20/07/07
国の健康保険では足りない保障はなに? どんな場合に生命保険に入るべきなのか
日本の健康保険制度は世界でトップクラスに保障が充実しています。国民皆保険制度により、世界トップクラスの長寿国を実現しているのが事実としてあります。
今回は、充実した健康保険制度があるにも関わらず、民間の保険会社が提供している生命保険に加入すべきなのかどうかを考えて行きたいと思います。
病気やケガをしたとき、もしかしたら高額な費用が必要になるかもしれないと考えると、とても心配です。また、病気やケガで休職して収入が減ってしまったら、生活が困窮するかもしれません。そんなさまざまなリスクに備えて加入するのが保険です。
どんな場合に保険に加入すればいいのでしょうか。
生命保険に加入したほうがいいのはどんなケース?
健康保険に関連する国の保障にはさまざまなものがあります。ただ、ケースによっては保障の対象外になることもあるので、保障が足りない分を保険に加入して備えてもよいと考えます。
では、どのような場合に保険に加入したほうがいいのでしょうか?考えられるケースを挙げてみます。
●病気やケガで入院したときの差額ベッド代対策
病気やケガをしたときの入院や手術費用などが心配になる方もいるでしょう。こんなときに備えて、国は「高額療養費制度」という制度を設けています。ただ、入院すると治療費の他に差額ベッド代や食事代、通院にかかる交通費などがかかることも。
これらの費用は、高額療養費制度の対象外となるので、その分の備えとして「医療保険」を検討してもいいかもしれません。
<高額療養費制度とは>
1ヶ月あたりの医療費が、自己負担限度額を超した場合、申請すれば超した分が後から払い戻される制度。ただし、入院での差額ベッド代や食事代など健康保険が使えないものは対象外となります。
●がんを患ったときの治療費が心配なとき
今、日本人の2人に1人はがんにかかり、3人に1人はがんで死亡するといわれています。また、がんでは放射線治療や抗がん剤投与の他、陽子線治療などの先進医療が必要になる場合があり、先進医療は健康保険の対象外になります。
がんの治療は高額になるケースが多いことから、その費用をまかなうために「がん保険」の加入を検討してもよいでしょう。
●病気やケガで働けなくなったときの収入減が心配なとき
思いがけず事故に遭ってケガをしたり、病気で入院したり、治療で自宅療養が必要になったりしたとき、仕事を休まなければいけなくなるかもしれません。その際収入が減ると生活費が心配になります。こんなときサラリーマンであれば、健康保険から仕事を休んでいる間の収入が保障される「傷病手当金」が支給されます。
しかし、個人事業主やフリーランスには収入を保障してくれる制度がありません。そこで、保険でカバーすることを考えてもよいでしょう。その際検討できるのが、休業中の収入を補てんしてくれる「就業不能保険」です。
<傷病手当金とは>
業務外のことが原因で病気やケガをして仕事を4日以上休んだ場合、4日目以降の休んだ日数分につき支給されるものです。支給される期間は、支給が始まった日から最長1年6ヶ月ですが、有給休暇を利用したときは傷病手当金の受給はできません。
●介護が必要になったときにかかる費用が心配なとき
介護は未知の出来事です。どんな状態になってしまうのか、また、どれくらいお金がかかるのか見当がつかないものです。けれども、日本では40歳になったら誰もが介護保険制度に加入するので、介護費用は自己負担分のみで済むようになります。
ただ、施設に入所した場合の居住費や食事代などは介護保険の対象外となるため、費用負担を心配する人も多いでしょう。そこで、介護費用が高額になったときに備えて、民間の介護保険に加入しておくのも1つの方法です。
<介護保険制度とは>
40歳になると誰もが加入する介護保険。40歳から65歳までの人は所定の病気のみですが、65歳になれば要介護認定を受ければ介護保険サービスを利用できるようになります。その際の費用負担は所得に応じて1割~3割負担となりますが、利用限度額があり、それを超した場合は全額自己負担になります。
以上、4つのケースに備えられる保険をご紹介しました。その中で「医療保険」「がん保険」「介護保険」は生命保険の特約として付けることができるかもしれないので、確認してみましょう。
本当に必要な保障は何? 貯蓄と保障を分けて考えよう
「もしも」の場合に備えて保険に加入すれば保険金が受け取れるので、安心できるかもしれません。でも、よく考えてみましょう。保険に加入するということは、保険料の負担が発生して、家計の負担が増えるということです。もしもの場合の費用負担を抑えるために保険に加入したのにもかかわらず、保険料の払い込みで家計を圧迫させてしまっては本末転倒です。
ここでぜひ考えておきたいことが2つあります。
1つは、自分が欲しい保障は何かという点です。そして、希望する保障と国から受け取れる保障を照らし合わせてみましょう。高額療養費制度・傷病手当金・介護保険制度、これら3つの制度を利用すれば、保険に頼らなくても費用負担を軽くすることができます。
もう1つは、ある程度の貯蓄があれば、保険に加入しなくても費用をまかなえるということです。常に貯蓄できる家計なら、無理に保険に加入しなくてもよいかもしれません。
それでも「やっぱり心配…」と思う部分だけ保険に加入すれば、必要最小限の保険料負担で保障に備えることができるでしょう。
まずは、自分が欲しい保障を考えて、国からの保障と照らし合わせてみましょう。その上で、本当に必要な保障を保険でまかなえばよいのではないでしょうか。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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