24/12/22
60歳以上になったら絶対知っておくべき「180万円の壁」
「年収の壁」とは、税金や社会保険料が発生する基準となる年収額のことをいいます。このうち、「106万円の壁」と「130万円の壁」を超えた場合には、自身で健康保険に加入しなければならないため、手取りが大きく減ります。
さらに、60歳以上になると、新たに「180万円の壁」を超えた場合が登場します。あまり聞き慣れないのですが、60歳を過ぎても働く機会が増えてきているので、年齢によって社会保険の扶養範囲が変わることを知っておく必要があります。
今回は「180万円の壁」について確認していきましょう。
社会保険への加入が決まる106万円の壁・130万円の壁・180万円の壁
「106万円の壁」と「130万円の壁」はいずれも、年収がこの金額を超えると社会保険の被扶養者になれなくなるボーダーラインを表す言葉です。
106万円の壁が該当するのは、
・従業員数が51人以上
・労働時間が週20時間以上(残業時間などは含まない)
・賃金が月8万8000円以上(残業代、賞与、通勤手当などは含まない)
・学生ではない(夜間学生などは対象になる)
・2カ月を超える雇用が見込まれる
をすべて満たした人です。
また、このどれかを満たさなくても、年収130万円を超えると社会保険の被扶養者になれなくなります。なお、「年収130万円」は残業代、賞与、通勤手当などを含んだ金額です。
そのため健康保険では、扶養に入るために、年収130万円を超えないように就業調整しているケースが多くあります。健康保険では、加入者(被保険者)だけではなく、被保険者に扶養されている家族にも保険給付があり、扶養されていれば社会保険料がかからないからです。
しかし扶養から外れると、「会社の健康保険・厚生年金保険」か「国民健康保険・国民年金」のいずれかに加入することになります。そうすると、年収が増えても、社会保険料がかかってしまうため、手取り収入が減ってしまうのです。それだけではなく、場合によっては家族が払う税金が高くなることもあります。
健康保険で家族の扶養に入る条件は、同一世帯に属している場合、「被扶養者の年収が130万円未満」かつ「被保険者の年間収入の2分の1未満」である必要があります。
しかし、60歳以上または障害者の場合には、年間の収入の基準が180万円未満に変わります。つまり、「130万円の壁」が60歳以降は「180万円の壁」になるということです。
また、被扶養者となるためには、勤務先や健康保険組合の認定を受ける必要があります。ただし、75歳以上になると、後期高齢者医療保険制度に移行するので、対象外になります。
年収要件にはどんな収入がふくまれるのか
60歳以上になると、何らかの年金を受け取っている人も出てきます。年金をもらいながら働いて扶養に入る場合には、収入によっては対象外になってしまうので、年収要件に気をつけておかなければなりません。
年金をもらいながら給与収入がある場合、180万円の壁を超えないようにするには、
年金収入+給与収入=180万円未満
である必要があります。
収入は、給与収入のほか、年金、不動産収入、自営や農業などの事業収入、雇用保険の給付金、傷病手当、出産手当などの健康保険の給付金などの合計額をいいます。年金収入では、国民年金や特別支給の老齢厚生年金、企業年金、個人年金保険なども扶養の判定に含まれます。また、税金の計算では非課税となる遺族年金や障害年金なども収入に含まれます。
健康保険の扶養に入るためには、60歳以上では「年間収入が180万円未満」である必要がありますが、扶養から外れる基準は、年間収入が基準額を超えた時点ではなく、月額15万円以上(180万円を12か月で除した金額)なることが見込まれた時になります。
ただし、一時的な理由で収入が増加した場合には、事業主の証明を添付することで、被扶養者として認定を受けることができます。
健康保険の扶養に入るだけが選択肢じゃない
扶養に入ったまま働けば、社会保険料の負担はありません。しかし、意欲があれば、老後も働ける環境が整ってきました。60歳以上からは扶養基準が180万円になるので、健康や生きがいのために働いてみるのもいいでしょう。
今までは手取り収入の確保のために健康保険の扶養に入って、収入を抑えるという方法が主流でした。しかし、老後が長くなっている今、収入を増やして厚生年金に入るという働き方は、有効な方法です。健康保険・厚生年金に加入すれば手取りは減りますが、厚生年金には70歳まで加入でき、保険料を納めることで将来の年金額を増やすことができます。老齢厚生年金以外にも、障害厚生年金、遺族厚生年金の保障があります。また、医療保険では、傷病手当金や出産手当金も支給されます。こうしたメリットにも目を向けましょう。
人生後半を豊かに充実したものにするためにも、目先にこだわらず、「自分とってどうあるのがベストなのか」をいろいろな方向から考えてみてはいかがでしょうか。
【関連記事もチェック】
・定年後貧乏に陥りやすい、意外と大きい7つの出費
・「60歳退職→65歳年金開始」空白の5年間のお金はいくら準備すべきか
・年金から天引きされる5つのお金、月14万円もらえる場合いくら引かれる?
・年金生活者に1月届く「公的年金等の源泉徴収票」3つの見るポイント
・年金収入のみの場合、所得税・住民税がかからないのはいくらまで?
池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
この記事が気に入ったら
いいね!しよう