20/07/18
国会議員の平均給与は? 総理大臣や国務大臣になるといくらもらえるのか
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国会議員の「歳費」を1年間2割削減することが、2020年4月14日に決まりました。経済活動自粛で国民が苦しい生活を余儀なくされている中、「税金で高収入を得ている国会議員は歳費を返上すべきだ」という批判がネットを中心に広がったためです。
「国会議員は優遇されすぎている!」と国民からの厳しい目が向けられ、たびたびニュースなどで取り上げられることもありますが、国会議員がもらえるお金について知っている人は実は少ないのではないでしょうか。そこで今回は国会議員のフトコロ事情について掘り下げ、国会議員になると国からお金をどのくらいもらえるのかを調べてみました。
国会議員がもらえるお金は、法律で決まっている
一般的に働いて得る報酬を給与や給料などと表現しますが、国会議員については「歳費(さいひ)」と呼びます。衆参両院の国会議員の2019年の1年間の所得の平均は2427万円(前年比230万円減)でした。
国会議員の歳費や各種の経費は、歳費法という法律で決められています。歳費法は正式には「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」といいますが、法律は国会議員が作成するものであるため、いわば自分たちで自分の給与を決めていることになります。
「第一条」 に書かれているのが、月給ならぬ「歳費月額」についてです。
「各議院の議長は217万円を、副議長は158万4000円を、議員は129万4000円を、それぞれ歳費月額として受ける。」とあります。議員の給与にあたる歳費は、129万4000円です。なお、冒頭でお話しした2割削減の対象はこの「歳費月額」のみ。129万4000円が103万5200円と、2割削減されます。
この「歳費月額」以外にボーナスならぬ「期末手当」が年に2回、合計約635万円支給されます。2020年5月から1年間は歳費月額103万5200円となるものの、この期末手当635万円については返納の対象にはなっていません。
ですから、法改正前ならば約2188万円、2020年5月から1年間で区切った場合は約1877万円が一般的な国会議員の1年間の年収となります。
●国会議員の年収
ところで、国会議員から総理大臣や国務大臣へ出世した場合、給料はどうなるのでしょうか。こちらも「特別職の職員の給与に関する法律」によって、以下のように定められています。
・内閣総理大臣:201万円(月額)
・国務大臣:146万6000円(月額)
これに「地域手当」として月額歳費20%分の上乗せがあり、さらに期末手当2回分を加えたものが大臣のおおまかな年収となります。
また、今回の国会議員の歳費の2割削減に伴い、総理大臣や国務大臣の給与も、これまでの自主的な国庫への返納分に加えて、国会議員の減額分と同じ額の約310万円(25万8800円×12ヶ月分)を返納することも明らかになりました。そこで、役職別に年収額をまとめると以下の表のようになります。
※上記法改正前の金額は、「主な特別職の職員の給与」令和2年1月7日現在から抜粋
ちなみに「2019年分の所得等報告書」によると、安倍晋三首相(自民党総裁)の年収は3868万円でした。これまで東日本大震災復興のための財源に充てるため自主的に歳費(月額給与と期末手当)の3割返納を続けてきたそうですが、全議員の中で26位、党首の中では最も高かったようです。
国会議員に支給されるさまざまな経費
歳費や期末手当に加えて、国会議員には政治活動資金としてさまざまな経費が支給されています。主だったものを挙げていきましょう。
●国会議員の経費
文書通信交通滞在費とは、公的文書の発送費や交通費などとして支給される経費で、月額100万円、年間で1,200万円支払われます。これは非課税で、使い途を報告する義務はありません。年間1,200万円もの金額を非課税、領収書不要で使えるため、議員次第で私的流用できる可能性もあり、「議員の第二の給与」と皮肉交じりに呼ばれています。
立法事務費は、衆参両議院の各会派に所属議員数に応じて交付される費用です。議員一人当たり月65万円、年間780万円支払われます。法の制定のための必要経費(議員提出法案作成のための調査費用)という名目ですが、議員提出法案自体は全体の2割にも満たないと言われているのが現状で、こちらも文書通信交通滞在費同様、収支の報告義務はないため、万が一私的に流用しても分かりません。
議会雑費は、議会に出席していなくても議会が開かれている日数分の日当が受け取れ、公務で出張する際も同様の日当が支払われます。またこの他にも海外視察に伴う渡航費用も認められています。衆議院議員は月上限が180万円、参議院議員は上限なしで請求でき、飛行機の移動ではビジネスクラスでの利用も可能。なんとも羨ましい限りです。
さらに、JR特殊乗車券(グリーン車含む)や国内定期航空券(羽田空港-地方空港間の往復航空券4回分)が毎月支給されます。文書通信交通滞在費で月100万円もらえるはずなのにさらに無料パスやチケットまでもらえてしまうわけです。
国会議員の歳費が高い理由
このように日本の国会議員は年額約2,190万円(2020年5月以降の1年間に限り1,877万円)と高水準であることから、歳費をはじめ、国会議員の待遇について疑問を感じている国民が多いのが現状です。国会議員の歳費が高い理由として、以下のようなものがあります。
●1.裕福でない人でも国会議員になれるようにするため
国会議員になるためには、立候補し選挙に出馬するだけでも多くのお金がかかります。
国会議員の歳費が少なければ、自費で政治活動費を賄える一部の人しか国会議員になることができません。誰でも国会議員になれるようにするには、一定の金額を維持しなくてはならないのです。
●2.国会議員の質を維持するため
国会議員は、国民の代表として行政の中核を担う大切な仕事です。国会議員の歳費が少なければ、国会議員を目指す人が激減し、立候補する人が減ってしまうだけでなく、汚職など金銭に関する問題が多発する恐れがあります。
このようにさまざまな理由はありますが、一般的な職業からすると厚遇されている印象は否めません。日本国民の平均所得は年収450万円と言われていますから、それと比べると非常に高い額であるのは間違いないでしょう。国会議員の報酬や経費はいずれも税金が財源なので、「ここまで支払う必要があるのか」と国民からの厳しい声が少なからず聞かれます。
特に私たちは、その金額に見合った仕事をしているのかどうかという観点で国会議員の仕事ぶりを見極めていくことが必要でしょう。
まとめ
国会議員は選ばれて初めてなれるものですが、折々の選挙結果の信任と、国会議員として行った仕事への信認が、必ずしも一致しているとは限りません。特に近年は一部の議員がJR無料パスや航空券をプライベートで使用した事実が明らかになるなどの報道もあり、より世間の厳しい目が向けられています。
国会議員はこうした事実を頭に置いて、費用の使い方にも細心の注意をしなければならないでしょう。解散した時、もしくは任期を終えた時に、歳費分の仕事をしたかどうかの信任投票をしてみたら、どんな結果になるでしょうか。私たちが投票に行く際には、こうした給料などお金の面を考慮して「無駄のない候補者」を探してみるのもよいかもしれません。一般市民では到底考えられない給与だからこそ、それに見合った働きや責任を持ってほしいですね。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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