18/08/08
定年前に住み替え。居住マンションは売却?それとも賃貸がよい?
家族のありようも年が経つと変わってきます。子どもが進学や就職で家から離れてしまうと、これまで住んでいたマンションも夫婦二人で暮らすには広すぎて、管理も大変ですね。今回はそうしたご夫婦のご相談です。
【相談者のプロフィール】
男性 会社員(56歳) 既婚
家族構成:妻:パート(54歳) 子ども:大学生(21歳)
居住形態:マンション(築20年・ローン完済)。昨年、一戸建ての自宅を購入
手取りの世帯月収:82万円(夫70万円、妻12万円)
毎月の支出目安:50万円
相談内容:居住マンションは売却?それとも賃貸がよい?
会社員をしており、妻はパートで働いています。昨年末、老後に備えて、商業地域から離れた静かな所に一戸建ての自宅を建てました。そこで悩んでいるのが、今住んでいるマンションをどうするかです。
今のマンションは20年近く住んできた、生活利便性の高い駅近のマンションです。しかし、広さが約120平米あります。子どもが巣立つと、夫婦2人で住むには広すぎて、管理が行き届かなくなると考えました。そこで、賃貸しようと思ったのですが、広さがあだとなって貸しにくいのではとも感じています。いっそ売却したほうがいいのでしょうか。悩んでいます。
売却と賃貸のメリットとデメリットを整理する
住み替えの際に前の家をどうするかは、本来なら家を建てる前に考えておくべきでした。マイホームを売却する場合と賃貸する場合とでは、何がどう違うのでしょうか。まずはメリットとデメリットについて考えてみましょう。
売却のメリットは、不動産を現金化できることです。このお金でローンを完済したり、別の不動産に買い換えたりすることもできます。相談者のように、余剰資金となるならば、老後などの生活資金の一部にすることもできます。
また、売却することで建物や土地の維持管理が不要になります。さらに、譲渡所得税が軽減される場合があります(居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例)。
売却のデメリットとしては、売却時の諸費用がかかるほか、売却によって得られた利益に税金がかかることがあげられます。また、相手が見つからないと売却できません。不動産の価格は変動していますので、時期によっては思うような金額で売れない可能性があります。
それに対して、賃貸のメリットは、毎月一定の賃貸収入が得られることです。将来的には売却するよりも多い収入が得られる可能性があります。そして今まで自分で支払ってきた固定資産税などを事業の経費にすることができます。
一方、賃貸のデメリットは入居者がいない間は家賃収入が入らないことです。また、空室をなくすために家賃を値下げせざるを得ない局面も出てくるため、確実に収益が得られるものではないことがあげられます。そのうえ、収益に関係なく、維持費や税金などがかかってきます。また、自宅を貸す場合には管理会社の家賃保証システムを選ぶことができません。
ファミリータイプの物件の決め手は立地と学区
これまで住んでいたのは、4LDKで約120平米のファミリータイプのマンションです。ファミリータイプの物件は、学校から近いかどうか、学区がどこなのかで人気度が変わってきます。たとえば、A校区とB校区の境に位置していて、人気のA校区なら物件価格が高いということがあります。子どもに良い教育を受けさせたい親御さんの気持ちのあらわれです。公立の高校に根強い人気がある地方都市では、中学校単位で受験できる学校が決められている場合があります。
相談者の所有するマンションは教育熱心な方が多いところで、環境面でもとても便利なので、たとえ中古の物件であっても割安感があり、買いたいと思う人は多いでしょう。
今回の場合をシミュレーション
相談者が望む売却金額は2280万円(査定価格と同額)。家賃収入は月に12万円を希望。
相談者の希望の家賃収入12万円で入居者がいた場合、1年間の家賃収入は144万円になります。家賃収入を95%として見積ると138万8千円です。管理費、修繕積立金が年間約40万円。これを合わせた諸経費の合計は57万円です。
年間の家賃収入から諸経費を引いた手取りは、年間79万8千円になります。1年間の手取りで査定価格を超えるのは、28年半後になります。
そのマンションがある近隣では、ファミリータイプの賃料相場が8~10万円です。賃料が高い場合借主が限定されることや、低金利でマイホームのローンが組めるので月12万円の家賃では高く感じられ、入居者が決まるかどうか不透明です。仮に家賃が8万円だと査定価格を家賃収入が超えるのに単純計算で1.5倍かかるので、家賃を下げたくないというお考えならば、売却するほうがよいでしょう。
まとめ
マンションを売るにしても、賃貸にするにしても、それぞれメリットとデメリットの把握が必要です。
売却したときの損益はどうなのか、賃貸で貸す場合の収入と支出のバランス、売却益や家賃収入を何に使うのかなどを考慮にいれて対応しましょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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