21/04/19
給与のデジタル払い解禁の今こそ考えたい、ゆうちょ銀行を利用する2つのメリット
スマホ決済や電子マネーなどで給与を支払う「給与のデジタル払い」が解禁される見込みです。給与がデジタル払いになると、お金の流れが今までとは大きく変わります。今回は、給与がデジタル払いとなった際のメリットを紹介します。また、ゆうちょ銀行を例に、給与のデジタル払いがスタートした後もゆうちょ銀行を利用する2つのメリットについて、考えていきます。
給与のデジタル払いがスタート
厚生労働省が、2021年度のできるだけ早くのうちに、給与のデジタル払いを制度化することを表明しました。給与のデジタル払いが実際に行われることになれば、給与は今までのように現金が銀行口座に振り込まれるのでなく、直接スマホ決済や電子マネーなどに振り込まれることになります。デジタル払いで受け取ったお金は、ATMなどで月に1回以上、手数料なしで引き出せるようになる見込みです。
給与の支払い方法は、労働基準法第24条により、以下の5原則を守るように決められています。
●賃金支払いの5原則
(1)通貨で
(2)直接労働者に
(3)全額を
(4)毎月1回以上
(5)一定の期日を定めて支払わなければならない
現状は、給与を現金で直接受け取るのではなく、銀行の口座振込で受け取る人がほとんどでしょう。これは労働者の同意を得た場合のみ例外として銀行の口座振込が認められているからです(労働基準法施行規則第7条の2第1項)。給与がデジタル払いされる場合も、銀行の口座振込と同様の扱いで行われる方針です。
給与のデジタル払いが推進されれば、企業、従業員、社会のそれぞれにとってメリットがあります。それぞれの主なメリットを紹介します。
●企業にとってのメリット
企業にとってのメリットは、銀行への給与振込を行う手間が省け業務が効率化し、振込手数料も削減できます。また、企業で雇い入れている外国人労働者は、現状、銀行口座の開設が難しいという問題がありました。しかし、給与がデジタル払いとなれば、雇い入れがスムーズとなり、労働力の確保ができます。
●従業員にとってのメリット
従業員にとってのメリットは、ATM利用の時間と手数料を節約できることです。
スマホ決済や電子マネーを利用できる店舗ではそのまま決済をし、現金が必要な場合だけ引き出しをすればいいので簡単です。また、スマホ決済や電子マネーに入金する手間も省くことができます。
●社会にとってのメリット
社会にとってのメリットは、キャッシュレス化が進むことで、現金を管理するコストが削減されることです。現金を管理するコストは8兆円にものぼるといわれています。キャッシュレス化が進むことで、このコストを約4兆円削減できると期待されています。
一方で、スマホ決済や電子マネーを運営する資金移動業者の安全性やセキュリティの面には課題も指摘されています。万が一資金移動業者が破綻したとしても、十分な額が早期に従業員に支払われるなど、安全性の高い制度となるよう、今後も検討が進められます。
給与のデジタル払いが進むと銀行はどうなる?
給与のデジタル払いが進めば、お金のやりとりの際の便利さが増すでしょう。一方で、これまで利用してきた銀行の優位性は薄れることになってしまうのでしょうか。ここでは、ゆうちょ銀行のメリットと、給与のデジタル払いが普及した場合にそれらのメリットがどうなると考えられるのかをあわせて紹介します。
●ゆうちょ銀行のメリット1:全国どこでも使える利便性
もともと郵便局がベースのゆうちょ銀行の窓口は、全国津々浦々に設置されています。その数は約2万4000。他の金融機関と比べても、圧倒的な数となっています。都市、地方にかかわらずどこにでもあるため、口座を持っていれば、旅行先でお金を引き出すことができたり、転勤が多くても手続きに困ったりしません。
また、ゆうちょ銀行の営業時間は、一般的な銀行の15時までに対して、16時までとなっています。「今日必ず、郵便局で手続きしたい!」と思っているときなど、この1時間のおかげで、余裕をもって手続きができます。
さらに、ゆうちょ銀行のATMは国内約1400社と提携しているため、すべての都市銀行、地方銀行のキャッシュカードを使うことができます。
しかし、このような全国のATMが使える利便性も、給与がデジタル払いで直接スマホ決済や電子マネーに振り込まれれば、そもそもお金を引き出す窓口はそれほど必要ありません。また、ゆうちょ銀行に限らず、月1回無料で引き出せるのであれば、ATMの数が多くなくてもよさそうです。
●ゆうちょ銀行のメリット2:手数料がかからない
お金を入金したり、引き出したりするときに気になるのがATM手数料です。銀行によっては時間外手数料がかかりますが、ゆうちょ銀行のATMの場合、通常貯金の入金・引き出しをする際は、曜日・時間帯にかかわらず手数料は無料となります。また、ゆうちょ銀行のATMは、ファミリーマートにも「ゆうちょATM」として設置されています。ゆうちょATMなら24時間いつでも利用できて、入出金の手数料が無料です。
なお、ファミリーマートのATMが「イーネットマーク」の場合は平日8:45~18:00・土曜日9:00~14:00の時間帯のみ手数料が無料になります(それ以外の時間は、1回につき220円の手数料がかかります)。
このように、ゆうちょ銀行の手数料無料のサービスはありがたいのですが、給与のデジタル支払いが進めばそもそも現金を引き出す回数は減るため、手数料がかからないという優位性は薄れてしまいます。
●ゆうちょ銀行のメリット3:早くて安心な電信振替
ゆうちょ銀行には、「電信振替」というサービスがあります。ATMを操作して、自分のゆうちょ口座から相手のゆうちょ口座へ1回100円(税込)で送金できるサービスです。また、ネットの「ゆうちょダイレクト」を利用すれば、自宅から電信振替の手続きを行うことができます。この場合は、1ヵ月5回まで無料です。
電信振替は、送金する側の人が、ATMやパソコンでの操作を完了したと同時に相手口座に振替えられます。この操作時には、相手口座の名義が表示され、確認してから振替を行うため、間違いが起こる心配はありません。手続き後即入金されるという迅速性と安全性が魅力です。
便利な電信振替ですが、給与のデジタル払いが進めば、スマホ決済の送金機能で代用可能。しかも、手数料無料でお金を送ることができます。
給与がデジタル払いになっても、ゆうちょ銀行を持つメリット
給与のデジタル払いが進むと、ゆうちょ銀行のメリットが薄くなってしまうように感じました。しかし、このような状況を踏まえても、総合的にゆうちょ銀行を持った方が良い理由が2つあります。
●ゆうちょ銀行が有利なポイント1:デジタル払いの給与は「一部のみ」
現状のところ、デジタルマネーを管理する資金移動業者自体の安全性や確実性は、実際の金融機関よりも劣ります。そのため、給与のデジタル払いが解禁されるのは、給与の一部のみとなる見込みです。すぐに給与すべてがデジタル払いになるわけではなさそうですので、今後もゆうちょ銀行のような便利な銀行口座を持つ意味はあるでしょう。
●ゆうちょ銀行が有利なポイント2:ゆうちょ銀行には「ゆうちょPay」がある
ゆうちょ銀行は、「ゆうちょPay」というスマホ決済を2019年5月にスタートしました。スマホにゆうちょPayのアプリをダウンロードし、名前とゆうちょ銀行の口座情報を登録すればすぐに使えます。
ゆうちょPayは、ゆうちょ銀行の口座と直結しています。そのため、現金とスマホ決済のお金を一元管理できます。スマホ決済のクレジットカードと紐づけ決済をする場合は、ときにお金を使いすぎることもあるかもしれません。しかし、ゆうちょPayであれば、その心配はありません。
ゆうちょ銀行の口座をスマホに入れて持ち歩いているような便利さが特徴です。お金の管理をシンプルしたいというニーズがあれば、ゆうちょPayは有効なツールと言えます。
まとめ
給与のデジタル払いが解禁されても、給与はまだまだ現金での支払いが主流です。確かに、銀行の優位性は薄れるかもしれませんが、銀行口座が不要になるわけではありません。
ゆうちょ銀行には、全国で利用できること・手数料がかからないことなどに加え、ゆうちょPayも活用できるメリットがあります。今後の動向にも注目しつつ、便利に使いこなしていきましょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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