18/12/27
欧米では割と多い「婚前契約書」。婚前契約書を結ぶメリットや注意点は?
アメリカではプレナップと呼ばれる婚前契約。日本でも女性の社会進出が進むに伴い、「結婚しても自分の財産は守りたい」「家庭に縛られず自分らしく生きたい」と考える女性が増え、婚前契約が注目されつつあります。タレントや芸能人の婚前契約書が話題になることもありますよね。
今回は、婚前契約書について、作成のメリットや注意点を説明します。
婚前契約は離婚時のトラブルを予防するためのもの
婚前契約とは、結婚してからの夫婦の約束事を結婚前の段階で明確にし、契約書の形にしたものです。日本ではこれまでなじみのなかった習慣ですが、欧米では珍しくはなく、ハリウッドセレブがプレナップ(Prenuptial Agreement)を結んでいるといった話はよく聞きます。
日本には契約を自由に結んでいいという考え方(契約自由の原則)がありますが、婚前契約でどんなことでも決められるわけではありません。「浮気をしたら殺す」など公序良俗に反する条項はもちろん無効です。また、離婚後の子供の親権や相続のことなども、婚前契約で決めることはできません。
婚前契約で意味を持つのは、主に夫婦の財産に関することです。夫婦の財産関係についてのルールは民法で定められていますが、結婚前に当事者同士が財産に関する契約(夫婦財産契約)を結べば、民法よりも契約の内容が優先されることになっています(755条)。
たとえば、婚姻中夫婦が共同で築いた財産は名義にかかわらず夫婦共有となるのが民法の原則ですから、離婚時には共有財産を半分ずつに分けなければなりません。しかし、実際にはうまく分けられないことが多い上に、半分ずつに分けると不公平感が伴うこともあります。
このようなとき、婚前契約で財産の帰属について細かく決めておけば、離婚の際の財産分与がスムーズです。結婚している間は財産の帰属が大きな問題になる場面はありませんから、婚前契約は結局のところ、離婚の際のトラブルを予防するためのものと言えます。
婚前契約には円満な夫婦関係を維持する効果もある
結婚しても働いて自立していたい女性は、離婚になっても自分の財産を守れる婚前契約に、魅力を感じるかもしれません。一方で、婚前契約を結ぶということは、離婚を前提に結婚するようで、ためらってしまうこともあると思います。
婚前契約は離婚時のトラブルを予防するものですが、離婚を促すものではなく、むしろ夫婦円満につながるものです。婚前契約書を作るときには、お互いの財産を開示し、お金のことについて話し合わなければなりません。婚前契約のメリットは、お互いの価値観や考え方をより深く知るきっかけになることと言えます。
お金に対する考え方は、その人の価値観が最も反映されるところです。お金に対する考え方や価値観が違えば、結婚生活はうまくいきません。もちろん、異なる環境で育った他人同士ですから、多少の考え方の違いはあって当たり前。大切なことは、お互いが意見を交換し、価値観のすり合わせをしていくことなのです。
婚前契約書を作成するときの注意点
婚前契約書は、婚姻届を出す前に作成する必要があります。民法では「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる」(754条)と定められているため、結婚後の契約では実効性が薄くなってしまうのです。
また、夫婦財産契約は結婚前に登記をしなければ第三者に対抗できないとされています(756条)。婚前契約は当事者間では有効ですが、契約書を交わすだけでは完全なものにはなりません。裁判に訴えてでも自分の財産を確保できるようにしたいなら、婚前契約の内容を法務局で登記しておく必要があります。
夫婦財産契約の登記はあまり知られておらず、現状では日本全体で年間10~20件程度しか登記されていません。しかし、婚前契約により財産を確保したいなら、婚姻届を出す前に夫婦財産契約の登記をすることも検討した方がよいでしょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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