21/07/21
国民年金の任意加入で100万円以上増えるは本当か
国民年金は60歳を過ぎても条件さえ満たせば「任意加入」ができます。任意加入することで、生涯受給できる老齢基礎年金が100万円以上増やせるケースがあることをご存じですか? 今回は、老齢基礎年金の受給額を増やすことができる任意加入についてご紹介します。さらに、どれくらい年金を増やせるか試算もしてみましたのでご覧ください。
老齢基礎年金の受給額はどのように計算されているの?
老齢基礎年金を受給するには、10年以上の受給資格期間が必要です。この受給資格期間は国民年金だけでなく厚生年金の加入期間も含みます。つまり、国民年金もしくは厚生年金の保険料を支払った期間が10年以上あれば受給することができるのです。
そして、年金に加入していた期間に応じて受給額が決まります。20歳から60歳まで40年間加入した人は、毎年満額の老齢基礎年金を受け取ることができます。ちなみに2021年4月から受け取れる満額の年金額は78万900円です。この受給額は、賃金や物価の変動に応じて毎年変わります。
では、老齢基礎年金の受給額がどのように計算されているのか見ていきましょう。計算式は以下の通りです(2021年度での額でご紹介します)。
老齢基礎年金の計算式をわかりやすく表すと以下のようになります。
=78万900円(その年の満額)×保険料納付月数/480月(40年×12ヶ月)
保険料の免除制度を利用したことがある場合は、その期間も受給対象となり、免除割合(全額免除・4分の3免除・半額免除・4分の1免除)と免除期間に応じた月数を足します。
具体的には、保険料納付月数は次のように計算します。
保険料納付月数+(全額免除月数×8分の4)+(4分の1納付月数×8分の5)+(半額納付月数×8分の6)+(4分の3納付月数×8分の7)
※免除月数は下記のように納付月数へ変換しています。
・4分の3免除月数⇒4分の1納付月数
・半額免除月数⇒半額納付月数
・4分の1免除月数⇒4分の3納付月数
ねんきん定期便を見て、自分の老齢基礎年金の計算が間違っていないか確認しておきましょう。
60歳以降も国民年金に加入して年金を増やす方法
国民年金に40年間加入して満額の老齢基礎年金を受け取れると安心ですが、もし、保険料納付期間期間が40年に満たないときは、あきらめるしかないのでしょうか?
実は、国民年金の保険料納付期間が40年に満たない場合でも、老齢基礎年金の受給額を増やせる制度があります。その制度とは、国民年金の「任意加入」です。
●任意加入制度を利用する
任意加入とは、老齢基礎年金の受給資格期間に満たない人や保険料納付期間が40年未満の人が年金額を増やしたい場合、60歳以降でも国民年金に加入できる制度です。
ただ、任意加入するには条件があります。その条件とは、以下のすべてを満たす人です。
・日本に住む60歳以上65歳未満の人
・老齢基礎年金の繰上げ受給をしていない人
・保険料納付期間が480月(40年)未満の人
・厚生年金保険に加入していない人
例えば、国民年金の未納期間がある人、これまでに国民年金の免除制度を利用したことがある人は、納付月数が減っているので、任意加入したほうがよいでしょう。
●付加保険料を納付する
60歳から65歳になるまでの間に任意加入する際、さらに年金を増やす方法があります。それは「付加保険料」を納付する方法です。
付加保険料とは、国民年金保険料に上乗せして納付するもので、付加保険料の納付月数に応じて、年金の受給額を増やすことができます。
付加保険料は月額400円で、増額できる年金額は「200円×付加保険料納付月数」ですので、2年で元が取れる計算です。
任意加入と付加保険料は、老齢基礎年金を増やすことができるお得なしくみです。加入条件に合うのであれば、利用されることをおすすめします。
5年間、国民年金に任意加入したら年金はどれくらい増える?
ではここで、国民年金の保険料納付期間が35年の人が、5年間任意加入したら、老齢基礎年金がどれくらい増えるのか試算してみましょう。
<設定した条件>
・国民年金の保険料納付期間は420月(35年)
・老齢基礎年金の満額は、78万900円とする
・保険料の免除期間はなし
・90歳まで生きると仮定(90歳-65歳=25年)
保険料納付期間が35年の場合、老齢基礎年金の受給額(年額)は以下の通りです。
78万900円×420月/480月≒68万3288円
5年間(60月)任意加入すると、受給額(年額)は下記のように変わります。
78万900円×420月+60月/480月=78万900円
任意加入しない場合に比べると、年額9万7612円増えますね。
90歳まで生きた場合、トータルで増額できる年金額は9万7612円×25年=244万300円ですから、この増額分は大きいですよね。
国民年金の保険料は月1万6610円(2021年度)です。これを5年間支払うと、99万6600円となります(2021年度の金額で計算)。90歳まで生きた場合、244万300円-99万6600円=144万3700円の得、ということになります。
任意加入だけでなく、付加保険料も納めた場合は、さらに受給額を増やせます。
付加保険料を5年間納付した場合に増額できる年金額(年額)は、200円×60月=1万2000円ですから、90歳までの25年間で受け取れる年金額は1万2000円×25年=30万円増えます。
上と同じく5年間任意加入して90歳まで生きた場合、65歳から90歳までの25年間で受給する年金244万300円に、この30万円を加えますので、増額できる年金の総額は244万300円+30万円=274万300円となります。
5年間の国民年金保険料は99万6600円、付加保険料は2万4000円です。これを年金の総額から引くと274万300円-99万6600円-2万4000円=171万9700円。つまり、171万9700円の得になるというわけです。
付加保険料による受給額の増加分は年単位で見ればわずかです。けれども、生きている間の総受給額で考えると、その増額分は大きいです。任意加入と付加保険料は、利用価値があるということですね。
まとめ
国民年金の加入期間が40年に満たないときは、60歳以降に任意加入して、さらに付加保険料も納めれば、年金の受給額を増やすことができます。任意加入をすることで老齢基礎年金の受給額を満額に近づけることができるのですから、利用したほうがお得です。
なお、国民年金には前納割引制度があります。1年分もしくは2年分を前納すると保険料が割引になるので、この制度も上手く活用してみてはいかがでしょうか。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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