16/07/20
不妊に悩むカップル急増中 人には聞けない「不妊治療」のお金の話
女性の初婚年齢は、厚生労働省の調べによれば2015年は29.4歳でした。年々進む晩婚化。第1子の出産年齢も上がり、30.7歳になりました。一方出産しやすい年齢は一般的に20代と昔から変わりません。
子どもを望んでもなかなか妊娠しないカップルは、年齢とともにその割合が増加していきます。不妊治療が身近に感じられるのも当たり前になってきました。
治療法は段階的に高度なものになり、費用も高額になる
カップルが同居後1年たっても妊娠しなかったら、不妊症を疑って病院を受診するケースが多いようです。しかし、女性に生理不順、子宮筋腫、子宮内膜症があれば不妊症のリスクが高いので早めに受診したほうが良いでしょう。
男性の場合は小児期のヘルニア手術や、糖尿病が原因になることがあります。不妊症の治療法は下記の通りですが、段階的に進めていくことが一般的です。
●タイミング法
超音波(エコー)で卵巣内にある卵胞の大きさを測ったり、尿中の排卵ホルモンを検査したりして、排卵日のタイミングにあわせて自然妊娠を期待する方法です。身体への負担が少ない方法で、まずはこの治療から始めます。
健康保険適用されるので費用は3割負担です。1回あたり2,000円~2万円程度でしょう。
●人口受精(AIH)
タイミング法で妊娠しなかった場合、運動している成熟精子を、妊娠しやすい時期に子宮内へ直接注入する方法です。排卵誘発剤を併用する場合は、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(卵巣内の卵胞が過剰に刺激され、卵巣が膨れ上がることで様々な症状を引き起こす病気)などの副作用にも注意が必要です。また、6回程度行っても妊娠しない場合は、それ以上行っても同じ結果になると判断されるようです。
費用は自費診療のため、全額自己負担です。1回あたり、1万円〜5万円程度ですが、病院によっても変わります。
●体外受精・顕微授精(生殖補助医療)
身体から取り出した卵子と精子を体外で受精させ、数日後に受精卵を子宮に返す方法です。女性の身体には少なからず負担がかかり、卵巣過剰刺激症候群などの副作用のおそれもあります。
全額自己負担で、1回20万円〜70万円が目安ですが、治療内容と病院によってかなり差があります。
治療費の一部を、自治体で助成する制度がある
体外受精・顕微授精は費用が高額ですが、厚生労働省が「特定治療支援事業」を行っており、自治体から一部助成されます。1回15万円が上限ですが、採卵を伴わないものは7万5,000円が上限になります。ただし、いくつか条件があります。これから治療を始める場合の条件は次の通りです。
- 1.体外受精・顕微授精以外の治療法では妊娠の見込みがないか、可能性が極めて少ないと診断された
- 2.法律上の結婚をしている夫婦(事実婚は対象外)
- 3.夫婦合算の所得が730万円未満(「収入」ではなく「所得額」がポイント)
- 4.治療開始日の妻の年齢が43歳未満
そして、助成を受けられる回数の上限があります。治療開始日の妻の年齢が40歳未満なら6回、40歳以上43歳未満なら3回までです。
制度の変更はたびたび行われています。初めて助成を受ける年度によって、対象になる範囲や回数などが変わりますので、注意が必要です。また、上記の厚生労働省の制度に、金額や回数を上乗せしている自治体や、健康保険組合もあります。
そして、確定申告の医療費控除も利用できます。領収証はとっておきましょう。
治療をすれば妊娠する確率は上がるが…
病院で不妊治療を受けたからと言って、必ずしも妊娠できるとは限らないのが現実です。一般社団法人日本生殖医学会の「2010年生殖補助医療の治療成績」によると、生殖補助医療後に、出産にいたるのは32歳までの女性でも約20%と言われています。
治療を続けてもゴールが見えず、精神的・経済的負担が大きくなりすぎるようでは夫婦とも辛いものです。そうならないため、治療を始める時に期間を決めておくのもよいでしょう。「とりあえず○回まで」「○歳になったらいったん休憩」など、プレッシャーにならない程度に夫婦で話し合っておくと安心です。
不妊治療は夫婦の協力がなによりも大切です。お互いをいたわる気持ちを大切に、より一層、夫婦の愛情を深めていただきたいと思います。
【関連記事もチェック】
・1年で300万円も! 出産・子育てでもらえる給付金
・子育てでもらえる支援金・助成制度、6つの制度をチェック!|マネラジ。#32
・休職をプラスに変える! 人生の棚卸しとレベルアップに使える制度をフル活用
・奨学金の返済が重荷! 返済を支援してくれる企業・自治体があるってほんと?
タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
この記事が気に入ったら
いいね!しよう