20/03/04
高額療養費制度でお金が戻ってくるけど…一時負担が嫌なら「限度額適用認定証」を申請すべし
病気やケガで入院したときや通院治療が長くなりそうなとき、気になるのは医療費の支払いです。窓口で支払う医療費の総額を想像すると頭が痛くなりませんか。でもご安心ください。支払う額を減らせるものがあります。それが「限度額適用認定証」です。
医療費を立て替えずに済む限度額適用認定証
1ヶ月分の医療費(1日から末日まで)が高額になったときに「高額療養費制度」を申請すると、病院の窓口で支払った医療費のうち、自己負担限度額を超えた分が後から戻ってきます。ただ、この制度はいったん病院の窓口で自己負担分を支払わなければいけません。場合によってはまとまったお金が必要になることもあり、家計の負担が増えてしまいます。
でも大丈夫。入院などで治療費が高額になりそうなときは、「限度額適用認定証」を申請しましょう。これを健康保険証とともに病院の窓口で提示すると、支払うのは高額療養費制度の自己負担限度額までの費用のみ。限度額を超えた分は支払わなくてもよくなります。これはとても助かりますよね。限度額適用認定証は健康保険に加入している人なら申請できます。
ただし、高齢者の場合は少し扱いが異なります。これまでは70歳以上75歳未満の人に交付される「高齢受給者証」を提示すれば、病院の窓口では自己負担限度額までの支払いで済んでいました。けれども、平成30年8月からは、70歳以上75歳未満の人については、現役並みの収入(年収約370~約1160万円)の場合、限度額適用認定証がなければ医療費が軽減されなくなりました。もし該当する場合は、限度額適用認定証の申請をおすすめします。
ちなみに75歳以上の人は後期高齢者医療制度へ加入することになり、交付された後期高齢者医療被保険者証を提示すれば、設定された自己負担限度額までの支払いで済みます。
自己負担分と支払い不要分の境界線は?
医療費が高額になりそうなとき、利用すると支払い額が減る限度額適用認定証。これを利用した場合、医療費の負担額はどれくらいになるのでしょうか?
その額は、高額療養費制度の自己負担限度額を見ればわかります。つまり、自己負担分と支払い不要分の境界線は、高額療養費制度の自己負担限度額になるということです。
69歳以下の自己負担限度額は、所得に応じて次の表の「ひと月の上限額(世帯ごと)」のように決められています。
●69歳以下の自己負担限度額
つまり、限度額適用認定証を入手すれば、病院の窓口で支払うのは、上記の表に記載された自己負担限度額までの額で済むのです。
また、高額療養費制度では過去12ヶ月以内に3回以上、自己負担上限額に達した場合は、4回目からは自己負担限度額が下がります。これを「多数回該当」といいます。自己負担限度額が上記の表にある多数回該当の欄に記載された額に下がるので、家計への負担がさらに軽くなるのです。限度額適用認定証を利用しない手はありませんね。
なお、高額療養費制度では、家族が同じ健康保険に加入していて、同じ病院にかかっている場合は、1ヶ月分の自己負担額を世帯合算できます。世帯合算して自己負担上限額を超えたら、医療費の支払いが抑えられるのです。ただし、69歳以下の人が世帯合算できるのは、自己負担分が2万1000円以上になった場合だけに限ります。また、2ヶ所以上の病院で治療を受けている場合、異なる病院との合算はできません。病院ごとに治療費を計算しましょう。
さらに、高額療養費制度の対象となるのは、保険が利くものだけになるので注意が必要です。入院した際の食事代や差額ベッド代、歯科の自由診療などは対象外となります。また、1つの病院の中でも通院と入院は計算が別になります。
限度額適用認定証の申請方法
限度額適用認定証は健康保険に加入している人なら申請できます。申請方法は、以下の通りです。
●国民健康保険の場合
役所の国保窓口に、健康保険証、マイナンバーカードまたは通知カード、本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)を添えて申請書を提出します。
●協会けんぽ(全国健康保険協会)の場合
全国健康保険協会のWebサイトで申請書様式をダウンロードして必要事項を記入。本人確認書類のコピーを貼付して、全国健康保険協会の各都道府県支部に提出します。詳細は全国健康保険協会のWebサイトで確認しましょう。
●組合健保の場合
加入している健康保険組合に申請します。詳細は健康保険組合のWebサイトで確認しましょう。
まとめ
限度額適用認定証はできれば治療を受ける前に申請しておきましょう。ただ、すでに入院して治療を受けている場合もあるでしょう。そのときはすぐに申請して入手し、病院の窓口に提出しましょう。すると、その月の医療費から自己負担限度額までの支払いで済むようになるので安心です。限度額適用認定証は忘れないよう入手することをおすすめします。
※この記事は2020年2月21日現在の情報をもとに執筆しています。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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