました。この改正によって、約64万人もの方が晴れて老齢年金を受給できることとなり、恩恵を受けたといわれています。

このように老齢年金の受給資格期間は25年から10年に短縮された一方、今でも25年のままなのが、今回のテーマである遺族厚生年金の受給資格です。
これはどういうことかというと、1度でも会社勤めをしたことのある夫で「年金未納」が多く25年の受給資格期間を満たさなかった場合、生きていれば老齢厚生年金がもらえますが、夫に先立たれた場合、妻は遺族厚生年金が一切受け取れないことを意味します(下図の2つ目のパターンに該当)。この場合、遺された妻の老後生活は、かなり苦しくなるでしょう。

●受給資格期間と年金受給の可否

受給資格期間が25年なくてもよいケースは発生確率が少ない

実は、受給資格期間が25年なくても受給できるケースもあります。端的に表現すれば、被保険者が若くして亡くなった場合です。以下の通り、「遺族厚生年金」が支給される要件は、被保険者がいつ死亡したかのタイミングによっても区別されます。

①厚生年金保険に加入中に死亡したこと…短期要件
②老齢厚生年金が受給できる25年以上の受給資格期間があること…長期要件

①は短期要件といって、若くして亡くなるケースを想定しています。年金額形成が不十分な時期であるため、受給資格期間は25年なくても25年あったとみなす最低保障が付いています。それに対し、原則である②は長期要件といって、老齢厚生年金をすでに受給している方や、今後受給するために受給資格期間を満たした方といった、比較的中高齢者が亡くなるケースを想定しています。①の短期要件のように、25年なくても支給されるケースも確かにあるものの、日本が世界一の長寿大国であることを考えると、現実的には②の長期要件に該当して支給されるケースが圧倒的に多くなっています。

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もらえる・もらえないで年金額はどう変わる?

では、もらえる・もらえないで年金額はどう変わるかというシミュレーションをしてみたいと思います。今回のシミュレーションでは②の長期要件に該当して支給される遺族厚生年金で比較します。

②の長期要件に該当して支給される遺族厚生年金は、原則として亡くなった方の(もらえるはずだった)老齢厚生年金のうち、報酬比例部分の4分の3相当額が遺族厚生年金として支給されるルールです。

年金額計算式(概算):亡くなった方の平均給料×乗率/1000×加入期間の月数×3/4
※ここでは比較を目的とするため、簡略化した計算方法で概算値を算出します。

ある夫婦を例に老後の年金と妻が受け取る遺族年金を比較してみましょう。

[前提条件]
現在、A男さんは48歳、妻のB子さんは49歳。
A男さんは22歳で大学卒業後、地元企業に就職し、24年もの間ずっと同じ会社で働いていました。25歳の頃、1歳年上の女性B子さんと結婚。会社員時代はがむしゃらに働き、平均月収40万円でした。
しかし、子育ても一段落した頃の46歳の時に会社の経営が傾き、中堅どころのA男さんはリストラ対象となりました。転職活動も頑張ったものの、苦戦する中で軽いうつ症状となり、生活にも余裕がなくなりました。その後は、2年間もの間ずっと国民年金保険料を未納にし続けている…といった状況だったとします。

ずっと専業主婦で家族とA男さんを支えてきました妻のB子さんですが、50代を目前にし、漠然と将来の年金について不安があります。A男さんには「将来は厚生年金も受け取れるはずだからこのままでも大丈夫」といっていましたが、妻のB子さんは万が一夫に先立たれた場合の生活も心配になってきました。

…と、少々前置きが長くなりましたが、この場合の「A男さんが将来受け取る老後の年金」と「A男さんに万が一の時のB子さんがもらえる遺族年金」について考えてみましょう。

●「A男さんが将来受け取る老齢厚生年金」約63万円/年(A男さんが生きていればもらえる)

A男さんの平均給料×5.481(乗率)/1000×加入期間の月数
40万円×5. 481/1000×288月(24年)=63万1411円

●「B子さんが受給できる遺族厚生年金」約47万円/年(A男さんが亡くなったらもらえない可能性あり)

A男さんの平均給料×5. 481(乗率)/1000×加入期間の月数×3/4
40万円×5. 481/1000×288月(24年)×3/4=47万3558円

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再就職するか1年分の未納分を追納して解消すればOK

A男さんがこのまま再就職できず、国民年金保険料も未納のままにして亡くなった場合が最悪のケースです。現在厚生年金に加入中でもないため、短期要件には該当しません。また、厚生年金の加入期間が24年間あったにもかかわらず、受給資格期間の25年を満たしておらず、妻のB子さんはA男さんの遺族厚生年金を1銭も受け取れないことになります。こうなると遺された妻の生活保障は全く受けられません。

しかし、ご心配なく。このあとA男さんが再就職するか、2年間の未納分のうち1年分だけでも保険料を追納すれば、受給資格期間の25年を満たしますので約50万円分の遺族厚生年金を受け取ることができます。また、経済状況が苦しく保険料が払えそうもない場合には、免除申請を役所に申し出ましょう。免除申請した分は将来受け取る年金額には反映しませんが、受給資格期間としてカウントできるため、長期要件を満たすことになり、遺族厚生年金が受け取れます。この差はとても大きいのです。

遺族年金がないと遺された家族の生活は苦しくなりかねません。受給要件と国民年金の納付状況を確認し、未納や滞納があれば早急に解消しておきましょう。

KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士

長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。

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